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【宝宝、ニーハオ!-上海子育て記】 第2回 習い事とベビーシッター

私たちが来た6月、上海は毎日雨でした。息子を連れての雨の中での外出は一苦労。中国語もできない、知り合いもいない。日中は自宅で二人きりで過ごす日々が続きました。しかしそんな密室育児からも卒業!短い梅雨が明ける頃、息子は習い事に通い始め、自宅にはアイさんという強力な助っ人が登場、私はワクワクと中国語を学び始めました。

上海で習い事探し

じめじめした家を出て、とにかく何かしようとまず始めたのは、子どもの習い事探しです。幸いなことに上海には日本人の子どもを対象にした習い事が豊富で、英会話、ピアノ、バレエ、水泳、幼児教室など日本で一般的なものから、太極拳、少林拳、中国語など、こちらならではのものまでなんでもあります。こうした情報は日本語の情報誌に広告が載っています。

また、ローカルの子ども向けの習い事もちょっと街を歩くだけでよく目に付きます。一番多いと感じるのは何と言っても英語教室ですが、アート、工作系の教室が目立つのは日本と明らかに違う点です。この印象は調査結果と一致しているようです*1。私たちはまず自宅から近い英語教室とアート教室の体験レッスンに行ってみることにしました。

新しくできたばかりの子ども向け英語教室は、すでに上海に何か所かあり、とても人気があるようでした。講師はみな若い中国人女性でしたが、国籍がカナダ、シンガポールなど英語圏のネイティブスピーカーの方々でした。モニターに映し出されるキャラクターたちと一緒に歌ったり踊ったり、子どもたちは遊んでいるうちに自然と英語を連発しています。教室はきれいでスタッフも多く、かなりしっかりと運営されているように感じました。

次のアート教室では、子どもたちは大きなエプロンを着て、汚れを気にせず水をバシャバシャ、絵の具と混ぜたりそれを壁に描きなぐったり。カリキュラムも絵や工作をきちんと教えるというよりは、自由な発想を伸ばすことに重きをおいているようでした。しかし、最も印象的だったのは、学校側がアートを学ぶことがいかに脳の発達に良いかということを何度も強調していたことです。芸術の才能を伸ばすというよりも、頭の良い子にしたいという親の願いが人気の理由なのかと合点がいきました*2


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アート教室体験

どちらの体験レッスンも定員いっぱいです。付き添いの親、もしくは祖父母は真剣に学校の説明に聞き入り、子どもの活動をあれこれと手伝ってやり、かなり教育熱心な印象でした。施設は安全で清潔、トイレや洗面所も子どもが使いやすいものが設置されていました。上海は都会と言えども、まだ日本ほど水回り環境は発達していませんから、この点はとても重要です。また、教室にはモニターカメラがあり、待合室でレッスン中の子どもの様子を観察できるようにするなど、親が安心して子どもを預けられるための工夫が凝らしてありました。

英会話もアート教室も気に入ったのですが、残念なことにメインの対象は幼稚園に通う3歳~5歳で、2歳児はクラス数が少なく、しばらくはキャンセル待ちとのことでした。

この後、水泳教室にも見学に行ったのですが、やはり満3歳からと断られ、結局、口コミだけを頼りに、なんとか日本人対象のリトミック教室と体操教室に入会することができました。どちらも大々的には宣伝していませんが、上海では比較的古くからある教室です。

言葉を覚えたてだった息子は、リトミックでは歌やダンスを楽しむだけでなく、自己紹介や、呼ばれたら「はい!」とお返事をするなど、同年代のお友達と交わりながらいろいろなことができるようになりました。また、幼かった彼がジャンプしたり走ったり、男の子らしい活発さを見せるようになったのも、私一人では絶対にできなかったことです。習い事が決まったことによって、少しずつ日中の過ごし方にメリハリが出てきて生活を楽しむ余裕も出てきました。

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リトミック教室

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体操教室


子育ての味方、アイさん登場

さて、息子の習い事の次は私の中国語学習です。上海は国際都市ですが、実際普段の生活の場で英語はほとんど通じず、中国語をある程度理解できないと何もできません。しかし問題は、小さな子どもがいる状態でどうやって勉強するのかということです。家庭教師の方に来てもらうにしても、息子を二時間静かに待たせるのは不可能です。学校に通い、その間託児所に数時間でも預けようかなどと悩んでいた時、知り合いからアイさんを雇いませんかというお話がきました。

ここでアイさんのご説明をしますと、阿姨アーイー、本来中国語ではおばさんという意味の、お手伝いさんのことです。"さん"をつけるのは誰が始めたのか、呼び捨ては失礼と考える、日本人特有の呼び方です。一般的にアイさんは、その名の通り40代以上の既婚女性が多いようです。お仕事は料理、洗濯、お掃除、子どものお世話と、主婦の仕事を一通り手伝ってくれますが、お掃除が上手なアイさんもいれば、料理が得意、子どもに慣れている、などそれぞれにアピールポイントが違います。また上海出身の方は少数派で、江蘇省、安徽省など上海から比較的近い地方出身の方が多いようです。お給料は経験や就労条件によってさまざまで一概には言えませんが、ここ3~4年で倍になったとは言え、日本における同様のサービスとくらべるとまだ非常に安いと言えます。

まずは家庭教師に来てもらう間息子をみてもらおうと、さっそく来ていただくことにしました。現在も働いてもらっているこのアイさんは、日本人家庭で働いた経験が長く、子どもが大好きな陽気な方です。息子と遊んでくれるだけでなく、彼が病気になれば一緒に心配し病院に付き添ってくれ、私の調子が悪い時は大丈夫、任せて!と彼の食事やお風呂、身の回りの世話を全て引き受けてくれます。上海駐在中に出産、子育てをする方が多いと言われますが、信頼のおけるアイさんの存在が大きいのでしょう。会話が全て中国語なのも中国語学習の一環です。

もちろん、言葉の行き違いや習慣の違い、考え方の違いでお互いに相いれない部分も確かにあります。しかし、それでも、夫と私同様に息子を可愛がってくれ、その身を案じてくれる人にここ上海で出会えたことはありがたく、いつでも助けてくれる人がいる安心感は何物にも代えがたいものだと実感しています。

ちなみに息子が最初に覚えた中国語は「我们!洗手!干净!(私たち!手を洗おう!キレイだね!)」でした。いつも外遊びから帰ってくるたびに言われているからでしょう。親として本当に頭の下がる思いです。

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アイさんのお弁当を食べる息子



  • *1 参照:幼児の生活アンケート・東アジア5都市調査2010の調査結果
    上海の子どもがしている習い事 第一位 英会話 同率一位 絵画・造形 第三位 計算
  • *2 その後数人の中国人の知り合いにこのアート教室の人気について聞いてみたところ、「知識を詰め込むばかりの教育だけではなく、感情や感性を育てる教育も重視されているからではないか」という意見や、「何かに集中することを繰り返すことを通して落ち着いた子になって欲しいから。」という意見がありました。中国の子どものしつけについてはまた後ほど取り上げてみたいと思います。
筆者プロフィール
石橋 貴子

チャイルド・リサーチ・ネット日本語版・英語版編集、外資系企業勤務を経て、2011年6月より夫の転勤に伴い上海在住。
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