CHILD RESEARCH NET

HOME

TOP > 論文・レポート > ネットジェネレーションの教育 > 【ネットジェネレーションの教育】 第2回 親子インターネット利用調査の日米比較 (5)

このエントリーをはてなブックマークに追加

論文・レポート

Essay・Report

【ネットジェネレーションの教育】 第2回 親子インターネット利用調査の日米比較 (5)

要旨:

ネット不安感が高い子どもほど、ネット上のみの知り合いとコミュニケーションをとっていることがわかった。また、母親や父親とよくコミュニケーションをとっている子どもほど、ネット不安を感じていないことがわかった。ネットに対するイメージからは、子どもはインターネットに対して安心感や親近感を持っている反面、親は心配をしている構図が伺えた。長時間インターネットを利用している子どもは、ネットのみの知り合いとコミュニケーションを図り、ネット分離を不安に感じているけれども、親はさほど不安に感じていないことが推察された。さらに、ネットに対して愛着を持ちすぎるとネット不安になる可能性があることも推察された。

 

7.ネットとコミュニケーション

 

図7-1~図7-4は、ネット不安感と、設問
①ネット上のみの知り合いとはよくコミュニケーションをとりますか
②学校での知り合いとはよくコミュニケーションをとりますか
③母親とはよくコミュニケーションをとりますか
④父親とはよくコミュニケーションをとりますか
との関連を示したグラフである。

 

図7-1を見ると、ネット不安感が高い子どもほど、ネット上のみの知り合いとコミュニケーションをとっていることがわかる。また、図7-2から、友達とのコミュニケーションの頻度とネット不安感は、特に特徴づけられる点はなかった。図7-3、7-4から、ネット不安と母親や父親とのコミュニケーション頻度に関しては、母親や父親とよくコミュニケーションをとっている子どもほど、ネット不安を感じていないことがわかった。


report_03_07_1.png
図7-1 ネット不安×ネット上のみの知り合いとのコミュニケーション頻度

report_03_07_2.png
図7-2 ネット不安×学校での知り合いとのコミュニケーション頻度

report_03_07_3.png
図7-3 ネット不安×母親とのコミュニケーション頻度

report_03_07_4.png
図7-4 ネット不安×父親とのコミュニケーション頻度

 


8.インターネットに対する子どものイメージ

 

インターネットに対するイメージを以下の5項目に関して1から6までのリッカートスケール(距離尺度)によるSD法によって調べた。
①安心⇔不安
②好き⇔嫌い
③興味深い⇔退屈
④くつろげる⇔ストレスを感じる
⑤役に立つ⇔役に立たない
⑥親しみがある⇔親しみがない

report_03_07_5.gif
図8-1 ネットに対する子どものイメージ

平均の値をもとにネットに対する子どものイメージを図8-1に示した。ネットは不安だ、危険だと大人は種々の心配をしているが、子どもにとってネットは、安心でき、好きなものであり、興味深く、くつろぐことができ、役立ち、親しみのある存在だと感じていることがわかった。

 

インターネットに対するイメージの相関係数と平均・標準偏差は、それぞれ表8-1、8-2に示した。1%水準でPearson の相関係数が有意であるものに(**)をつけた。

report_03_07_6.bmp
表8-1 インターネットに対するイメージの相関係数
report_03_07_7.bmp
表8-2 インターネットに対するイメージの平均と標準偏差

表8-2の平均を見ると、全体的に平均以下、つまり、インターネットに対する安心感(①)、好意(②)、興味(③)、くつろぎ感(④)、有用感(⑤)、親しみ(⑥)を持っていることがわかった(注:数値が小さいほどその傾向が強い)。

 

