TOP > 論文・レポート > 子育て応援団 > 【イギリスの子育て・教育レポート】 第19回 PTAが学校のためにお金を稼ぐ!イギリスの小学校の夏祭り

このエントリーをはてなブックマークに追加

論文・レポート

【イギリスの子育て・教育レポート】 第19回 PTAが学校のためにお金を稼ぐ!イギリスの小学校の夏祭り

橋村 美穂子

2017年8月 4日掲載

要旨:

今回は「イギリスの小学校の夏祭り」を取り上げる。7月上旬、息子の現地校で夏祭りが行われた。バーベキューなどの食べ物や、巨大トランポリンなどのアクティビティがあり、校庭は多くの親子でにぎわった。この夏祭りを取りまとめるのはPTA組織。イギリスのPTAの活動目的は、日本のものとは異なっていて、興味深い。目的の1つめは、親子向けイベントの開催を通して、授業外での学びや楽しみの提供、さらに異なる学年の児童や先生との交流の機会を提供することである。もう1つの目的は、子どもの教育に必要な活動や備品のための資金を集めることである。夏祭りはこの2つの目的を満たす、年間で最も大きなイベントである。PTAが主催する活動は、夏祭りの他にクリスマスなどの季節ごとのイベント、小さくなった制服や古本のリサイクルバザーと多岐に渡る。息子の学校のPTAのよい点としては、「協力したい人ができるときに協力する」「人手の提供以外にも、イベント参加料、チャリティー商品の購入を通して寄付するという、別の貢献方法がある」ことだと感じる。一方で、「PTA中心メンバーが数年間変わらず、風通しが悪くなっており、中心メンバーの意見だけで物事が進む」「会計処理がわかりにくく、不明瞭な点がある」という課題もあり、日本同様、PTA組織運営の難しさを感じる。

Keywords: 橋村美穂子, イギリス, 小学生, 学校, 夏祭り, イベント, PTA, チャリティー, 寄付, 予算

この連載では、小学生の息子をもつ母親による「イギリスの子育て・教育」体験レポートをご紹介します。

毎日、暑いですね。しかし、夏祭りや海水浴といった夏ならではの体験ができるのは楽しいですね。6~7月になると、イギリスの多くの学校で夏祭りが行われます。今回は、7月上旬に息子が通う小学校で行われた「夏祭り」をご紹介します。日本と同様、イギリス版PTAが主催しますが、その開催目的が日本と少し異なり、興味深いのです。

校庭がちょっとしたアミューズメントパークに変身!

日本の夏祭りや盆踊り大会は、通常、夕方から夜にかけて開催されますが、息子が通う小学校の夏祭りは、土曜の昼12時から16時半に学校の校庭で行われ、多くの親子でにぎわいました。

校庭は、息子が日本で通っていた小学校と同じくらいの広さですが、そこにいろいろな店がひしめき合っていました。イギリスのお祭りや誕生会でよく見かける、空気式の巨大トランポリン(写真1)やテニスやサッカー、ダンスといったスポーツやフェイスペイティングを楽しめるブース、ピザやインドカレー、ジャマイカ風バーベキューなどの国際色豊かな食べ物スタンドに加えて、福引やゲームなど多種多様なブースが50以上!ちょっとしたアミューズメントパークのようです。ブースが多いのは、地元のお店の協力のおかげだそうです。PTAから、地元のアイスクリーム店や学習塾、ダンス教室などに出店を依頼したのです。出店者からは出店費をもらうため、学校側に開催前にお金が入るうえに夏祭りが活気づくし、お店側としては広告にもなるから、両者にメリットがあるというわけです。ちなみに、食べ物やゲームの値段は、一般のお店で買うよりも少し安い程度で、1~5ポンド(約150~750円・※注)です。

