CHILD RESEARCH NET

HOME

TOP > 論文・レポート > 子育て応援団 > 【ドイツの子育て・保育事情~ベルリンの場合】 第12回 習い事事情:水泳教室

このエントリーをはてなブックマークに追加

論文・レポート

Essay・Report

【ドイツの子育て・保育事情~ベルリンの場合】 第12回 習い事事情:水泳教室

要旨:

小さな子どもが習い事に通うことが日本ほど一般的でないベルリン。そんな中、息子は誕生日プレゼントとして祖母が申し込んでくれた水泳教室に通ってきた。水遊びは大好きなのに、なぜかこの教室を最後まで嫌がっていた息子。その原因を探るべく、祖母に代わり同行する機会があったが、レッスン直前に急におなかがゆるくなってしまうという事態が発生!先生にレッスン参加の可否を聞いてみると「それは本人が決めること」ときっぱり。結局、息子の希望でレッスンに参加し、粗相なく無事レッスンを修了した。通学を嫌がる理由はわからなかったが、今後、気長に上達していければいいと思う。

日本では子どもが小さな頃から習い事に通うことが一般的だったように記憶しています。例えば、英語教育は0歳児から通えるクラスまであり、英才教育と相まって、非常に盛ん。一方、ベルリンでは子どものための語学教室はあまり聞いたことがありません。これは、息子の通う園のようにバイリンガル保育園の数が多いこと、また多民族都市ベルリンでは、どちらかの親が非ドイツ語話者であるなど、多言語環境で育っている子どもが多いことが関係しているのかもしれません。

また他の習い事についても、普段通っている保育園や日本語補習校のクラスメートで、定期的にお稽古事に通っている子どもは少なく、数人が週1回ダンスや音楽の教室に通っている程度。この点について、ママ友達と話してみると、子どもが小さいうちは、公園など屋外でたっぷり遊んで心身ともに鍛えて欲しい、という意見の他に、経済状況の良くないベルリンでは、小さな頃から習い事をさせる余裕のある家庭は少ないのかもしれない、という声も聞かれました。実際、景気の良い旧西ドイツの都市では、低年齢から習い事をさせる家庭も多いとのことです。

report_09_69_1.jpg
秋の森の中をお散歩

そんな中、息子の4歳のお誕生日プレゼントにと、ドイツの祖母(Oma)が初心者のための水泳教室に申し込んでくれました。息子は8月から彼女と共に、週2回、45分のレッスンに通ってきましたが、先日、2か月のコースを修了しました。

水遊びは大好きなのに、なぜかこの教室を嫌がっていた彼。コース初日は全メニューを問題なくこなしたものの、2回目からは子ども用プールの小さな滑り台から降りることを一人断固拒否したり、彼だけプールにジャンプして入ることができなかったりと散々で、普段は厳しいドイツのおばあちゃんにさえ「無理強いさせなくてもいいよ」と言わせた位でした。

かといって、泳ぐのが嫌いなのかと言えば、そうでもないらしく、毎日お風呂で、習ったことを一人で何度も練習し「僕、顔をつけて泳げるのよ!」などと得意げに披露してくれます。

また、天気が悪くて、外遊びができない週末にはパパとこのプールに行って、大喜び!浮き輪付きでバタ足をしたり、長時間、水中に顔をつけて浮いたり、パパ曰く「2か月でここまでできるようになれば上出来!」一応、レッスンの成果は出ていたようです。

何がそんなに嫌だったのか?ドイツの水泳教室では、先生の教え方が相当厳しく、スパルタ方式なのか?それとも、クラスメートのレベルが高いのか?

レッスン期間中ずっと疑問に思っていましたが、一度だけ祖父母の都合がつかず、私が連れて行く機会がありました。実際のレッスンの様子を自分の目で確かめる良い機会だと思いましたが、あいにくこの日は普段の先生がお休みなので、代講の先生とのこと。

普段から甘えん坊の息子。私が同行すると「レッスンに参加しないで、ママと一緒にプールに入りたい」と甘えてくるのは目に見えています。さらに、いつもと違う先生とは、ダブルパンチ!「大丈夫かしら?」と不安を抱えつつ、まずは心の準備を息子にさせます。「今日はママと一緒にプール行くのよ。でもママは行ったことがないので、勝手が全然わからないから、今日はあなたがリーダーになって教えてね!」と、息子に主導権を握らせ、責任感を持たせ、甘えられないような雰囲気を醸し出す作戦で、朝から接していました。

すると本人は「えっ、Oma(おばあちゃん)は今日来ないの?」と既にひるんでしまっています。何度も私が「今日のリーダーはあなた、ママは何にもわからないからね」と繰り返すと、ようやく「ママ、大丈夫よ、今日は僕がプールに連れて行ってあげるからね!」と保育園にお迎えに行く頃には心強いコメントを口にするまでになりました。一旦、帰宅して、景気づけにおまんじゅうとおせんべい、そして一口サイズのフローズンヨーグルトを食べて、エネルギー補充完了し、いざ出陣!

report_09_69_2.jpg
リスも冬支度?

