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変わらないもの

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明けましておめでとうございます。本年もCRNをよろしくお願い申し上げます。

昨年2016年は、世界に大きな変化のあった年でした。紛争や戦争の絶えない世界を解決する人類の大きな実験の一つとみなされていたヨーロッパ連合(EU)に、大きな亀裂を生じさせる英国の離脱は、EU加盟国の国民だけでなく、世界中の人々を驚かせました。そしてアメリカの大統領選挙で、多くの人が確信していた結果と異なる結論が出ました。

私たちは、常に新しいものを求めながら、一方で急激な変化の前には尻込みしてしまいます。イノベーションを唱える一方で、自然破壊を嫌い、絶滅危惧種の保存に力を入れています。

社会や自然といった私たちの棲む環境だけでなく、私たち自身も経験によって変わっていきます。日本では毎年虐待が増えてきています。また増え続けるいじめや不登校なども、育児や教育に関わる人々にとって悩ましい事態です。このまま行くと子どもはどうなってしまうのだろう。そしてその子どもたちが大人になる未来はどうなってしまうのだろう、という危惧を感じるのは、私だけではないと思います。

しかし、世の中に心配の種がいかに増えて行こうとも、何百年何千年と変わらない人々がいます。それはどんな人々で、どこに住んでいるのでしょう。

それは皆さんの周りにいる、小さな子どもたちです。

世界中のどの国、どのような境遇の家庭に生まれようとも、ヒトの赤ちゃんは、全て初めて経験する世界に旺盛な好奇心で関わっていきます。どのような家族の元に生まれようとも、自分の世話をしてくれる人との間に強い愛着関係を築いていきます。

不幸な経験を記憶として溜め込んで行く大人が増え続ける世の中であっても、新たにこの世に生を受けた赤ちゃんは、新鮮な気持ちでこの世の中に生まれ出てくるのです。いわばこの世界は赤ちゃんの誕生によって、ミクロレベルでリセットされ続けているのです。

変化の多い2016年でしたが、新しい2017年を迎え、赤ちゃんのもつ世の中を浄化する力を改めて思い出すとともに、CRNの原点にある「子どもは未来である」という言葉をかみしめたいと思います。

筆者プロフィール
report_sakakihara_youichi.jpg榊原 洋一 (CRN所長、お茶の水女子大学副学長)

医学博士。CRN所長、お茶の水女子大学副学長。日本子ども学会理事長。専門は小児神経学、発達神経学特に注意欠陥多動性障害、アスペルガー症候群などの発達障害の臨床と脳科学。趣味は登山、音楽鑑賞、二男一女の父。

主な著書:「オムツをしたサル」(講談社)、「集中できない子どもたち」(小学館)、「多動性障害児」(講談社+α新書)、「アスペルガー症候群と学習障害」(講談社+α新書)、「ADHDの医学」(学研)、「はじめて出会う 育児の百科」(小学館)、「Dr.サカキハラのADHDの医学」(学研)、「子どもの脳の発達 臨界期・敏感期」(講談社+α新書)など。
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