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グループ型妊婦健診「センタリング・プレグナンシーR」-良質な妊婦健診をもっと身近に-

要旨:

妊娠中のケアについて、新たなモデルを求める声が高まっている。そこには、より多くの妊婦が妊婦健診や妊娠中に必要なケアを受けられるため、妊婦健診の内容を充実させ効果を高めるため、そして、医療サービス、女性の妊娠経過、全体的な健康状態などにおいて人種・民族間に根強く存在する健康格差を解決するためといった様々な目的がある。本稿では、1995年以来、さまざまな人種・社会的背景の女性を対象に実施され人気を集めている、多面的な、グループ型妊婦健診モデルであるセンタリング・プレグナンシー(CenteringPregnancyR)について、その特色とメリットを紹介する。

妊娠中のケアについて、新たなモデルを求める声が高まっている。そこには、より多くの妊婦が妊婦健診や妊娠中に必要なケアを受けられるため、妊婦健診の内容を充実させ効果を高めるため、そして、医療サービス、女性の妊娠経過、全体的な健康状態などにおいて人種・民族間に根強く存在する健康格差を解決するためといった様々な目的がある(Institute of Medicine, 2003; U.S.Public Health Service, 1989; Lu & Halfron, 2003; Healy et al., 2006).。

 

アメリカでは、特にアフリカ系アメリカ人の女性とその赤ちゃんたちは妊娠中から産後を通し、常に人種による健康格差にさらされているため、産前ケアの改善によって、彼らの益するところは特に大きいだろうと期待されている。全米データによると、アフリカ系アメリカ人の妊婦死亡率、新生児死亡率、低出生体重児の率、早産率は、非ヒスパニック系白人に比べて2~3倍高い(Kung et al., 2008; Martin et al., 2007)。また、アフリカ系アメリカ人の女性は、受診すべきとされる回数の妊婦健診を受けていない場合が多い。アフリカ系アメリカ人女性の25~40%は、妊娠初期に受診をしていない(Martin, 2005)。加えて、妊娠期から産後まで全期間にわたり、産科ケアを受ける機会が劇的に減少している。この問題は、大都市から地方までのあらゆる地域の女性に共通である。産科ケアを受けにくくなった理由としては、産科スタッフの不足、保険会社がケアにかかるコストを十分にカバーしないこと、医療従事者の訴訟対策保険費用の負担増、妊婦の背景の多様化(飛び込み分娩の増加を含む)などが挙げられる(Delaware Valley Healthcare Council, 2007; Illinois Department of Public Health, 2008; Wisconsin Hospital Association, 2005)。


さらに、妊婦健診の内容にも幅があることが明らかになっている。アフリカ系アメリカ人の女性は、白人女性に比べて、推奨されるケアを受けていないことが多い。十分な内容の妊娠中のケアを受けていないために、出産から産後に好ましくない結果になりがちである(Kogan et al., 1994)。ラテン系の女性についてもアフリカ系アメリカ人に比べ、妊娠時の健康管理のために必要とされる健診内容がさらに不十分だとの報告がある(Vonderheid, Montgomery, & Norr, 2003)。つまり、白人以外の女性にとっては、たとえ妊娠初期に健診を開始したとしても、現在の妊娠中の保健医療の内容では、妊婦のニーズを満たすには不十分なのである(Healy, 2006)。


妊娠中の健康状態の改善は周産期の結果にとどまらず、その後の行動にも良い影響をもたらす。アフリカ系アメリカ人やその他の少数派民族に属する女性は高血圧、脳卒中、心血管系疾患のリスク、糖尿病等生活習慣に関わる病気に罹る率が高いが、長期的にこれらの病気の罹患率を減少させる可能性がある(U.S.Department of Health and Human Services, 2007)。


残念なことに、産前のケアを受ける機会と質の問題は、アメリカ以外でも起こっている。日本では、産科医や助産師の不足が非常に深刻な社会問題になっている。日本の女性がもっと積極的に自分の健康に向き合うことが期待されている。仲間がほしいと思っている妊婦や母親は多い。一般的に、日本では医療機関で実際に受診している時間は極めて短い。

