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【ドイツの子育て・教育事情~ベルリンの場合】 第21回 母子二人夏休み里帰り旅

要旨:

ドイツでは州ごとに学校の長期休暇時期が異なる。6週間の夏季休暇も、毎年その時期が固定されているわけではなく、数年毎にシフトする。そんな夏休みを利用して、今夏も息子と二人で日本に里帰りした。日本滞在中、息子は夏季水泳教室やサッカー教室に参加したが、日独で異なる指導方法が垣間見えた。ベルリンから日本へは直行便がないので、乗り継ぎを含んだ丸一日の超長旅となるため、親子ともども負担が大きいが、準備をある程度して、周囲のサポートを積極的に利用する、という少しリラックスした姿勢で臨めば、思い出に残る楽しい旅にもなると思う。

キーワード:
ドイツ、ベルリン、ミュンヘン、ヘルシンキ、夏季水泳教室、サッカー教室、夏休み、子連れ長旅、国際線、航空会社、シュリットディトリッヒ桃子
ドイツの夏休み期間

ドイツでは休暇中の渋滞を防ぐために、州ごとに学校の長期休暇時期が異なります。夏休みも例外ではなく、日本のお盆のように多くの人が休みになり、休暇に向かう人たちで、高速道路で大渋滞が引き起こされる、という事態はとりあえず避けることができるようです。(といっても、やはりある程度の渋滞は避けられないようですが・・・)

また、学校の夏季休暇は大体6月から9月初めの間の6週間に設定されていますが、毎年その時期が同じというわけではなく、数年毎に変更になることが多いようです。例えば、ブレーメン州では昨年の夏休みは7月23日から9月2日でしたが、今年は6月23日から8月3日と1カ月早まっています。ちなみにベルリンでは昨年の夏休みは7月16日~8月28日まで、今年は7月21日~9月2日、さらに来年は7月20日~9月1日とこの3年で時期に変化はあまりないようですが、再来年2018年の夏休みは7月5日~8月17日と少し早まりそうです。

さらに、日本では夏休みの宿題として、漢字、計算ドリルや自由研究などの宿題が出されていると思いますが、ドイツでは夏休みを含む長期休暇中の宿題は一切出ません。(日本語補習校の宿題は出されていますが・・・)当地での休暇は学校や仕事から完全に解放された時間を意味するようです。

今年の夏休み

このような解放感たっぷりの夏休みのおかげで、息子は小学校に入学してからも毎年5週間というまとまった期間、日本に滞在することができています。これまではベルリンの夏休みと日本の学校の夏休みの時期が重なっていたので、日本の小学校へ一時通学することはできていませんが、夏季短期水泳教室とサッカー教室には毎年参加しています。特に大好きなサッカーに関しては、今年は3つの異なるクラブの練習に計10日間ほど参加してきましたが、いずれもベルリンでの練習方式とは異なるようで興味深かったです。というのも、当地での練習では「習うより慣れろ」方式で、フォーメーションを組んだパスやシュート練習はあるものの、基本的にはチーム内での試合を多く行うことによって、個人のスキル向上およびチーム力の強化を図っています。

一方、日本での練習ではどのクラブでも「テクニック重視」のようで、相手へのフェイントのかけ方やドリブル練習などに多くの時間が割かれていました(あくまでも、息子が参加したコースの印象ですが)。教え方も非常に丁寧で、まずコーチが手本を示した後、子どもたちに練習の時間が与えられ、最後に皆の前で披露し、それに対しコーチがアドバイスしていく、といった流れが中心でした。それぞれの子どもたちに目を向けて下さるのは素晴らしいことだと思いましたが、結果、一人一人にかける時間が大きくなってしまい、日によっては60分の練習中、試合を行うのは最後の5分だけ、という時もありました。試合大好きな息子はこの時は少し不満そうでしたが、それでも日独両国で異なるトレーニング方法を毎年体験するのは楽しいようで、ドイツに戻ってきてからのトレーニングでも、日本で習ったテクニックを早速試しています。

日本へは丸一日がかりの子連れ長旅!

さて、そんな日本での楽しい夏休みですが、通常、我が家では、息子と私が先に日本に帰国し日本語オンリーの環境を楽しみます。その数週間後に夫が来日、合流。2週間ほど夫の休暇として家族揃って日本で過ごしています。

そこでまず、息子と二人だけの超長旅となりますが、これが一時帰国パラダイスへの文字通り「第一関門」となります。というのも、ベルリンから日本へは直行便がないので、ドイツ国内であれば、フランクフルト、ミュンヘン、デュッセルドルフのいずれか、欧州全域に範囲を広げると、フィンランドのヘルシンキ、フランスのパリ、イギリスのロンドンなどでの乗り継ぎとなり、ベルリンの自宅から横浜の実家までは、ほぼ丸一日の旅になります。

例えば、成田-ミュンヘン間は11時間30分、ミュンヘン-ベルリン間は1時間の飛行時間となっていますが、これに乗り換えの待ち時間、自宅から空港までの時間を加えると、やはり20時間は超えてしまいます。

日本と欧州を最短で結ぶヘルシンキ便でも、成田からは9時間超、ヘルシンキ-ベルリン間は2時間かかります。いずれにせよ、お昼ごろベルリンを発ち、夕方から夜にかけて欧州から日本へ出発、日本には翌日の朝到着というパターンが多いです。

このような長旅は、大人にとっても負担が大きいと思いますが、小さな子どもにとっては精神的にも肉体的にもさらにストレスフルなものになります。2歳の頃から毎年日独を行き来している息子ですが、小さな頃は狭い機内で愚図ってしまったり、年齢が上がってくると、気流の変化で気分が悪くなってしまったり、長い道中なかなかスムーズにはいかないことが多いのが現状です。また夏休み時期ですと、機内も満席の場合が多く、周辺の方々に迷惑がかからないように気を使いながらの旅は、保護者の私にとってもなかなかシンドイものでもあります。

