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論文・レポート

【ドイツの子育て・教育事情~ベルリンの場合】 第26回 ドイツの食事情

シュリットディトリッヒ 桃子

2017年6月30日掲載

要旨:

ドイツでは伝統的な肉料理に加え、ジャンクフードなどの流行に伴い、国民の肥満率が上昇、欧州きっての肥満大国となってしまった。この憂うべき状況を改善するために、ドイツ政府は、全ての国民が健康的な食生活を送ることができるよう、啓もう活動を行っていくこととなり、息子が通う小学校でも、食育プロジェクトが行われることとなった。

Keywords:
ドイツ、ベルリン、小学校、肥満、ドイツ政府、食育プロジェクト、シュリットディトリッヒ桃子
ドイツにおける食生活

皆さんはドイツと言えばどんな食べ物を思い浮かべますか?ソーセージとジャガイモ?多くの方がお察しかと思いますが、所謂「ドイツ料理」はお肉がメインです。レストランやスーパーは勿論、デパートの精肉売場では、まるで博物館のように多種多様な肉製品が陳列されています。

それ以外の食材に関してはどうでしょうか。何かと便利な現代社会においては、寒冷地の当地でも、スーパーに行けば、スペインやイタリア産のトマトが一年中売っています。しかし、元々当地では、育つ野菜の種類が限られていることから、伝統的に食卓に上がる野菜は根菜類が多く、種類も限られているようです。また、ベルリンでは地理的にお魚があまり獲れないので、魚は川魚とバルト海産のものが数種類、店頭に並んでいるだけ。四方を海に囲まれた島国日本と比べると、格段に種類も少なく、高価なことが多いです。

また、外食となると、多国籍都市ベルリンでは、欧州各国料理はもとより、ベトナムや中華などのアジア系、中東およびアフリカ料理のレストランは、数多くあります。

では、中食文化に関してはどうかというと、デパートに行けば様々なチーズやソーセージ、またオリーブなどの前菜を目にしますが、高価であることが多く、日本のスーパーやデパ地下のような感覚で、バラエティに富んだお惣菜を気軽に入手することはできません(少なくとも我が家の経済事情では...)。筆者の自宅近くにトルコ系ファストフードのドネルケバブ店があるので、夕食を作る時間がない場合など、時々利用しますが、他にこれといった選択肢はありません。そして、そのバリエーションも日本のそれに比べるとずっと少ない気がします。外食、中食のいずれにしても、当地では一般的に節約志向が高いため、コストの問題などから日本ほど利用しない傾向があり、自ずと自宅で食事をとることが多くなります。

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ピタパンの中に野菜と肉をはさんだドネルケバブ

例えば、伝統的な食事としては、朝はパンとハム・チーズ・卵(これらは一つだけの時もあるし、全部食べる時もあります)とコーヒー、昼は一日のうちで一番豪華な「温かい食事」を頂き、夜は「冷たい食事」といって、簡素にパンとハム・チーズ(朝ごはんと同じかそれより簡素)だけですますようになっているようです。日本育ちの私は、夜はご飯とみそ汁と温かいおかずが食べたいので、我が家では晩御飯に「温かい食事」を作っていますが、「冷たい食事」は共働き家庭が多い当地では都合が良く、浸透しているようです。

では、ハレの日の食事はどうでしょうか?例えば、誕生日パーティなどで食事がふるまわれる時は、肉が入った大きな鍋がどーんとテーブルの中心部に置かれ、その横に茹でたジャガイモ、インゲン豆、そしてザワークラウト(キャベツの漬けもの)が入ったボウルが鎮座して、各自好きなものを好きな分だけ取り分ける、という状況が多いです。(あくまでも典型的な旧東ドイツの家庭の話ですが...)

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ベルリンの伝統的な豚肉料理アイスバインとザワークラウト

さらに、渡独して驚いたのが、ドイツ人の食に対する考えの違いです。私の夫や彼の家族、友人たちは圧倒的に「質より量」派のようで、味や栄養バランス、見かけの細部までこだわることはあまりなく、「とにかく何でもおなかがふくれるものを食べて、満腹感が得られればよい」というスタンスです。(ですから、私のずぼら料理に文句が出ることは少なく、助かっていますが!)