センタリング・プレグナンシー(CenteringPregnancyR)(以下Centeringと省略)は1995年以来、さまざまな人種・社会的背景の女性を対象に、アメリカ内外の300箇所以上で実施され人気を集めている。Centeringは多面的な、グループ型妊婦健診モデルである(Rising, 1998)。この新しいグループ型妊婦健診は、妊婦が一人ずつ受診するタイプの従来の妊婦健診よりも、妊婦や赤ちゃんの産前産後の健康状態を改善すると期待されている。特に、社会的に不利な立場にあるなど、困窮した状態にある女性(低所得層、アフリカ系アメリカ人など)に役立っている(Ickovics et al., 2007)。


Centeringの革新的な点は、これまでの妊婦健診の型を根本的に変えてしまったところにある。Centeringでは、妊娠した女性は初回だけ個別の妊婦健診(一人ずつ受ける従来の妊婦健診と変わらない)を受け、ハイリスクかどうかを判別される。2回目以降の健診は、8~12人のグループで一緒に受ける(1回2時間、計10回)。グループには、予定日がだいたい同じくらいの妊婦が集まる。このグループ型妊婦健診は、だいたい妊娠12~16週くらいに開始し、40~42週くらいまで続く。妊娠5ヶ月から8ヶ月までは、月1回の間隔で計4回受ける。最後は2週間毎に計6回受けることになる。妊娠16週ごろから受け始めた場合、最後の回は通常、産後になる。この最終回では女性はそれぞれの出産体験を語り合う。


Centeringのモデルは、助産のホリスティック・ケアの哲学と(Rising, Kennedy, & Klima, 2004; Rising, 1998)、妊婦の健康行動についての過去の研究から得られた知識に基づいて開発された。たとえば、妊産婦がより健康的な行動をとるようになるためには、健康増進について時間をかけて深く話し合ったり、仲間同士で助け合ったり(ピア・サポート)、専門家と妊婦が対等な関係を築いたり、エンパワメントや自己効力感を高めるようなスキルを磨いたりすることで、効果が上がることがわかっている。Centeringと従来の個別型妊婦健診は、以下の4点で異なる。これらの要素はからみあい、相互的に補完しあっている(Rising, Kennedy, & Klima)。


● 健康増進についてグループで話し合う時間が、従来の妊婦健診の5倍以上確保されている。Centeringでは1回につき90分の話し合い、個別型の妊婦健診では15分とした場合、合計すると、Centeringで約15時間、個別健診では3時間以下となる。
● 近所の妊婦仲間との交流により、仲間同士の助け合いがうまれる。同じメンバーで何度も会い、話し合うことにより関係が深まる。
● 専門家(医師・助産師)とクライエント(妊婦)が協力し合う関係にある。フェミニストアプローチに基づくパートナーシップを重視している(Andrist, 1997)。
● 自己管理を促すトレーニングと活動を含んでいる。自己の変化を観察し、記録し続けることにより、自己管理のスキルを身につけることができる。

 

以上の4要素が統合されるため、Centeringは従来の個別型妊婦健診よりも効果が高まると考えられている。


従来の妊婦健診では、短時間(約15分間)で健康増進のために必要な内容をカバーし、妊婦-産科医(助産師)間の関係づくりをしなければならない。そのような健診では、妊婦がセルフケアのためにどうしたらよいかを深く話し合う余裕はなく、他の妊婦と一緒に過ごす機会もない。健診に来るとまず、診療の補助をするスタッフナースが採血や体重測定を行い、妊婦はその後で担当の医師や助産師に会って診察を受けたり質問に答える。助産師は一般的に、産科医よりも、教育やカウンセリングに熱心である(Oakley, et al., 1995; Vonderheid, Norr & Handler, 2007; Yankou, 1993)。ナース、栄養士、他の専門家が妊婦にかかわることもある。

 

 

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毎回、Centeringのセッションでは、初めの30分間は妊婦が自分で体重や血圧を測ったり、妊娠週数を算出したり、セルフアセスメントシートに記入するなど、自己管理活動を行う。セルフアセスメントシートの内容は、その妊娠時期に大切な健康増進に関連して毎回異なり、その回の妊婦同士のディスカッションを刺激するようになっている。シートを記入すると妊婦はそれぞれ、部屋の一角で担当の助産師または産科医の診察を個別に受ける。子宮底長や児心音等を確認し、リスクがないかを、手短に診断してもらう。プライバシーを確保できる部屋が隣に用意してあるので、必要な場合は内診などを受けることもできる。この時間、他の妊婦は体に良いおやつを食べながら妊婦同志でおしゃべりをしながら過ごす。