図8-2に示す、保護者に対する「あなたのお子様がインターネットを利用する上で心配はありますか。」に対する割合(日米比較)のデータを合わせて考えると、子どもはインターネットに対して安心感や親近感を持っている反面、親は心配をしている構図が伺える。

report_03_07_8.png
図8-2 ネットに対する保護者の心配

図8-2のネットに対する保護者の心配の日米比較を見ると、日本は少し心配だが半数を超している一方で、いくらか心配・とても心配に関しては、米国は47.8%であるのに対し、日本は35.9%であり、12%程度米国より心配している割合が少ない。また、図8-3に示す保護者が子どものインターネット利用に関して気になることに関する日米比較を見ると、米国は約25%が見知らぬ人からの誘いを心配しており、心配要因の1位であるが、日本は約12%にとどまっている。わいせつ画像・個人情報が心配要因の3位までに入っている点は変わらない。日本でもネット上のみの知り合いとコミュニケーションをとっている子どもは、ネットから離れることを不安だと感じている結果となっている図7-1と、インターネット利用時間と不安感を示す図20を合わせてみると、日本の子どもも、長時間インターネットを利用している子どもは、ネットのみの知り合いとコミュニケーションを図り、ネット分離を不安に感じているけれども、親はさほど不安に感じていないことが推察される。おそらく、ネット上で見知らぬ人から誘いを受ける機会の多さを日本の親はあまり認識していないのではないだろうか。

report_03_07_9.gif
図8-3 保護者が子どものインターネット利用に関して気になることに関する日米比較
(設問「あなたのお子様がインターネットを利用することで、気になる順番に3つこたえて下さい。」に対して3つ回答したものを合計して集計したグラフ。)

 

このほか、インターネットに対するイメージと好きな科目に関して分散分析を行ったところ、「③興味深い⇔退屈」に関して有意であった(F(10)=2.62,p<.01)。①②④⑤⑥に関しては有意でなかった。

 

ネット不安感(設問「常にネットにつながっていないと不安に感じますか。」)ごとのインターネットに対するイメージを分散分析によって調べたところ、すべての項目に関して有意であった。①(F(3)=25.73,p<.01)②(F(3)=22.74,p<.01)③(F(3)=22.60,p<.01)④(F(3)=41.61,p<.01)⑤(F(3)=5.70,p<.01)⑥(F(3)=38.22,p<.01) report_03_07_10.bmp
表8-3 ネット不安感とインターネットに対するイメージ

 

項目ごとの、不安感を表8-3に表した。グリーン(平均値低)~レッド(平均値高)を示している。常にネットにつながっていないと不安に感じ不安感が高い子どもほど、インターネットに対する安心感(①)、好意(②)、興味(③)、くつろぎ感(④)、有用感(⑤)、親しみ(⑥)を持っていることがわかった。時々子どもの中には、自分のパソコンにペットのような名前を付けて愛用しているケースもあるといわれているように、インターネットに対して友達やペットのような好意と興味と有用感、親しみ、安心感を強く持っているために離れると不安になるのであり、ネットに対して愛着を持ちすぎるとネット不安になる可能性があると推察される。

 

また、インターネットに対するイメージとインターネット利用時間に関するグラフを図8-4に示した。(インターネットに対する安心感(①)、好意(②)、興味(③)、くつろぎ感(④)、有用感(⑤)、親しみ(⑥)を持っている子どもほど、縦軸の値は小さい値を示す。)

report_03_07_11.png
図8-4 インターネットに対するイメージと利用時間


*本稿は調査データの一部(再分析を含む)である。元データ等は参考資料の方を参照いただきたい。

 

 


<付録> 調査期間と調査人数

・日本
調査期間:2007/10/12~2007/10/15
依頼数(子ども) 936名
有効回答数(子ども) 695名
依頼数(親) 858名
有効回答数(親) 671名
・米国
調査期間:2007/5/1~2007/5/3
依頼数(子ども) 717名
有効回答数(子ども) 603名
依頼数(親) 680名
有効回答数(親) 609名


<参考資料>

『日米こどものインターネット利用調査』(2007/11)
監修 山形大学学術情報基盤センター准教授 加納寛子
有限責任中間法人ブロードバンド推進協議会セキュリティ専門部会

このエントリーをはてなブックマークに追加

TwitterFacebook

インクルーシブ教育

社会情動的スキル

遊び

メディア

発達障害とは?

論文・レポートカテゴリ

アジアこども学

研究活動

所長ブログ

Dr.榊原洋一の部屋

小林登文庫

PAGE TOP