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【スウェーデン子育て記】 第5回 子どもたちのお財布事情

2か月間の楽しかった夏休みを終えて、スウェーデンの学校の秋学期(8月中旬から12月)が始まりました。我が家の長女はいよいよ小学3年生に進級です。じつは今年の夏休みの間ずっと、ことあるごとに彼女がお願いしてくることがひとつありました。学校のお友達のほとんどが、毎週のお小遣いをもらっているので、自分も欲しいと訴えているのです。今まで我が家では、お菓子や洋服など買いたいものがあるときには、娘と話をしてから買うことにしていました。定期的に決まった金額のお小遣いはあげたことがありません。これといった理由があったわけではありませんが、2年生だからまだこれでいいか、と思っていたのです。

しかしこれをきっかけに、近所のお友達のご両親に話を聞いてみると、確かにまわりのお友達はみんなお小遣いをもらっているようです。子ども同士のつきあいもあるだろうし、お金の管理はきちんとするという約束で、我が家でもついにお小遣い制を導入することになりました!

とはいえ、いつから始めようか、いくら位が適当なのか、と未だ検討しているところ。今回はスウェーデンの子どものお小遣いについて、私なりに調べて分かったことをご報告します。

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お小遣いの管理はしっかりと!

お小遣いはいくらが適当?

スウェーデンでは一般的に、7歳から10歳ころまでにお小遣いをもらい始めるのが普通のようです。スウェーデンの大手銀行のひとつであるノルデア銀行の2014年調査によると、小学生から17歳までの子どもの約60パーセントがお小遣いをもらっているとのこと(資料1)。毎週、もしくは毎月のお小遣いをあげることで、子どもたちの経済観念が育つのでお小遣い制は良いという考えが一般的にあるようです。お小遣いの代わりに、食器洗い・お買い物などのお手伝いをすることでお金をあげることは、あまり良いアイデアではないという専門家もいます。お手伝いなどで得たお金は、臨時収入ということでお小遣いとは別にした方がよい、というのがこの方の考えのようです。

もらっているお小遣いが足りなくなったと子どもが言った場合は、どういった理由で足りないのかを説明させることができ、「計画的にお小遣いを使う」ということを教えることができるのがお小遣い制の利点だそうです。以下の表は、2014年にノルデア銀行が調査したもの。毎週、または毎月のお小遣いの平均額をあらわしたものです。

6歳15クローナ /週180円
7歳20クローナ /週240円
8歳22クローナ /週264円
9歳40クローナ /週480円
10歳163クローナ /月1,956円
11歳169クローナ /月2,028円
12歳226クローナ /月2,712円
13歳283クローナ /月3,396円
14歳414クローナ /月4,968円
15歳546クローナ /月6,552円
16歳668クローナ /月8,016円
17歳863クローナ /月10,356円
(1クローナ≒ 12円 2015年8月現在)

この表によると、我が家の長女(9歳)には週に500円程度のお小遣いをあげることが適当のようです。一ヵ月では2000円ほど。さて、この金額が多いのか、少ないのか?ちなみにスウェーデンの物価の参考として、子どもたちが買いそうな物をいくつか挙げてみます。スーパーによっても多少異なりますが、ポテトチップス一袋が20クローナ(240円)ほど。100グラムの板チョコが15クローナ(180円)、缶コーラが一本7クローナ(84円)程度です。筆記用具などはデパートで購入すると、鉛筆2本と消しゴム、定規のセットで35クローナ(420円)ほどになります。スウェーデンでは子どもがお菓子を食べてもいいのは土曜日、と決めている家庭が多いので、土曜日になるとお菓子コーナーの前で嬉々としてお菓子を選ぶ子どもの姿もよく見られます。

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スーパーのお菓子コーナー。自分で袋に詰めてからグラムで値段が決まる量り売りです。

お小遣いで何を買うの?