うちから徒歩10分ほどのところにあるプールへは「ここはまっすぐで、次の角を左よ」などときちんと道案内をしてくれ、無事到着。見事なナビゲーションに、ほっと一安心です。

受付を済ませ、更衣室で着替えを終えるとおもむろに「ママ、うんち~」と言ってきました。「はいはい」とそのまま隣接するシャワー室のトイレに連れて行きます。

その後、集合場所のプール入口で待っていると、次々にクラスメートと思しき子どもたちがやって来ました。「ハロー!」と声をかけられます。なかなか良い雰囲気だと思いましたが、当の本人の息子は何も言わず、私の後ろに隠れたままです。

そうこうしているうちに、また「ママ、またうんち~」ときたので、再びトイレに連れて行くと、ちょっと柔らか目。「1回では出きれなかったのかな?」と思い、その後、再度、集合場所のプール入口へ向かいました。クラスメートたちとその母親たちとしばし待っていると、またまた「ママー、またうんち~!」とやって来ました。

「これはちょっとまずいかも」と思いつつ、急いでトイレに連れて行くと、さらに柔らかく、下痢のレベルになっていました。滅多におなかを壊すことはない息子が、続けざまにトイレに行くので、こちらも少し不安になってきました。

さらに、ベルリンのプールは概して水温が低く、以前、パパと遊びに来たときには、唇が紫になってブルブル震えていたので早めに切り上げた程でした。

「あの一口フローズンヨーグルトがよくなかったのかな?今日のプールは無理かしら?!」と思いましたが、せっかくここまでこぎつけたのに、ここであっけなく棄権したら、不戦敗、悔しい黒星です。

でも、水中で漏れてしまったら大変!「レッスンを中断してプール清掃になったらどうしよう。しかも、ここはドイツだし、責任などを問われて一大事になってしまったら嫌だなあ・・・」などと一瞬のうちに色々考えを巡らせましたが、まず先生に聞いてみようと思い、プール入口へ戻りました。

report_09_69_3.jpg
顔より大きな葉っぱ

すると、既に皆は集合場所からプールサイドへ移動して、先生が出欠をとっていました。「ハロー!」と笑顔で優しく呼ぶその先生は、若くてモデルのような長身、しかも金髪碧眼の絵にかいたような美人です。

しばし見とれてしまいましたが、ふと我に返り「ちょっと急におなかがゆるくなったみたいで、ここに来て既に3回もトイレに行ってしまったのですが、今日はプールに入るのをやめた方がいいでしょうか?」と聞いてみました。

日本だったら、少しでもおなかがゆるかったり下痢気味だと、その時点で問答無用にアウトだと思いますが、ここはドイツ。先生はきっぱりこうおっしゃいました。

「クラスに参加するかしないかは、息子さんが決めることです。」

そう、ここではどんなに小さい子どもでも、決定は各々個人にゆだねられているのです。先生が息子の方を向いて「今日、みんなとプールに入る?」と聞くと「うん!」とうなずく彼。

「プールの中で、うんちが出ちゃったらどうしよう?!」と一人焦る私に先生は「レッスンの前で緊張しているのかもしれませんね。通常、保護者の方は外に出てもらっているのですが、今日はトイレにすぐに連れて行けるよう、お母さんはプールサイドで見学していても大丈夫ですよ」と言ってくれました。

report_09_69_4.jpg
紅葉の下サイクリング

お言葉に甘えてベンチから見学することにしましたが、手に汗握って「どうか粗相のないように・・・」とドキドキしっぱなしです。 そんな私の心配をよそに、レッスンは始まります。浅いプールに座ってバタ足の練習をしたり、先生に手を引いてもらい、プールを1周するなど、序盤は順調に見えましたし、時々、こちらに手を振る余裕すらありました。優しい先生の教え方も上手で、決してスパルタ方式のようには見えません。

しかし、レッスンが進み、タスクがダイナミックになってくると、息子の及び腰が目につくようになります。両手と胴に浮き輪をした完全装備にも関わらず、水中へのジャンプを一人拒み「こっちにおいでよ!」と先生に何度も呼ばれていました。

他の子どもたちが自ら滑り台で何度も滑っているのに、これも不参加。最後のフリーアクティビティでは、一人だけ首を振って参加せず、プールサイドから見学状態です。結局、調子良く参加していたのは前半だけでした。

このレッスンはベビースイミングの後の初めてのクラス。4歳になって初めて参加が許可されるのですが、10名ほどのクラスメートの中では、4歳になってすぐ参加した息子が最年少でした。体も一番小さいので、ちょっと引け目があったのかもしれません。

あるいは、集団行動が嫌いなのかしら?などと思いにふけっているうちに、レッスンは無事終了し、 子どもたちが保護者の待つ集合場所に戻ってきました。息子も笑顔で私の元に駆け寄ります。とにかく粗相なく終了したことで、こちらも一安心。

「よく頑張ったね!」と大いに褒めた後「先生優しいね」と言うと「うん、いつもの先生と同じ」という息子。さらに「またレッスンに来たい?」と聞いてみると「ううん、レッスンはもういい。でもパパと一緒に泳ぎたい!」との返答でした。レッスン嫌いの原因は結局わかりませんでしたが、泳ぐこと自体は好きなようなので、これからパパの個人レッスンで気長に上達すればいいと思います。また、あれだけ嫌がっていたにも関わらず、休んだのは、16回のレッスン中、同行する大人がいなかった1回だけでした。その頑張りは認めてあげようと思います。

筆者プロフィール
シュリットディトリッヒ 桃子

カリフォルニア大学デービス校大学院修了(言語学修士)。 慶應義塾大学総合政策学部卒業。 英語教師、通訳・翻訳家、大学講師を経て、㈱ベネッセコーポレーション入社。2011年8月退社、以来ドイツ・ベルリン在住。
このエントリーをはてなブックマークに追加

TwitterFacebook

インクルーシブ教育

社会情動的スキル

遊び

メディア

発達障害とは?

論文・レポートカテゴリ

アジアこども学

研究活動

所長ブログ

Dr.榊原洋一の部屋

小林登文庫

PAGE TOP