次の90分間は健康教育とディスカッションになる。担当の助産師または産科医と、もう一人の助手(リーダーシップファシリテートについての訓練を受けた人)によって進められる。全体的な計画のもとに、セッションごとに核となるテーマが設定される。テーマは、妊娠期ケアについてのアメリカの公衆衛生サービス専門家や専門職によるケア指針に沿って決められており、訪れる妊婦の妊娠時期に合わせてある。しかしそれ以外でも、グループに参加する妊婦たちの関心によって、どんなことでも話し合う。(つまり、それぞれのセッションはおおまかな計画と各回のコアになるテーマがあるものの、どのくらい深く話し合うかや時間配分、追加するテーマの有無は、その場の女性の関心や悩みに合わせて調整できるようになっている。)


Centeringでは、ディスカッション、参加者間でやりとりをするようなゲーム、パズルやワークシートを使った活動、ビデオなど、さまざまな教育方法が取り入れられ、参加者の交流が促される。栄養士や母乳支援専門家(ラクテーション・コンサルタント)など、各分野の専門家が招かれて話をすることもある。セッションを行う部屋は、できるだけ居心地が良く、かつプライバシーが保てるよう工夫されている。たとえば椅子は円形に並べ、話し合いをしやすくする。妊婦健診に家族が付き添うことが勧められており、家族や友人を連れて参加する女性もいる。


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このようなグループ型妊婦健診の進行役は、ファシリテーターとしてのリーダーシップの訓練をうけた2名によって行われる。メインの進行役はたいてい、助産師か医師が担当し、リスクの少ない妊婦の管理を行い、問題がある場合に適切な専門家へ照会するだけでなく、健康教育を行ったり、妊婦のグループがうまくいくようにサポートしたりする。副進行役は、メイン進行役の助手として、セッションの部屋や教材、おやつや飲み物を準備したり、受付をしたり、妊婦が自己管理活動(血圧測定、体重測定、記録など)を一人でできるようになるまで手伝ったりする。この副進行役も、グループ全体がうまくいくように見守りながら、妊婦がアセスメントシートを記入する際に疑問に思ったことなどあらゆる質問に答えたりする。グループを担当する人が毎回同じであることが重要なので、10回のセッションを通して、同じ2名の進行役がグループを担当することになっている。

 

Centeringは年々普及しているが、Centeringについての研究はこれまでに5件しかされていない(6件目が印刷中)。RisingがCenteringの開発について記述した研究では、無作為化実験ではないものの、通常の妊婦健診の群に比べて、妊婦健診受診率が改善し、早産と低出生体重児の率が減少し、妊娠後期に救急外来を訪れる妊婦が減っていた。また、妊婦とケア提供者(産科医・助産師)がCenteringに高い満足感を示していた(Rising, 1998)。より厳密なデザインを使った研究が2群のマッチングを行った前向きコホートCenteringの妊婦の赤ちゃんの体重(3228.2グラム)は、通常の健診を受けた妊婦から生まれた赤ちゃんの体重(3159.1グラム)よりも若干大きく、統計的に有意な結果が得られた(p<.01) (Ickovics, et al., 2003)。10代の妊婦を対象にした研究では、これも無作為化実験ではないが(後ろ向き・同時期の対照群と比較)、Centeringでは早産や低出生体重児の率が低かった(Grady & Bloom, 2004)。Centeringの妊婦健診を受けた10代の少女たちは、母乳育児率が高く、妊婦健診をキャンセルすることが少なく、産後の健診の受診率が高く、自分の赤ちゃんのための小児科医を見つけてあった。Centeringのグループケアについても満足度が高かった。別の研究では、これもランダムサンプリングは行ってはいないが、Centeringの妊婦は、妊娠についての知識が、Centering を受けた後に著しく増えていることがわかった(Baldwin, 2006)。


