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第1回ECEC研究会「日本の保育の課題と展望」

2013年7月12日掲載
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ECEC研究会、6月30日に力強くスタート

2013年6月30日(日)、Child Research Net主催の第1回ECEC研究会が「日本の保育の課題と展望」をテーマに、お茶の水女子大学で開かれました。

ECECとはEarly Childhood Education and Care(=早期の教育とケア)の略で、OECD(経済協力開発機構)は、次世代を担う子どもたちの保育・教育について、「早期に力強い一歩を踏み出す(Starting Strong)」ことの重要性を強調しており、世界的に関心が高まっています。

プログラムの中では、まず秋田喜代美氏(東京大学大学院教育学研究科教授)が基調講演「日本における保育の展望と課題-グローバル化の中で-」を行い、世界の保育は今どう動いているかを解説しました。続いて司会の榊原洋一氏(CRN所長・お茶の水女子大学大学院教授)がECECの課題を提案し、後藤憲子氏(ベネッセ教育総合研究所 次世代育成研究室室長)から「第2回 幼児教育・保育についての基本調査」(ベネッセ教育総合研究所)の報告がありました。これらの提言や最新のデータの提示を受けて、一見真理子氏(国立教育政策研究所総括研究官)と大豆生田啓友氏(玉川大学准教授)を加えて4名のパネリストによるパネルディスカッションへと展開、その後会場からの質問を交えたディスカッションでは、現場からの様々な課題が話され、それらは今後の研究会の論議への期待となり、ECEC研究会の1回目は力強い一歩を踏み出しました。

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データやエビデンスの収集は保育の質の向上に有効

秋田氏は、日本の保育の現状からの課題を3つ挙げました。

  1. 21世紀というグローバル化した知識基盤型社会に向けて、すべての子どもたちが、乳幼児期、そしてその後の人生において幸せな生活を送れる保育を提供できているという保証がないこと
  2. 格差(経済格差、地域格差など)が広がる中、多様なニーズに応じた保育が十分でないこと
  3. 保育の質が向上する過程を保証する事実やエビデンスがないこと

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秋田氏からは、世界各国がECEC分野への投資増大路線にあるにもかかわらず、日本は公費投入が少なく、ECECの重要性が広く理解されるためには、言説とエビデンスが重要との主張がありました。また、幼保一体化による効率的な制度運営事例として、台湾・韓国のケースが紹介され、5月に一元化したシンガポールの映像が流されるなど、最新の世界の動きも知ることができました。さらに秋田氏は、保育の質の評価をするための指標や、その検討にとりかかる国際的な動きを紹介し、オーストラリアやカナダの例を挙げて、国レベルで保育の質の向上に有効に働く方法を考えるには、データの収集やモニタリングの推進が必要であることを提言しました。

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ECECの5つの課題提起

司会の榊原氏が考えたECECの5つの課題と、それについての保育の専門家の意見が紹介されました。5つの課題は、次のとおりです。

  1. 日本の保育・幼稚園教育は、世界の中でどのような位置にあるのか。
  2. 日本の保育の全体像は明らかになっているのか。日本の平均的な保育とは何か。
  3. 保育の質を測定する基準は何か。質の高い保育とは何か。
  4. どうすれば保育の質が高められるか。理念や精神論ではなく具体的事実が必要。
  5. 保育園と幼稚園で行われている保育内容の本質的な違いは何か。

専門家の意見として「日本では昔から、今の社会的潮流である『子ども自身が主体的に関わる遊びを中心とした保育』が取り入れられてきたのに、世界に向けて発信できていない。日本は一番先頭を走っていたのに、速すぎて、今では周回遅れで後ろになってしまったのでは。」といった内容の紹介がありました。

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保育者の資質向上のために必要なこと

続いて後藤氏が、幼稚園と保育所(認定こども園を含む)を全国規模で調査したデータとして、4月17日にプレスリリースをおこなったばかりの「第2回 幼児教育・保育についての基本調査」(ベネッセ教育総合研究所 次世代育成研究室)の中の一部を紹介しました。「保育者の資質向上のために必要なこと」という質問では、私立幼稚園・私営保育所・認定こども園で「保育者の給与面での待遇改善」が1位、公立保育所で「職員配置基準の改善」が1位、国公立幼稚園で「養成課程の教育内容の充実」が1位でした。


保育者の資質向上のために必要なこと
(全28項目から選択率の高いもの上位5位を表示)
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ベネッセ教育総合研究所 次世代育成研究室 「第2回 幼児教育・保育についての基本調査」より


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現場の課題解決のためにもエビデンスが必要

これまでの提言やデータを受けて、パネルディスカッションに移りました。一見氏からは、エビデンスに基づく制度改革や政策の施行のためには、日本の保育の世界の中での位置付けを客観的に把握するためのマッピングや、就学前のデータを一元的に取り入れるような行政側の体制が必要である、という話がありました。大豆生田氏は、世界の動きから考えても日本はデータを取って保育に活用する必要があり、たとえば最近の運動能力調査の結果を受けた、保育現場の取り組みの変化なども大事なメッセージだと話しました。子どもの育ちすべてを描き出す時、自分の園の何が特徴なのかを知るという意味で、マッピングは非常に重要だと秋田氏から発言があり、エビデンスの必要性が、ディスカッションの中で共有されました。

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保育の質を測る基準を探る

保育を質的に測る困難さについても様々な意見が出ました。保育の多様性に誇りをもって園レベルで質を上げていく姿が大切という立場を秋田氏が話し、保育のスタンダードを語るより、スタンダードな保育の上にある園独自の多様性をベースに、その質が語られるべきとの考えも示されました。また、数値が何%ということだけがエビデンスではなく、「子どもは市民である」という考えのもと、地域・社会における子どもの姿を発信していくこともまたエビデンスにつながるのではないかとの提案もありました。

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会場とのディスカッションでは、現場の保育者の経験を集めることや、コホート研究から具体的に基準を詰めていくことの提案など様々な話題が提供され、そこには日本の保育の質を測定する基準を探るヒントがたくさん含まれていました。ECEC研究会が踏み出した第一歩は、今後の展開に向けて、まさに"Starting Strong"でした。

(編集協力・北方美穂)

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