保護者個人が出すブースももちろんあります。私は友人とともに、ゲームのブースを出店しました。その名も「Chopsticks Challenge!」(写真2)。箸を使って、お菓子をつかみ、お皿に入れるゲームです。箸を使い慣れない人でもつかみやすいマシュマロやブドウ、上級者用には粒状のチョコレートなどいろいろなお菓子を用意しました。箸の握り方を最初に伝えたところ、初心者でも上手につかめていて驚きました。

近くにある別の小学校の夏祭りにも出かけたのですが、PTAによるジュースやバーガー店、巨大トランポリンのみで地元のお店の出店はなく、活気がありませんでした。息子の学校の夏祭りやPTA活動は盛んなほうなのかもしれません。

report_09_265_01.jpg
写真1 空気式巨大トランポリンである「バウンシーキャッスル」。

report_09_265_02.jpg
写真2 「Chopsticks Challenge!」のゲームの様子。40人以上の子どもや大人が楽しんでくれました。

PTAの活動目的は「子どもの学びと楽しみ」「資金を集める」こと!

この夏祭りを取りまとめているのは、学校のPTA組織です。イギリスでもPTA(Parent-Teacher Association)という呼び方が一般的なようですが、息子の学校はPPTAという独自の名称を使用しています。最初のPは児童(Pupil)を指しており、「保護者と先生の組織」でなく、「子ども・保護者・先生の組織」であると、その名称で方針を示しているのは好感がもてます。

PTAの活動目的とは、そもそも何でしょうか?日本のPTAの活動目的は、共通の定義はないようですが、概ね「子どもの健全な育成と幸福を目指して、会員である保護者と教師がお互いに学習し合い、その学習に基づいた活動を一緒に進める」ことにあるようです (1)。しかし、息子の学校のPPTAの活動目的は、日本のPTAと少し違って具体的なものが2つあります。目的の1つめは、親子向けイベントの開催を通して、授業外での学びや楽しみの提供、さらに異なる学年の児童や先生との交流の機会を提供することです。これは日本のPTA活動の目的と近いかもしれません。もう1つの目的は、学校の予算ではまかなえないが、子どもたちの教育に必要な活動や備品のための資金を集めることなのです。資金を集めるためのPTAなんて日本では考えられないですが、イギリスでは「PTAが学校の資金を集める」のは一般的なことのようです (2)

PPTA活動は、夏祭りのほか、ディスコパーティーやクリスマスなど季節ごとのイベントから、小さくなった制服や古本のリサイクルバザー、子ども全員の似顔絵が入った年度ごとの記念タオルの作成・販売など、多岐に渡っています。これまでPPTAで集めたお金は、低学年用の校庭の遊具や椅子などの購入費用に充てたとのこと。また、有名な作家の講演会の謝礼に充てたこともあったそうです。

このように多くの資金を集めるイベントを誰が仕切っているのか気になりますよね。PPTAは、いつでも誰でも参加できるという原則のもと、できる人ができる範囲で行うスタンスであり、息子の学校では日本のような委員制を取っていません。現在は主に4人のイギリス人のお母さんが中心となってPPTAをまとめています。では、他の保護者はどのように参加しているのでしょうか。基本的には、保護者はイベント開催にあたって人手が足りない場合の手伝いや、外部団体への募金活動のための手作りケーキ提供という形で手伝うことが一般的です。例えば、PPTAが「チャリティー活動をするので、〇日にケーキを作ってきてください」とメールで呼びかけると、その日の朝には手作りケーキを持参する保護者の姿を多く見かけます(写真3)。イギリスは自宅でケーキを焼く文化が浸透していて、得意なことや好きなことで貢献しているのです。また、ケーキを焼かなくても、それを購入すること、つまりお金を寄付することでPPTA活動に参加している人も多数います。

report_09_265_03.jpg
写真3 PPTA主催のチャリティーイベントでケーキを販売する様子。
手作りである必要はなく、お店で買ったものを持ってきてもいいのです。

