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論文・レポート

【イギリスの子育て・教育レポート】 第21回 イギリスで「0~4歳児の親子向け広場」に行ってみた

橋村 美穂子

2017年10月 6日掲載

要旨:

今回は「0~4歳児(未就園・未就学児)の親子向け広場」について紹介する。イギリスの親子広場は、自治体の施設のほかに、教会や地域のホールで開催されていることが多い。筆者が見学した広場は、毎週月曜・火曜の10:00-11:30に教会で行われ、整理券が配布されるほどの人気。最大70組140名の親子でごった返す。0歳~4歳児がごっこ遊びや体を使った遊び、工作などさまざまな遊びを楽しんでいた。この広場の特徴は宗教に関係なく参加できること、保護者向けにも飲み物やお菓子、本が用意されていることだ。

広場で気になるのは「子ども同士のトラブル」。この広場は、多くの親子で混雑していることや保護者同士が話し込んでいるため、子どもが泣いて初めてトラブルに気づくということが多いと言う。しかし、これがイギリスのお国柄というわけではないようだ。地方都市の小さな村の広場に通う友人によると、「広場で出会う子はご近所さん。将来、我が子のクラスメイトになるかもしれない」という気持ちからか、日本のように、子どもの様子に目を配り、トラブルを避けるように介入することも多いという。

Keywords: 橋村美穂子, イギリス, 未就園児, 親子, 広場, 子育て, 育児, トドラーズグループ, プレイグループ

この連載では、小学生の息子をもつ母親による「イギリスの子育て・教育」体験レポートをご紹介します。

秋らしくなってきましたね。イギリスは気温が下がり、雨の日も増えるため、子どもが外遊びするのには厳しい季節に突入しました。変わりやすい天気でも思い切り遊べるように、イギリスでも親子向け広場がたくさんあります。筆者は先日、0歳と2歳の子どもをもつ日本人の友人に付き添い、2つの「親子向け広場」に潜入してみました。今回は、未就園・未就学児親子向け広場(以下「広場」と表記)について、日本とイギリスの共通点や相違点を紹介します。

「教会」が広場を主催?!

日本の親子向け広場は、「子育て支援センター」や「児童館」、「幼稚園や保育園等」で開催されていることが多いでしょう。イギリスにも日本の「子育て支援センター」のような機能をもつ「チルドレンズ・センター」があり、ここでも遊ぶことができますが、イギリスではなんと「教会」が広場を主催していることが多いのです。教会は子どもからお年寄りまで幅広い世代に向けた活動を行っており、子育て世代に対しては「教会の隣接地域の保護者同士、子ども同士の交流を促す」という目的で、広場を主催しているそうです。イギリスではこのような広場は「トドラーズグループ」「プレイグループ」と呼ばれています。教会のほか、地域のホールにおいて保護者有志が広場を定期的に開催する場合もあります。

今回、筆者が友人親子に同行して見学したのは、英国国教会系の教会が主催する広場と保護者有志が主催する広場の2つです。重複する点が多いので、今回は教会の広場を中心に紹介します。

※今回ご紹介する広場は、一例であり、地域や主催者によって大きく異なることをあらかじめご了承ください。

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写真1:コーヒーショップの掲示板に、別の教会の広場の告知がありました。

筆者が訪れた教会の広場は、毎週月・火の10:00-11:30に行われます。この広場は、遠方から車でやってくる人も多く、開始前に整理券が配られるほどの人気!開始時刻を過ぎて到着すると、定員の70組(140人)に達していて入場できないこともしばしばとか。無事に整理券を受け取ったら、まず受付で参加費を払います。1家族2ポンド(約300円)です。日本は無料の広場が多いので、これは驚きでした。保護者主催の広場は2.5ポンド(約375円)と少し高めです。来場しているのは多くがお母さんですが、中にはお父さんの姿もありました。

広場は、教会1階にある大中小の3つのホールすべてを使って行われています。日本の子育て支援センターと比べるとかなり広い印象です。入口の中ホールは、受付やベビーカー置き場と飲み物提供スペース、小ホールは絵本や絵の具などのお絵描きスペース、一番奥にある大ホールはおもちゃがたくさん置かれたメインの遊び場になっています。

メインの遊び場は絨毯敷きでもちろん土足。ハイハイしたり、物をなめたりする0歳児の衛生面を考え、プレイマットを敷いた上に赤ちゃん用おもちゃが置かれています。遊具はままごとやコスプレ衣装などのごっこ遊びのコーナーから、ブロックやお絵描きなどの工作系、トンネルくぐりや三輪車、ボールプールや滑り台といった体を動かす遊びも用意されています。そのスペースを取り囲むように保護者用の椅子がぎっしり並べられています。

思い思いに遊んで開始から約1時間ほど経った頃、マイクでお片付けのアナウンスがあります。すると、子どもも保護者も一斉に協力して片づけます。10分後には片づけが完了し、その後、歌の時間に突入しました。広場のリーダーが前でマイクをもってアカペラで「キラキラ星」や「幸せなら手をたたこう」など日本でも馴染みのある曲を10曲ほど歌って踊って、終了しました。おもちゃの内容や会の流れは、保護者有志の広場も同じでした。

上記に加え、この教会の広場には2点特徴があります。

特徴①・宗教が違っても英語が心もとなくても、0~4歳児ファミリーならみんな大歓迎!

