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榊原 洋一所長 ありがとうございました

チャイルド・リサーチ・ネット(CRN)所長の榊原洋一先生が、2025年3月29日に逝去されました。ここに、榊原先生の生前のご活動を振り返り、その功績に心から感謝の意を表します。

榊原先生は長きにわたり小児科医として、そして子どものウェルビーイングを追い求める研究者として、常に子どもたちに寄り添い続けてこられました。そのお姿は、臨床の現場やCRNでの活動、数々の発信を通して私たちの心に刻まれています。

先生はいつも一人ひとりの子どもの声に耳を傾けることを生きがいとされました。先生が定期的に執筆されていた所長ブログ(「私の生きがいは『小医たること』」)では、診察の合間に子どもが見せたささやかな笑顔に心を動かされたこと、十年以上前に診断され歩みを経てきた患者さんの保護者の方からの感謝の手紙を受け取ったことに触れながら、少しでも患者さんに寄り添えたという気持ちが生きがいにつながると述べられています。ただその直後の一文には、小児科医は患者さんに寄り添えたという気持ちが自負の拡大や傲慢につながらないよう常に意識すべきであると綴っておられました。そこには、日々子どもや保護者に向き合うことを何よりも大切にされてきた先生の姿勢がにじみでています。

また先生は「子どもの幸福を求めることは、私たち大人の責任」と訴え続け、レジリエントな子どもを育てることの意義を強調されていました。コロナ禍のように予期できない未来を生き抜いてゆく子どもへの期待が高まる中、アジアの8か国・地域の研究者の方々と連携し、「子どものウェルビーイングとレジリエンスの育成」を理念に掲げた国際共同研究を実施。国境を越えた対話をリードされました。国や文化の違いにかかわらず、共通してレジリエンス(逆境や困難から立ち直る力)を育むのに必要なのは、特別な教育ではなく「空腹な時に食べるものが十分にあること」「話を聞いてくれる誰かがいること」だと語られた先生の言葉は、国内だけでなく海外を含めた子どもたちの尊厳と可能性を信じることの重要性を示してくださるものでした。

近年は、日本のインクルーシブ教育に対しても、精力的に真の包摂とは何かを問い続けておられました。世の中に広がる「インクルーシブ」に対する誤解や制度的限界に対して誠実に対話を重ねながら、「すべての子どもがともに学ぶ場」の必要性を訴えておられました。それは単なる批判ではなく、未来への提言だったと感じます。

先生が残してくださった数々の研究知見と、温かく深い愛情、確かな知性に裏打ちされたメッセージを大切に、引き続き子どもを取り巻く問題の解決に取り組んでいきたいと思います。

CRN事務局一同
                               

榊原 洋一 (さかきはら・よういち)(1951-2025)

医学博士。元CRN所長。お茶の水女子大学名誉教授。元ベネッセ教育総合研究所常任顧問。元日本子ども学会理事長。小児科医。専門は小児神経学、発達神経学特に注意欠如多動症、アスペルガー症候群などの発達障害の臨床と脳科学。趣味は登山、音楽鑑賞、二男一女の父。

主な著書:「オムツをしたサル」(講談社)、「集中できない子どもたち」(小学館)、「多動性障害児」(講談社+α新書)、「アスペルガー症候群と学習障害」(講談社+α新書)、「はじめて出会う 育児の百科」(小学館)、「子どもの脳の発達 臨界期・敏感期」(講談社+α新書)、「子どもの発達障害 誤診の危機」(ポプラ新書)、「図解よくわかる発達障害の子どもたち」(ナツメ社)など。

◆主な活動◆

榊原洋一先生は2011年よりCRNの副所長、2013年より所長として、2025年まで様々な活動をリードしてこられました。

●東アジア子ども学交流プログラム(2007年~2016年)

初代所長の小林登先生と二人三脚で立ち上げられたプログラムで、東アジア、とりわけ日中の研究者の交流を深め、子ども学を東アジアへ広げる取り組みでした。

eastasia_chosa_yellow.jpg 2007/11/14 第1回東アジア子ども学交流プログラム 中国(長沙)


eastasia_taipei_sakakihara.jpg 2012/9/22 第8回東アジア子ども学交流プログラム 台湾


event_02_09_08.JPG 2013/10/26 第9回東アジア子ども学交流プログラム 日本(東京)


eastasia_10th_shanghai_lightblue.jpg 2014/10/19 第10回東アジア子ども学交流プログラム 中国(上海)