お金を集めるPTAがあっても厳しい イギリスの学校のお財布事情

今年の夏祭りでは約3800ポンド(約55万円・※注)を集めたPPTA。さぞ、学校も潤っているだろうと思いきや、実はPPTAからのお金があってもなお、学校の財政事情は厳しいようです。政府は学校関連予算を2015年から28億ポンド(約4100億円)削減していますが、さらに政府が学校関連予算を2017年~2022年の間に89億ポンド(約1兆3000億円)削減すると発表されました。これを学校単位で考えると、息子の学校では2021年までに学校の全体予算として総額21.5万ポンド(約3100万円)もカットされる可能性があるとのこと。一人あたりの子どもにして約536ポンド(約7.8万円)、先生の数は6人減らされる計算になります。アシスタントティーチャー15人を含めて先生は34人いるので、2割弱の先生を雇えなくなるのです。この状況を踏まえて、現在、学校では「学校基金」という制度を検討中です。週に1~2ポンド(約150~300円)の寄付を各家庭から任意で募る方向で進んでいます。

PTAは、日本でもイギリスでも運営が難しいのに変わりはない!

イギリスのPTA活動は、子どもの学びや楽しみの提供、保護者や子ども、先生との交流という社会的な意味合いとともに、「子どもの教育をよりよくするための資金を集める」という明確な目的がある点はよいと感じます。また、手作りケーキの提供など「できる人ができる範囲でやる」といった「ゆるい参加の仕方」が許されている点や、人手の提供の代わりに、ケーキやバザーなどでの品物の購入がPTAへの金銭面での貢献になっていることもよいと感じました。

一方で、夏祭りの出店を通して、息子の学校のPPTAにはいろいろな課題があることもわかりました。PPTA活動の中心メンバーは数年間、4人のイギリス人保護者に固定されており、いわゆる「風通しが悪い」状態になっています。「いつでも、誰でも参加できる」と表明していながら、実際は中心メンバーの意見だけで物事がどんどん進むといった弊害もあるようです。PTAメンバーの成り手が少ないのは日本と同じで、大変な役割をボランティアで担ってもらっているのはありがたいことなのですが、メンバーが固定されているデメリットが出てきているようです。これについては学校側も問題視しており、より多くの保護者にPPTAに参加してもらうように促し始めています。強制参加のような日本のPTAの課題も大きいですが、自由参加のイギリスのPTAもまた、問題を抱えています。

また、肝心のお金の会計は、会計報告の詳細が発表されるわけではないので、他の保護者には非常にわかりにくい点も課題です。今年の夏祭りは昨年よりもブースも多く、来場者も多いように見受けられたのに、昨年の3分の1の売り上げしかなかったのは、おかしいのではないか?と、夏祭りの運営や会計方法のずさんさを指摘する保護者もいます。

イギリスはチャリティー文化が根付いていること、また学校予算の考え方が両国間で違うため、日本でイギリスのようなPTA活動のやり方を取り入れるのは少々難しいでしょう。しかし、「得意なことで協力する」「人手の提供以外の参加・貢献方法がある」という点は、日本のPTAの未来を考えるうえで参考になる視点なのかもしれません。

次回は「イギリスの夏休みとサマーコース」をお届けします。お楽しみに。


※注:1ポンド=146円で計算。


<参考文献>

筆者プロフィール

橋村 美穂子(はしむら・みほこ)

大学卒業後、約15年間、(株)ベネッセコーポレーションに勤務。ベネッセ教育総合研究所で幼稚園・保育所・認定こども園の先生向け幼児教育情報誌の編集長を務め、2015(平成27)年6月退職。現在は夫、息子と3人でイギリス中西部の街バーミンガム在住。
このエントリーをはてなブックマークに追加
サイトマップはこちら
サイトの全体像が分かります。

Twitter  Facebook

CRNアジア子ども学交流プログラム

名誉所長ブログ

論文・レポートカテゴリ

イベント

ご意見・ご質問

メルマガ登録

世界の幼児教育レポート

CRN刊行物