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日本赤ちゃん学会公開シンポジウム参加レポート

2010年6月12日(土)、13日(日)と東京大学本郷キャンパスで日本赤ちゃん学会第10回学術集会が開かれました。1日目は脳の進化と発達」、2日目はシンポジウム「NICUから地域へ ―早産児の発達支援―」をテーマにシンポジウムが行われ、2日目午後には「赤ちゃんが育つ場・赤ちゃんが育む場」というタイトルでの公開シンポジウムが開かれました。


公開シンポジウムではまず、自治体首長として初めて育児休暇を取得し話題になった成澤廣修文京区長からのコメントがあり、その後5名のシンポジストからの講演、企画者を含めた8名の総合討論という流れで行われました。


最初の登壇者は清水博氏(東京名誉教授/NPO法人「場の研究所」所長)で、「赤ちゃんと場について」というテーマで、赤ちゃんと親(環境)が相互整合的な状態を作り、お互いに調整し合いながら成長することの重要性について触れられました。また子どもを育てる場として地球の未来を考えた際に、今までのルールを見直し柔軟に変えていくことが必要であり、それは人間の持つ創造力がなせる技であるというお話もありました。


2番目の登壇者は下條信輔氏(カリフォルニア工科大学生物学部/計算神経系)で、「おとなはどこまで赤ちゃんか?~認知発達の社会性と連続性」というテーマで講演されました。さまざまな実験結果で明らかになっている赤ちゃんのソーシャルな機能や、視線に表れる選考判断が実はおとなにも同様に見られ、おとなが案外赤ちゃんと同類であるという興味深い発表内容でした。

3番目の登壇者は茂木健一郎氏(ソニーコンピューターサイエンス研究所)で、「人生初めての偶有性」というテーマで講演がありました。赤ちゃんは生まれると同時に「偶有性」* に満ちた世界にさらされ、さまざまな「偶有性」との出会いの中で自分自身を構築し、脳を成長させていくといいます。そのため、ルールベースで子どもに対応するのではなく、いかに「偶有性」を環境に取り入れて子どもを育てるかという点が重要であるとの話がありました。

4番目の登壇者は浅田稔氏(大阪大学大学院工学研究科/JST ERATO浅田共創知能システムプロジェクト)で、「認知発達ロボティクスによる赤ちゃん学の試み」というテーマで講演がありました。ロボットを作ることを通して人間をトータルで理解しようというアプローチで、赤ちゃん模倣ができるようなロボットの制作を目指して研究なさっているとの話がありました。

5番目の登壇者は内田伸子氏(お茶の水女子大学)で、「赤ちゃんがヒトから人へと飛翔するとき~生後10カ月頃「第一次認知革命」が起こる~」というテーマで、赤ちゃんの認知的発達段階の話、第一次認知革命における社会的参照を示す実験の紹介などがありました。また子どもの気質や養育スタイルとごい習得の関係性についても言及しました。

総合討論ではシンポジウムのタイトルにある「赤ちゃんが育む場」について、おとなにとって赤ちゃんはおとなの持つ潜在的な部分を呼び起こすきっかけになり、より豊かさを与えてくれ、自身の柔軟な変化を引き起こしてくれる存在であるといった、赤ちゃんの持つ力の大きさについての話もありました。親のルールが必ずしも絶対ではなく、特に変化の激しい現代においては、変化する時代に合わせて子どもたちがどのように適応していくのか、また適応できるような子どもに育てることの重要性について考えさせられる内容でした。

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子育てにおいては何が絶対ということはなく、さまざまな相互の関わりの中で親も子どもも育っていくことが重要であるということを感じました。また清水先生の「存在の深いところの想いは必ず伝わる」ということばが印象的で、子育てのみならず何においても人間の温かさが持つ「想い」・「愛情」というものを大事に生きていくことの大切さを実感したシンポジウムでした。


*「偶有性」とは、「規則的」と「ランダム」のまさに中間に位置するイメージで、予測できること、予測できない不確実なことが入り混じった状態を指すそうです。 規則的 ― 「偶有性」 ― ランダム

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