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【イギリスの子育て・教育レポート】 第12回 イギリスで小3男子はどのように英語を覚えていったか ~1年間の記録より~

橋村 美穂子

2017年2月10日掲載

要旨:

今回は、イギリスにおける子どもの英語習得のステップと親のサポートについて、我が家の1年間の記録をもとに紹介する。小3の秋にイギリスに引っ越してきた息子は、日本では夏休みにも行きたいと言うほど学校が大好きだったが、イギリスの現地校へは毎日「行きたくない」と訴えていた。お腹や足の痛み、チック、寝る前に「明日行きたくない」と暴れるなどの精神的なものからきたと思われるさまざまな不調が見られた。精神的につらい中でも学校に毎日通い、英語を使って勉強しなくてはならないため、息子が英語の学習に前向きに取り組めるようなサポートを心がけ、英語への接触量を増やした。その結果、身の回りの単語を覚えることから始まり、学校でよく使う文章の発話、単語レベルの自発的な発話、自作した文章の発話や英作文にステップアップしていった。

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この連載では、小学生の息子をもつ母親による「イギリスの子育て・教育」体験レポートをご紹介します。

「子どもは習得が速いからすぐしゃべれるようになる」――外国語の習得について一般的に言われていることですね。確かに、子どもは大人に比べ記憶力も柔軟性もあるので、外国語の習得が速いかもしれません。しかし、文化も生活スタイルも違い、友だちも親類も近くにいない環境で暮らしながら、現地の言葉を習得することになります。その大変さは子どもも大人も変わらないはずです。渡英前、「子どもが海外で外国語をどう学んでいくのか」を知りたかったのですが、当時は自分に合う情報を見つけることができませんでした。そこで今回は、我が家の渡英後1年間の記録をもとに、子どもの英語習得のステップや親のサポートを紹介します。国や言語、渡航時の子どもの年齢や性別による違いはあるかもしれませんが、海外駐在予定のご家庭の参考になればうれしいです。

なお、ご存じのように、言葉の習得は個人差が非常に大きいため、ここでご紹介する内容は一例であることをあらかじめご了承ください。

英語はほぼゼロからのスタート!

イギリスでの英語習得のステップを紹介する前に、まず渡英前の状況を簡単に説明します。息子は小学3年生の秋にイギリスに引っ越すまで、日本で育ちました。英語教室に定期的に通ったことはありません。唯一、準備として行ったのは、渡英直前に英語で行う学童保育に1週間、半日ずつ通っただけです。

このように、英語はほぼゼロからのスタートだった息子はどのようなステップを経て英語を覚えていったのでしょうか?この1年間の様子をまとめた表1をご覧ください。

表1 息子の英語習得の状況とメンタル面に関する1年間の記録
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写真1 現地校の編入前(渡英1か月後の11月)に練習したアルファベット
何度かアルファベットを練習したあとにテストしたもの。右側に書いてあるのが間違ったアルファベット。



●息子のメンタル面

海外で現地の言葉を学ぶときに大きな影響を及ぼすのが精神面。人間は精神的に安定しているほうがよく学ぶ、と言われています。

イギリスに来てから最も変化したのは、学校に対する気持ちでした。日本では夏休みも行きたいというほど学校が大好きだった息子が、イギリスでは毎日「現地校には行きたくない」と訴え、1年以上経った今もまだ継続しています。英語がわからないのに、平日は毎日6時間半(9:00~15:30)学校にいて、英語のリーディング(読解)やライティング(英作文)、また、英語を通して算数や科学などの教科を学ばなければいけないことを考えると当然なのかもしれません。精神的なつらさからか、お腹が痛い、足首が痛い(ストレスがたまるとなぜか足首に痛みが出る)、チック、泣いて暴れるなどの症状がこの1年、代わる代わる見られていました。


●我が家で行ったサポートの中で息子に効果的だったもの

前述のように、つらい気持ちで過ごすことが多いため、家では日本のテレビや動画でリラックスしたい、英文の音読や辞書を引いて勉強するなんてイヤだと息子は話していました。しかし、英語に少しずつでもいいから触れないと、いつまでもそのつらさは軽減しません。そこで、息子が英語の学習に対して前向きな気持ちで取り組めるようにサポートして、英語との接触量を増やしていきました。いろいろな試行錯誤の結果、息子に特に効果的だったのは以下の2つです。

