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共感性を育む異年齢保育

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先月上海で開催された中国幼児教育学会では、日本の幼児教育者の間ではよく知られたJoseph Tobin先生(アメリカ・ジョージア大学教授)とも親しくなることができました。

Tobin先生は著書「Preschool in Three Cultures: Japan, China, and the United States」で有名なアメリカの幼児教育研究者です。日本と中国、アメリカの幼児教育(保育)を文化人類学者の眼で観察比較したこの著書の中で、日本の保育の特徴として「見守り」を挙げています。京都の保育園での観察の中で、子どもたちの間にいさかいがあった時の保育者の見守る姿勢を高く評価しています。

この有名な著書の第2版「Preschool in Three Cultures Revisited」の中では、初版から20年以上たって、初版で観察した保育園の変化について報告しています。

上海でのTobin先生の講演の中では、京都の保育園の様子が動画で紹介されました。動画では年長児が年少児を抱いて運んだり、トイレで年少児の手伝いをしている様子が映し出されていました。動画を見ながらTobin先生は、「幼児同士が世話をするのは危険と思うかもしれないが、この京都の保育園では事故は起きていない。年少児の世話は、子どもの共感性(empathy)を養うことのできる優れた保育の在り方だ」と賞賛されていました。

今、幼児教育のみならず、子どもの教育現場では「社会情動的スキル」を涵養する事の重要性が認識されていますが、共感性はその中でも重要な位置を占めています。

Tobin先生は、人類学者の透徹した眼で、日本の保育のもつ特質を指摘しています。「異年齢保育における共感性の涵養」は、江戸時代の末期に日本を訪れた欧米の研究者(モース、ツェンベリー)などが、江戸時代の日本の子どもが自分の兄弟をおんぶするのを見て、その社会性涵養の意義を見いだしたことと通じるところがあります。

Tobin先生とは、会議後の会食の場でも、ワインを飲みながらいろいろお話をし、意気投合することができました。二人ともすこし飲み過ぎてしまいましたが・・・。

筆者プロフィール
sakakihara_2013.jpg榊原 洋一 (さかきはら・よういち)

医学博士。CRN所長。お茶の水女子大学名誉教授。ベネッセ教育総合研究所常任顧問。日本子ども学会理事長。専門は小児神経学、発達神経学特に注意欠陥多動性障害、アスペルガー症候群などの発達障害の臨床と脳科学。趣味は登山、音楽鑑賞、二男一女の父。

主な著書:「オムツをしたサル」(講談社)、「集中できない子どもたち」(小学館)、「多動性障害児」(講談社+α新書)、「アスペルガー症候群と学習障害」(講談社+α新書)、「ADHDの医学」(学研)、「はじめて出会う 育児の百科」(小学館)、「Dr.サカキハラのADHDの医学」(学研)、「子どもの脳の発達 臨界期・敏感期」(講談社+α新書)など。
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