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【宝宝、ニーハオ!-上海子育て記】 第3回 幼稚園はどこに通う?(前編)

上海で幼稚園を探す

上海に来た当時、息子は2歳と2カ月。日本ではこのまま小学校まで保育園でと思っていたのですが、こちらに来て急に事情が変わりました。幼稚園を探さなくてはいけなくなったのです。

それでも、4歳になる年で年少クラスですからまだまだ先だと思っていました。ところが、こちらの幼稚園はどこも年少クラスのさらに一つ下、年々少クラスからあるようです。しかも、人気の幼稚園になると年少からでは入りづらいとの噂。また、ローカル幼稚園やインターナショナルスクールの新学期は8月なので、その時すでに年々少の募集は閉め切られていたのです。いつから行かせるかは後で考えることにして、とにかく幼稚園について調査、見学を開始することにしました。


便利なスクールバス

幼稚園について調べていて最初に気がついたのは、上海はスクールバスのシステムが非常に発達しているということです。ほとんどの園が大小さまざまなバスを園からマンション敷地内まで、ドアtoドアで走らせています。そしてそれはかなり遠方までを網羅しているのです。これは確実に、幼稚園選択の幅を広げているように感じました。

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校門前で子どもたちを待つスクールバス


託児所という存在

少々幼稚園から話はずれますが、こちらには日本人向けの託児所もあります。そしてその数は少なくなく、年々増えていく印象です。幼稚園とは違うその特徴は、

  • 受け入れ年齢が早く1歳未満から、もしくは1歳6カ月から。 
  • 特に入園時期がなくいつでも入園できる。 
  • 毎日通園しなくても週に2日、5日など選べる。一日だけ、などスポットでの預かりのサービスもある。

では、日本で一般的に言う託児所もしくは保育園とはどう違うのでしょうか? 最も違うのは、一日のほとんどの時間が教育に充てられている点です。日本語、英語、中国語の3カ国語が学べ、算数、アート、音楽、ダンスなどカリキュラムは豊富で、認可の関係上幼稚園という看板は出していませんが、提供するサービスは幼稚園と遜色ない内容なのです。

どうしてこういうふうになったのかと不思議に思い、調べてみると、中国ではもともと0歳~3歳の教育が衛生部門管轄の「託児所」、3歳~6歳が教育部管轄の「幼稚園」と分かれていましたが、実際は年齢による所管の区別があるのみで、日本の幼保の二元的制度のような明確な違いはなかったようです。そして現在はこの区別がさらにあいまいになり、0~6歳までを同じ施設が一緒に受け入れる流れがあることを知りました*1

託児所の料金は幼稚園に比べると安く、給食もスクールバスもありますから、幼稚園入園前の0歳~3歳の子どもを預ける場所として人気があるのもうなずけます。


日本人が通う幼稚園とは

さて、幼稚園に話を戻すと、日本人の子どもが上海で幼稚園に通う際の選択肢として、大きく下の三つのカテゴリーがあります。それぞれの特徴を含め簡単に紹介しますと、

  1. 日系幼稚園・・・教師は日本人、日本のカリキュラムを取り入れ、運営も日本流。言語は日本語のみ。日本の幼稚園にスムーズに戻れる。しかし園生活は日本そのものなので、海外ならではの経験は比較的少なくなる。

  2. ローカル幼稚園・・・地元中国の幼稚園で外国人の子どもを国際部で受け入れている。言語は中国語、英語。カリキュラムは中国式でお勉強を重視*2。中国語・英語を同時にマスターできるのが利点。保護者が英語もしくは中国語ができないと難しい。

  3. インター系幼稚園・・・インターナショナルスクール付属の幼稚部。言語は英語。アメリカ系、英国系、シンガポール系、韓国系、ローカル系などがある。子どもの英語習得が期待できる。一方で日本語が後退する可能性も。基本的に親の英語力が必要。

ポイントは言葉・しつけ・学費・環境

調べていくうちに、上海で幼稚園を選ぶ際のポイントがだんだんと分かってきました。

まずどの言葉を学ばせるのか、これは重要です。これからも海外駐在の機会がある、いつかは留学させたいと考える家庭などの場合は、インターナショナルスクールを選ぶ場合が多いかもしれません。逆にこれからはずっと日本でというのであれば、日本語が遅れないように日系の幼稚園にするでしょう。また、「郷に入れば郷に従え」、中国では中国語を話せるようにするのが自然だ、と考える方もいます。幼稚園を選ぶのに習得する言葉の選択から始まるのは、海外駐在者家庭の特有の事情でしょう。

さらに、言語のみならず、幼稚園は常識、道徳観、マナーなども学ぶ場であるということも無視できません。例えば、日系の幼稚園では、おかたづけ、集団行動、協調性、などをきっちり教えるでしょうし、ローカル幼稚園では、礼儀作法など基本的なしつけは家庭で行い、幼稚園は学習の場ととらえられているそうです。インターナショナルスクールは、生徒それぞれの個性を尊重し、総じて自由な校風だという印象です。

もちろん園によってまたそれぞれに特色はありますが、まず親は、この三つのカテゴリーの中でどこが自分の子どもに向いているのか、またどう育ってほしいのかを考える必要があります。幼少期に受けた教育の将来への影響がどれほどかは分かりませんが、日本で育つ子どもたちに比べれば特殊な環境にいることは確かですから、親は自ずと慎重に、そして真剣に考えることを余儀なくされるのではないでしょうか。

そしてさらに考慮しなくてはいけないのは学費です。上海の私立幼稚園の学費は全体的に高めで*3、日系幼稚園で約100万円前後、ローカル幼稚園国際部だと約70万円~、インターナショナルスクール幼稚部にいたっては最低でも約150万円以上の費用がかかります(バス代、給食代、施設利用料などを含めた年間費用)。ちなみに託児所は、週5日通った場合でも1カ月約50,000円から利用できます。会社からの補助の割合、補助の開始時期は各家庭それぞれですし、子どもが二人以上になると負担は倍以上ですから、日本以上に経済的な要素が選択にあたっての重要な位置を占めることは間違いありません。

これに加えて、施設面(園庭、プール、清潔なトイレなど)、運営面(経営者、園長の人柄、PTAがあるかないかなど)、給食の有無、自宅との距離、など基本的なことも軽視できません。考え始めると選択肢が多すぎて途方に暮れてしまうほどです。もし通える幼稚園がもっと限られていればこんなに頭を悩ます必要はないのでしょうが・・・。これもぜいたくな悩みですね。

後編では実際にいくつかの日系幼稚園、インター系幼稚園へ見学に行ったレポート、そして我が家の幼稚園決定についてお伝えします。


筆者プロフィール
石橋 貴子

チャイルド・リサーチ・ネット日本語版・英語版編集、外資系企業勤務を経て、2011年6月より夫の転勤に伴い上海在住。
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