まず、最初に行ったのは「英語×好きなこと」。つまり、好きなことを通して英語を学ぶという定番の方法です。ゲームやマンガが大好きな息子。テレビアニメを英語で見るのはもちろんのこと、ゲーム感覚で英単語を覚える無料アプリを探して勧めたり、日本のマンガの英語版を購入したりしました。さらにクリスマスプレゼントには英語版のゲーム機やサッカーのゲームソフトも買いました。この方法により、自然に英語に触れる時間が増え、単語力やリスニング力が向上したようです。また、好きなことには自分から取り組むので、親としてもガミガミ言う必要がなく、お互いハッピーに過ごせるという効果もありました

次にやってよかったと思うのは、親自身の英語の失敗談を話すことです。私がつたない英語でやりとりしていても、息子から見ると「英語をちゃんと話せる」と思っていたようです。だからこそ、親の失敗したエピソードを話すことが必要だと思いました。例えば、私はお店でカフェラテを注文するとき、Lの発音が悪いために必ず聞き返され、毎回悔しい思いをしていました。そこで「ママ、今日もまたカフェラテを注文するときに聞き返されちゃったよ!あーあ・・・」と悔しそうに話すと、息子は安心したようにゲラゲラ笑っていました。その後、発音には比較的自信のある息子に発音をたびたび直され、正直イラっとしたのですが、息子の自信の回復には必要なやりとりだったのかもしれません。

このほか、渡英してしばらく経ってから、日本人の先生による英語の個人レッスンを始めました。また、渡英後半年以降には英語で話す自信をつけるために、イギリス人の先生による個人レッスンも開始しました。特にイギリス人の先生とは「英語で遊ぶ」だけのレッスンで、勉強っぽくなかったことが本人にとってはよかったようです。


●息子の英語習得のステップ

このような試行錯誤を経ながら、1年間過ごしてきました。この間の英語習得のステップをまとめると、

身の回りの単語の暗記→学校でよく使う文章の発話→自発的な単語の発話→自発的な文章の発話や英作文

という流れをたどりました。この英語習得のステップには、年齢、性別、性格、事前の英語の知識に加え、個人差がかなり大きいので、一人ひとりそのステップは違います。同じ頃に引っ越してきた同学年のアジア出身の女の子が二人いたのですが、韓国人の子は渡英後半年過ぎたころから文章でペラペラ話し、中国人の子は毎日英語で神様に宛てた手紙を書いていました。その子の手紙は、飢えや貧困に苦しむ人を救ってほしいなど、内容も使う英単語もとても高度でした。そのため、一時期、その子たちと息子の英語のレベルを比べて、焦っていました。しかし、その子たちのように英語を勉強させようとしても逆効果でした。ますますやる気がなくなり、息子のストレスがかえって大きくなってしまい、反省しました。

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写真2 渡英後2か月頃、サンタさんに宛てて書いた手紙の下書き
夫が作った英文を聞いて想像して書いたものです。上に息子の字、下は夫の字です。
フォニックスでアルファベットの読み方を学んでいたので、「please」を「PLIS」と想像して書いています。


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写真3 最近(渡英後1年2か月)書いたサンタさんへの手紙
文章はすべて自分で考えて書きました。

「子どもは速い」けれど・・・

1年間を振り返って思うのは、「子どもは英語の習得が速い」というのは確かにそうだということです。文法を知らなかったのに、1年で自分の言いたいことを少しですが話せるようになったのです。しかし、それは子どもがもともともっている記憶力や柔軟性によって成し遂げただけでなく、英語がわからないのに、毎日学校に通って1日6時間半過ごしてきた努力の結果だと感じます。新しい環境や友だちになじむ努力、さまざまな葛藤を乗り越えてきて今があります。だからこそ、特に最初の1年は子どもの様子を注視しながら、その子に合ったサポートをすることが重要だと痛感しています。大変な環境の中で、子どもがなるべくハッピーな気持ちでいられるようにサポートすることで、海外生活はさらにかけがえのない経験になると思います。

次回は「イギリスの小学校の学年末の行事」をご紹介します。お楽しみに。


<参考文献>
  • 表1中の注1:海外子女教育振興財団『サバイバル イングリッシュ』

筆者プロフィール

Mihoko_Hashimura.jpg橋村 美穂子(はしむら・みほこ)

大学卒業後、約15年間、(株)ベネッセコーポレーションに勤務。ベネッセ教育総合研究所で幼稚園・保育所・認定こども園の先生向け幼児教育情報誌の編集長を務め、2015(平成27)年6月退職。現在は夫、息子と3人でイギリス中西部の街バーミンガム在住。


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