Centeringの効果を測定した研究で唯一の無作為化実験では、(1)Centeringを受けた妊婦、(2)HIV/AIDS予防について強調したCenteringを受けた妊婦、(3)通常の妊婦健診を受けた妊婦、の3群を比較した (Ickovics, et al., 2007)。研究に参加した妊婦は、アフリカ系アメリカ人、ラテン系、または白人の女性であった。この研究では、Centeringを受けた妊婦では、そうでない妊婦に比べて、早産率が33%少なく、母乳育児の開始率が高く、妊娠期についての知識が増加していた。Centering の参加者は、Centeringの提供するケアに対する満足度が高く、出産に向けてより準備できていた。アフリカ系アメリカ人の女性では、通常の妊婦健診を受けた(アフリカ系アメリカ人の)妊婦に比べて、早産率が41%減少するなど、さらに顕著な効果がみられた。


Centeringの生産性とコスト対効果についての研究によると、Centeringは通常の妊婦健診に比べて2倍の数の妊婦をケアするなど生産性が高いことがわかり、研究が行われたクリニックでコスト削減の効果もみられた(Cox, 2006)。これらの研究は、産科的ローリスクの女性を対象にしているが、社会的ハイリスクの女性も含んでいる研究もいくつかある。貧困や有色人種など、社会背景的にリスクの高い女性は、そのことが周産期の健康状態を悪化させる要因となるため、特に配慮が必要である。


我々の研究チームのメンバーであるキャリー・クリーマ博士は、早期にCPを取り入れた一人で、Board of Directors of the Centering Healthcare Instituteのメンバーで、全国規模のトレーナーでもある。クリーマ博士はシカゴで初めてCenteringを立ち上げ、アフリカ系アメリカ人女性とその家族を対象に、シカゴの大きな公立クリニックでCenteringの実施と評価にチームで尽力してきた。我々のチームは、母子の健康指標を用いてCenteringを評価するだけにとどまらず、Centeringが、現場のスタッフや妊婦にとって、実際にどのくらい実行可能で、スタッフや妊婦に受け入れられているかについても研究してきた(Klima, Norr, Vonderheid, & Handler, in press)。現場のスタッフ(臨床スタッフと管理者)とのフォーカスグループ(集団面接)を行い、妊婦に自己回答式のアンケート用紙に回答をお願いし、健診記録についてはカルテからもデータを集めた。


臨床現場のスタッフや管理者とのフォーカスグループインタビューによって得られたデータを内容分析したところ、Centeringに参加している妊婦はより自立しており、健診を受けそこねた場合にも自分から予約をとり、赤ちゃんだけでなく自分自身の妊娠中のセルフケアにも注意を払う傾向があるという。つまり、グループ型の妊婦健診に参加した妊婦はエンパワメントを感じていることがわかる。また、妊娠についての知識が増え (Baldwin, 2006; Ickovics et al., 2007)、より周到に出産準備ができたと感じており(Hoyer, 1994; Ickovics et al., 2007)、自己を肯定的にとらえられる(Hoyer, 1994; Ford et al., 2001)という、グループ型の産前ケアに関するこれまでの研究結果と一致している。さらに、我々の研究によると、臨床のスタッフと管理者は、Centeringに参加している妊婦が、他の妊婦と交流することにより自分自身や自分の健康状態についてよりよく知ることができ、グループ型の妊婦健診に満足し、妊婦健診に来ることが楽しみで、自分の友だちにCenteringへの参加を勧めているようだと報告してくれた。また、グループメンバー間の結束力が強く、友情が見られるという。Centeringは「グループ・ラップ」と見なされ、参加者が安心できる環境で考えやアイディアを思いつくまま気軽に口に出し話し合う場所となっている。助産師・産科医は進行役としての役割を自覚し他のスタッフからも認められており、ディスカッションを進め、参加者が興味をもった話題について深く話し合えるよう努める。あるスタッフによるとCenteringはグループによって強化される「発見的な学び」の場だという。グループの参加者は、出産の後には、今度は育児グループとして、医療スタッフとより綿密なコミュニケーションをとるようになり、クリニックが提供するサービスについて既に聞いたことが多いためクリニックの資源を上手に活用してくれるという。


さらに、Centeringの妊婦健診を担当するスタッフも、仕事にやりがいを見出している。妊婦と健康のトピックについて「話し合う」ことを楽しんでおり、従来の個別型の妊婦健診では妊婦が話さないような情報も、グループでは参加者から得やすいという。医療スタッフにとっても、個別の妊婦健診で一人一人の妊婦に繰り返し同じ内容の情報を伝えるのに比べ、グループ型の教育は効率が良く、専門職として満足度が高いという。