●ECEC研究(2013年~2016年)

日本の保育の良さをもっと世界に発信したい! 世界の保育の質を高めたい! という願いから研究会を開催し、世界の保育の状況を比較検討するツール『ひとめでわかる世界の幼児教育・保育~各国・地域のECECのマトリクス2020~』も開発しました。

20151004_ECEC5th_paneldiscussion.jpg 2015/10/4 第5回ECEC研究会パネルディスカッション 日本(東京)


●CRNアジア子ども学研究ネットワーク(CRNA)(2016年~2025年)

東アジアからアジアへと対象範囲を拡大し、8か国・地域の研究者らと共に「アジアの子どものウェルビーイング」をテーマとした国際会議を開催しました。その後コロナ禍において「子どものウェルビーイングとレジリエンスの育成」をテーマとした国際共同研究を立ち上げ、推進しました。

CRNA_1st_Shanghai_Sakakihara_red.jpg 2017/3/4 CRNアジア子ども学研究ネットワーク(CRNA)第1回国際会議 中国(上海)


asiapj_01_07.jpg 2017/3/5  CRNアジア子ども学研究ネットワーク(CRNA)第1回国際会議 中国(上海)


CRNA_2nd_Tokyo_sakakihara_brown.jpg 2018/3/17 CRNアジア子ども学研究ネットワーク(CRNA)第2回国際会議 日本(東京)


asiapj_02_04.jpg 2018/3/18 CRNアジア子ども学研究ネットワーク(CRNA)第2回国際会議 日本(東京)


20190927_Jakarta_FasliSakakihara.jpg 2019/9/27 CRNアジア子ども学研究ネットワーク(CRNA)第3回国際会議 
インドネシア(ジャカルタ)


crna2019_3_all.jpg 2019/9/27 CRNアジア子ども学研究ネットワーク(CRNA)第3回国際会議 
インドネシア(ジャカルタ)


●発達障害、インクルーシブ教育

「所長ブログ」や「Dr.榊原洋一の部屋」で数多くの記事をご執筆され、発達障害に関する基礎知識の発信もされています。またインクルーシブ教育の先進事例の実践者との対談では、活発な意見交換をされていました。

lab_13_08_03.jpg 2023/12/14 やまなみ工房内ギャラリーgufgufで、山下完和施設長と対談 日本(滋賀)




ここからは、榊原所長がご自身の活動や日頃疑問に思われたことなどについて執筆されたブログ記事、小児科医という立場から行われた発信、かかわられた研究活動などをまとめたページをご紹介します。

◆所長ブログ◆

所長の日々の活動の様子や、子どもをめぐる話題、所感などのほか、「何か変だよ~」シリーズとして独自の視点から世の中に一石を投じる発信をしていた所長ブログは、下記よりご覧ください。
https://www.blog.crn.or.jp/chief2/

◆Dr. 榊原洋一の部屋◆

専門分野である発達障害について分かりやすく解説した記事や、子どものからだと健康に関する悩み・疑問に答えたコーナーです。
https://www.blog.crn.or.jp/lab/07/

◆インクルーシブな社会の実現を目指して◆

インクルーシブ教育の先進的な取り組みをしている実践者と対談をするシリーズです。
https://www.blog.crn.or.jp/lab/13/01/

◆CRNアジア子ども学研究ネットワーク(CRNA)国際共同研究◆

「子どものウェルビーイングとレジリエンスの育成」をテーマに、アジア8か国・地域の研究者と連携して実施したCRNA国際共同研究については、下記よりご覧ください。
https://www.blog.crn.or.jp/crna-research-activities.html

◆動画◆

執筆のみならず、自らの声で発信をすることも積極的に行っておられました。CRNA国際共同研究やインクルーシブ教育、コロナ禍での医師としての立場からの発信などは、下記よりご覧ください。

CRNA国際共同研究

発達障害とは?|シリーズ【発達障害におけるADHD、ASD、LDの診断基準、年齢別の症状と対応】

インクルーシブ教育を考える(1)

新型コロナウイルス感染症 専門家が保護者の心配事を解決!【健康編】①【動画】子どもが新型コロナウイルスに感染してしまったら?

「子どもたちの代わりに未来をできるだけ予見し、未来の大人(現在の子ども)が生きやすい世界をつくり上げてゆくことの責任は、子どもたちにではなく、私たち大人にあるということなのです」
(榊原 洋一)

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