実際、子どもたちはお小遣いで何を買うのでしょうか。また別のスウェーデン大手銀行のひとつ、スウェド銀行が、男の子・女の子の買い物内容と年齢別の買い物内容について調査しています(資料2)。

まず男の子、女の子とも共通して買う物は、コンピュータ用品、テレビ、テレビゲームなどの電化製品とのこと。このうちテレビを買うことについては、子ども部屋にテレビを置くか置かないかの点についてスウェーデンの育児サイト等で色々な議論があります。一般論として、小さいうちはテレビを見る時間を制限するという意見が多いようですが、私がまわりの友人に聞くかぎり十代の子どもに対してはテレビを買うことを承諾するという意見があるようです。

スウェーデンの電話会社、テレノール社の2013年の調査では、9歳児のおよそ半数が自分のスマホを持っており、5歳児の4人に一人が自分のiPad等のインターネット専用端末を持っているとか!初めての携帯電話を持つ年齢は平均で8.7歳だそうです。18歳未満の未成年者は携帯電話の契約ができないので、子ども仕様に設定された携帯が使われています。そして十代の子どもとなると、ほぼ100%がスマホを持っているというのです。たしかに、うちへ遊びに来る娘の友達も携帯電話を持っている子がほとんど。両親が共稼ぎである家庭が一般的なスウェーデンでは、子どもとの連絡をまめにとるためには必要なのでしょうが、携帯電話なんて小学校の高学年からでいいかな、と思っていた私にはちょっと驚きの結果です。

しかしながら、年を追うごとにこうした傾向が進む一方で、子どもたちがインターネットや携帯電話に夢中になることによる精神的または身体的な弊害について警鐘をならす小児科の先生もいます。このような背景も考えて、子どものお小遣いの使い道には親の管理もまだまだ必要でしょう。

男女別、年齢別の買い物について調べてみると、小学生の女の子はペット用品などを買ったり、洋服を買うことが多く、男の子はおもちゃとスポーツ用品を買うそうです。週末に、ちかくの大きなショッピングモールへ行くことがありますが、小学校高学年くらいの子どもたちが連れ立ってショッピングをしている姿を見かけます。こうやってお父さんとお母さんにもらったお小遣いで買い物を楽しんでいるのでしょう。中学生、高校生と年齢が上がっていくほど、携帯電話の代金や各種プレゼント、音楽関係の商品、化粧品等にお小遣いを使うようになるそうです。このような点では、日本の子どもたちと変わりは無さそうですね。

もちろん貯金もしています

いろいろ調べてみて分かったことのなかで、とても感心したことのひとつは子どもたちは毎月の貯金もしているということがあります。こちらもスウェド銀行の調査ですが、十代の子どもの40パーセントは、毎月のお小遣いの一部を貯金にまわしているとのこと。旅行費用や車・オートバイなどの大きな買い物をしたいから、という目的があるためだそうです。貯金額の平均は、十代の男の子のほうが女の子よりも多いとか。大きな買い物を計画するのは男の子の傾向なのでしょうか。計画的にお小遣いを使うことをしっかり学んでいる結果ですね!

さらに私が「偉いなあ!」と感心したことは、十代の子どものなかには将来一人暮らしをするときのためにお金を貯めている子どもたちもいることです。EU加盟国の中での様々な統計調査を行っているユーロスタット(http://ec.europa.eu/eurostat)が、子どもが親元から離れて一人暮らしを始める年齢の平均を調べています。これによると、スウェーデンの若者が親からの自立が一番早く、19.6歳。次いでデンマークの21歳、そしてフィンランドの21.9歳ということで、上位三カ国を北欧の国が占めています。ちなみに、2009年に調査した時点では、スウェーデンの若者の自立の平均年齢は20.4歳だったそうですが、その後の5年間で1歳はやくなったとか。このデータから、スウェーデンでは高校を卒業して大学に進学したり、仕事を始めるタイミングで実家を離れる子どもが多いようです。いままで貯めた貯金を使って、一人暮らしの準備をしたり生活費にあてたりするのでしょうね。参考までに、両親のもとを離れる年齢がEU内で一番遅いのは、クロアチアの31.9歳だそうです。こちらは進学がきっかけではなく、結婚などで実家を出るということでしょうか。

お小遣いの使い方を通じて、娘がお金の大切さを学んでくれることを期待します!


資料1 http://www.nordea.se/privat/sparande/fickpengar.html
資料2 https://www.swedbank.se/privat/mer-om-privatekonomi/vardagsekonomi/barns-fickpengar/index.htm#!/

筆者プロフィール
下鳥 美鈴

東海大学文学部北欧文学科卒業。ストックホルム大学で修士課程を終え、ウメオ大学(スウェーデン)で博士課程を修了。言語学博士。
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