母子健康の指標については、Centeringの妊婦は妊娠週数が長く(訳者注:早産率が低いことを示唆する)、低出生体重児が少ないという結果が得られたが、統計的に有意ではなかった。これはサンプルサイズが小さかったために、Centeringと従来の妊婦健診を受けた妊婦のこれらの指標について、2グループ間の差をみつけるのに十分な統計的パワーが足りなかったためと考えられる。本研究では、Centeringの妊婦は妊婦健診の受診率が高く、妊娠中の体重増加が良く(訳者注:アメリカでは妊娠中の体重増加は推奨される)、母乳哺育率が高く、満足度が高いという結果が得られた(Klima, Norr, Vonderheid, & Handler, 印刷中)。これらの6件の研究結果をまとめると、グループ型の妊婦健診は、医学的にリスクの低い女性にとって、妊娠や健康に関し良い効果がもたらされているといえるだろう。


我々の研究チームは、Centeringのセッションが(柔軟でありながらも)Centeringのモデルにきちんと沿っているかを評価するためのツールと、母親側の(1)知識、(2)自己効力感、(3)妊娠・産褥・育児に関する健康行動、(4)妊娠に関連したエンパワーメントを測定するための4つの質問票を開発した。この4つの質問票は、識字率の低いアフリカ系アメリカ人とラテン系の女性(英語とスペイン語の話者)を対象にしている。これらの4つの質問票は、提供されるケア(Centering)が最終的な健康指標(早産率、分娩の結果、産褥期の状態など)に結び付いているか、その効果をはかる指標として作られており、本当にCenteringが健康指標を改善するか否かを明らかにする理論モデルの構築の際に重要な尺度となる。


開発されたCenteringの過程評価用紙は、2部からなり、1部は第三者である観察者、もう1部はCenteringの進行役(または副進行役)によって記入される。全国的に標準化されたトレーニングプログラムの内容を忠実に反映したCentering実践であるかどうかを評価する仕組みである。この評価結果によって、Centeringの担当者がCenteringの提供方法を改善できるようになるだけでなく、得られたデータにより、Centeringが母子の健康状態を向上させる効果があるかを評価するための研究を進めることもできる。このツールは、Centering型の妊婦健診を計画するクリニックの審査過程において、Centering Healthcare Institute が各クリニックの強みと克服点を明らかにする際のツールとしても使われている。


妊婦健診の受診率改善と健診の質向上へのニーズが高まる中、Centeringは、過大なお金をかけなくてもできる方法として、社会的立場が弱いために周産期のリスクの高い女性の母子保健指標を改善するためにとりわけ有効であることが見込まれる。Centeringは、従来の妊婦健診の構造を大きく変えるものであり、保健医療のサービスをより効果的に女性へ届け、ケアの提供者と受け手の両方の満足度を高める。仕事への満足度が高い専門家は、そうでない専門家に比べ、仕事を辞めずに同じ職場で長く働き続けられる。


Centeringによって女性の妊娠やその他の健康状態に良い効果をもたらすことがわかってきたが、女性のライフスタイルや育児行動など長期的な効果については、さらに研究が必要である。Centeringの有効性が一貫して認められれば、Centeringのモデル拡大は、従来の周産期ケアを改革する方法として、世界中で役に立つ可能性がある。低コストで良質なケアを提供することにより、母子、特に、社会的に不利な状況にある母親と赤ちゃんの、早産などの望ましくない結果を予防することで、それらにかかる医療費を大幅に抑制することができるだろう。Centeringのモデルは、多くの国のヘルスケアを大きく改善するためのヒントを提供している。


CenteringPregnancyRと、Centeringの基本的な要素についてについてさらに詳しく知りたい方は、http://www.centeringhealthcare.orgをご覧ください。"Centering"の概念が認知され、より多くの事業所が当モデルを実施するに従い、前身であったCenteringPregnancy and Parenting Association Inc. はThe Centering Healthcare Instituteへと発展しました。The Centering Healthcare Instituteは、ライフサイクルを通した"Centering"ケアを推進し、世界中の人々や関連団体に教育やトレーニング、支援を行っています。

 

 

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参考文献

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