教会なので、他の宗教の方は参加が難しいのかと思いきや、そんなことはありません。イスラム教女性が身に着けるヒジャブ(頭髪を覆い隠すために女性が着用するスカーフのような布)をまとったお母さんが複数、来場していました。

また、親子へのサポートもしっかりしています。70組140人もの親子が集うと、初めて訪れる人、英語が心もとない人、保護者同士のコミュニケーションが心配な保護者もいるかもしれません。教会のスタッフは常にそのような親子に目を配り、さりげなくサポートしていることも人気の理由の1つとか。前述の友人は以下のように語ります。

「働いていたこともあり、実は日本では、親子向け広場にあまり行ったことがなかったのです。そのうえ、英語も心もとないので、広場に行く前はとても緊張していました。しかし、『初めて来た』と言うと教会のスタッフの方が来てくれ、遊び場や軽食、トイレの場所などを手取り足取り教えてくれたり、何か心配なことはないかと聞いてくれたりして、とても安心しました。」

一方で、保護者有志主催の広場は、このようなサポートはなく、初めて来た親子には少しハードルが高い印象を受けました。

特徴②・保護者にも紅茶とクッキーが出されて、くつろげる!

日本では通常、広場でお茶やお菓子が出されることはめったにない印象ですが、イギリスは違います。子ども用の飲み物や軽食だけでなく、保護者にコーヒーや紅茶、クッキーが提供されるのです!これは保護者有志の広場でも同じでした。それは広場が子どもの遊び場だけでなく、保護者同士の交流の場、保護者のリラックスの場という意味合いも強いのが理由だそうです。この教会には、子どもを遊ばせる間に読めるようにと10冊以上、子育て関連本や宗教の本が用意されています。本を静かに読んでいる人、ママ友だちとのおしゃべりに花を咲かせている人・・・、保護者たちは思い思いに時間を楽しんでいました。

子どもが泣いてはじめて、おもちゃの取り合いに気づく保護者も

保護者サポートや交流を大事にする広場は、ときに問題を生み出すこともあるようです。日本ではおもちゃの取り合いなど子ども同士のトラブルに対して、とても気を配っている保護者が多いと耳にします。子どもの様子に気を配り、トラブルが起きないように工夫をされている方も多いかもしれません。

しかし、この教会では、少し状況が違いました。人の多さに比べて会場が小さいからか、また、保護者同士のおしゃべりに花が咲いているからか、はたまた、多国籍なエリアで育児に対する考え方が多様だからかわかりませんが、保護者は自分の時間を楽しんでいるため、どちらかの子どもが泣き始めてやっと気づくという場合が少なくないそうです。0~4歳の幅広い年齢の子どもで混雑している広場なので、0~2歳児をもつ保護者からすると、もう少し目をかけてほしいところです。前述の友人の子どもがおもちゃの取り合いで相手の子どもに強く押されて倒れ、大泣きしたときにも相手の保護者はまったく見ていなかったとのこと。しかし、友人はそれを知らせる勇気もなく、「泣き寝入り」状態。そのたびに、友人は「心がモヤモヤする」と言います。このような現象について、イギリス人の友人は以下のように話します。

「多くのイギリス人保護者は子ども同士が仲良く遊んでいるかにとても気を配っていると思います。ただ、お母さんの中には、広場は安心・安全な場所で、自分から離れて遊んでよいと思っている人もいるかもしれません。また、ホールが混雑しているので、どうしても目が行き届かないことがあるのも事実だと思います。」

イギリスの地方都市の小さな村に住んでいる別の友人は、広場でのおもちゃの取り合いについて、また違ったエピソードを教えてくれました。友人が子どもと一緒に通っている広場では、日本のように、さりげなく間に入ってトラブルが大きくならないように気を遣う保護者が多いと言います。この背景には、コミュニティの小ささがあるかもしれません。友人は、以下のように話します。

「小さな村では広場で知り合った親子がその後、保育園や小学校まで長いつきあいになる可能性があり、トラブルを未然に防ごうという心理が働くのかもしれない。」

これは日本と似ているかもしれませんね。イギリスの子育ては地域や社会階層、多民族の居住割合などによって大きく異なり、ひとくくりにはできないようです。

ひと昔前に「公園デビュー」という言葉が話題になりました。保護者同士の人間関係の緊張を表現した言葉だと思いますが、このように感じるのは、日本だけではないようです。先日、「トドラーズグループがなぜ私たち母親を苦しめるのか (1)」と言うドキッとする見出しの新聞記事を見つけました。広場に通うことにハードルを感じるのは、日本もイギリスも変わらないことに驚きました。とはいえ、前述の友人は広場で出会ったお母さんと後日、お茶をするなど、この場所から交流が広がり、子育て世代に欠かせない場所になっているのも事実です。日本でもイギリスでも、広場では声かけサポートを通して「保護者も広場に行きたくなる」雰囲気づくりがますます重要になるかもしれませんね。

次回は、「イギリスでの中学校選び」をお届けします。お楽しみに。


<参考文献>

筆者プロフィール

橋村 美穂子(はしむら・みほこ)

大学卒業後、約15年間、(株)ベネッセコーポレーションに勤務。ベネッセ教育総合研究所で幼稚園・保育所・認定こども園の先生向け幼児教育情報誌の編集長を務め、2015(平成27)年6月退職。現在は夫、息子と3人でイギリス中西部の街バーミンガム在住。
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