このような状況を考慮してか、日本の外務省のホームページにも「ドイツ料理は,高カロリー,高タンパク,高脂質,高コレステロール,高塩分なので,食べ過ぎには十分注意し,生活習慣病を予防する意味に於いても,バランスの良い食事を心掛けて下さい。」と明記されています *1

子どもたちの食生活:5人に1人が肥満

では、子どもたちはどのようなものを普段食べているのでしょうか?子どもたちは毎日、9時に食べるお弁当(二回目の朝食、第3回参照)を持参します。担任の先生に伺ったところ、その中身は様々だそう。パンやチーズをはさんだライ麦/全粒粉サンドイッチと野菜スティック/果物、飲み物は水かお茶、といった「健康的な朝ごはん」を持参する子どもがいる一方で、毎日ポテトチップスやグミベアなどを一袋丸ごと抱え、ペットボトルに入った炭酸飲料を飲んでいる児童も少なくない、とのこと。この点に関しては担任の教師も危惧しているようでしたが、ドイツでは子どもの5人に1人が肥満(BMI25以上)、中には5歳で肥満が原因で糖尿病になってしまう子どももいるというショッキングなデータも出ています *2

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レストランでの典型的な子どもメニュー:シュニッツェル(豚肉カツレツ)とフライドポテト
(日本の大人一人前の量があります)

給食に関しては、4時間目が終わると、児童は各自カフェテリアに移動し、好きなものをカウンターで注文するシステムになっています。一応、メインメニューは毎日二つ用意されており、子どもたちはその中から一つを選択するようになっています。1週間のメニューの内容は、肉(ソーセージかカツレツかハンバーグ)、魚(白身魚のフライが多い)、ベジタリアン用献立(野菜カツレツなど)、パスタ、卵料理が日替わりで出てくるそうです。飲み物はお水かお茶が用意されています。

ただ、中には口に合わないものもあるようで、息子は「今日のメニューはあんまり美味しくないって知っていたから、ソースをかけないで、ただパスタだけをそのまま食べた」など言うこともあります。また、お皿によそわれたものを完食できず、バケツに捨てている子どもたちも時折見かけました。

余談ですが、筆者が子どもの頃に経験した日本の小学校の給食では「全部食べ終わらないと昼休みに外遊びにいかせてもらえない」など躾面も厳しかった記憶があります。しかし、息子の通う小学校では、全員が給食を申し込んでいるわけではありませんし、休み時間になると、各々の児童がバラバラと自分でカフェテリアに行って食事をとり、先生は同行しないので、給食を通した教育というものは行っていないようです。

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ドイツの国民食?!:ソーセージとポテトサラダ

欧州一の肥満国

このような背景の元、ドイツ国民の肥満率は年々上昇、2014年の時点で700万人、割合にしてドイツ男性の62%、女性の43%が肥満となっているとのこと *3。この肥満の割合は年々増加傾向にあり、さらに、運動などで生活を改善するよりも、胃を小さくする手術などで人工的に痩せようとするケースも増えている模様 *4。実に欧州一の肥満率に頭を抱えることとなってしまったドイツ政府は、この状況を憂い、食育にも力を入れることとなりました。

ドイツ政府が推進する食育プロジェクト

ドイツ連邦食糧・農業省により、2017年2月に「連邦中央栄養庁」が設立され、全ての国民が健康的な食生活を送ることができるよう、啓もう活動を行っていくこととなりました *5

「連邦中央栄養庁」の活動の中には、保育園や学校での食育授業を展開することが含まれており、この度、息子が通う小学校でも、食育プロジェクトが行われることになりました。プロジェクトで使用された教材などは、全て「連邦中央栄養庁」の監修により作成されたものだそうです。

小学校での食育の時間は、今年3月から5月の2か月に渡り、外部から栄養士を迎えて、週1回2時間連続のプロジェクトの時間に行われました。授業は週ごとに講義と調理実習で構成されており、プロジェクト期間後半にはまとめのテストも実施されたようです。筆者は2回ほど食育の授業に参加してきましたので、次回はその様子をお伝えしたいと思います。


筆者プロフィール

シュリットディトリッヒ 桃子

カリフォルニア大学デービス校大学院修了(言語学修士)。慶應義塾大学総合政策学部卒業。英語教師、通訳・翻訳家、大学講師を経て、㈱ベネッセコーポレーション入社。2011年8月退社、以来ドイツ・ベルリン在住。
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