ですから、日本の実家に到着した当日は二人とも泥のように眠ってしまいます(その後は時差ボケに1週間ほど悩まされてしまいますが!)。渡独して早5年がたち、今夏は6回目の里帰りとなり、子連れ長旅にも大分慣れてきましたが、毎年、日本に帰ることができる嬉しさと、子連れ長旅への不安に挟まれながら、帰国準備をしています。

搭乗への準備

息子が2歳の頃から二人で長距離路線を乗り継いで日独を往復してきましたが、年齢が上がるにしたがって持ち物が変わってきました。彼が保育園に通っていた頃の「四種の神器」は「未読の絵本、初めてのおもちゃ、新しいシールとシールを貼るノート、パンなどの軽食」でした。いずれにしても「初めての」というのがポイントで、興味を惹きつけることができますし、しばらく時間をつぶすことができます。我が家の場合は、しまじろう教材が届いても自宅で封を開けずに、機内まで持ち込み、機中で大袈裟に「今月のしまちゃんだよー!」というように盛り上げながら、活用していました。

軽食は空港内での待ち時間は勿論、機内食が子どもの口に合わなかった場合、おなかを満たすことができます。ちなみに、機内食の子ども向けメニューは事前予約をしておけば、ほとんどの航空会社で用意してくれます。息子は保育園生の頃は、お菓子やデザートが沢山で、視覚的にも魅力的なキッズメニューを好んで頼んでいましたが、ある日のフライトで、フライドポテトやフライドチキンなど揚げ物がほとんどを占めていた食事が出されてからは、揚げ物が苦手な息子はキッズメニューを頼まなくなってしまい、機内食はほとんど食べなくなってしまいました。さらに、ここ数年は、特に外資系航空会社はコスト削減で、機内で提供される軽食やおやつの種類や量が以前より減ってきた感があるので、子どもの好きな軽食を持参するのはおススメです。

小学校に入学すると上記の必需品も変化してきます。息子の場合はなんといってもお気に入りの「トム&ジェリー」のDVDでした。昨年はこれを7回(210分)もリピート観賞しくれて、こちらは大変助かりました。最近の長距離線の飛行機には、各シートに電源プラグがついているので、コンピューターの電源を気にすることもなく、DVD観賞が楽しめます。

年齢が上がるにつれ、機内での振る舞いも落ち着いてきたかと思いきや、今度は気流などの変化に敏感になってしまったのか、着陸時などに気分が悪くなってしまうことが。その予防のため、酔い止め薬を持参するようになりましたが、果物味のキャンディーのような酔い止め薬はお菓子感覚で服用でき、ほとんど道中眠っていてくれるので、こちらも必需品の仲間入りをしました。

さらに、着替え一式は今でも必須アイテムです。空港内や機内での食事中は勿論、機中で気分が悪くなってしまった場合など、着替えを持ってきてよかった!と思ったことは数知れず!

また、機内に備えてあるエチケット袋では、子どもの気分が悪くなって粗相をしてしまった場合、小さすぎることが多いので、搭乗時に大き目のビニール袋をすぐ出せるところに準備しておくのが良いですね。

困った時は周囲の助けを借りて

食事が終わると、機内が暗くなり、就寝される方が多くなるようですが、息子も寝てくれることが多く助かりました。ただ、私のひざの上に頭を置き2席に横になって寝ている時、私の足がしびれてしまったり、化粧室に行きたくなってしまったことが何度かありました。

せっかく寝ている息子を起こすのも気が引け(その後の寝かしつけが大変なのは目に見えていたので!)しばらく心の中で葛藤していましたが、思い切ってフライトアテンダントさんに息子をそのまま2席に寝かせたまま、床に落ちないよう押さえて頂くようお願いしてみました。すると快く受け入れて下さり、その後の便でも何度か同じお願いをしています。「子ども連れで困った時は、お伝え下さいね」という姿勢は、どこの航空会社でも同じようですから、機内で困った時には、気軽にフライトアテンダントさんに相談してみるといいと思います。

空港での子ども向け施設

上述のように、ベルリン―日本間の直行便はないので、必ずどこかの空港で乗り継ぎをしなければなりません。時に待ち時間が3時間を超えることもありますが、そんな時に時間がつぶせるような子ども向け施設を備えている空港もあります。

例えば、ドイツ・ミュンヘン国際空港には、ルフトハンザの飛行機模型があり、子どもたちの格好の遊び場となっています。息子も興味津々で、この空港を利用する度にパイロット気分で遊んでいます。

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早速乗り込んで、操縦開始!


また、フィンランドのヘルシンキ空港には、遊具が置かれてちょっとした遊び場があったり、ちょっとしたゲームセンターのような一角もあり、子どもも飽きずに時間をつぶすことができます。

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ヘルシンキ空港のレースゲーム(ハンドルを握りしめ、レーサー気分の息子)


子連れでの日独間移動は大変ではありますが、久しぶりに日本に帰国し、美味しいご飯を頂き、お風呂に癒されると、疲れもふっとんでしまいます。事前準備として、できるだけのことをし、周囲のサポートを利用すれば、保護者と子どもの物理的・心理的負担を軽くすることもできます。日本からも子連れで気軽にドイツにいらしていただければと思います。

筆者プロフィール
シュリットディトリッヒ 桃子

カリフォルニア大学デービス校大学院修了(言語学修士)。慶應義塾大学総合政策学部卒業。英語教師、通訳・翻訳家、大学講師を経て、㈱ベネッセコーポレーション入社。2011年8月退社、以来ドイツ・ベルリン在住。
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