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【ドイツの子育て・教育事情~ベルリンの場合】 第10回 サッカークラブ2年目の練習とデビュー戦

要旨:

息子がサッカークラブに参加しはじめて、今夏でちょうど2年目を終える。プレイに慣れることから始まった初年度とは異なり、2年目は練習メニューも本格的なものになり、毎週土曜日には他クラブとの試合が行われるようになった。デビュー戦では、子どもたちよりも父親たちの方が大興奮!試合中、息子たちに向かって叫び続ける父親たちに試合後にパンフレットが配布され、ピッチ上での保護者たちの正しい振る舞いを促していた。毎週末午前中に行われる試合への参加は保護者にとっても大変なことが多いが、息子がやる気を見せている間は、できる限りサポートしていきたい。

Keywords:
ドイツ、ベルリン、サッカー、試合、ブンデスリーガ、シュリットディトリッヒ桃子

サッカーの女子ワールドカップでは、なでしこジャパンが活躍を見せましたが、「保育園編 第26回 子どもサッカー教室」で述べたように、ドイツでもサッカーは大人気!小さい頃からサッカーの練習に励んでいる子どもが多く、息子も5歳の誕生日を迎えてすぐに、自宅近くのクラブに入会、今夏でちょうど2年目を終えます。今回は2年目の様子を試合の状況も交えながら記していきたいと思います。

「1年目はプレイに慣れることから始めます」というトレーナーの言葉どおり、クラブ入会後1年間は、パスやシュートといった基本技術の練習以外は、試合形式でボールを追いかけている時間が長かったクラブ最年少チーム。それが、2年目となると、走り込み、筋力トレーニング、ドリブルやパス、シュート練習などといった、本格的なものに切り替わりました。息子のチームのメンバーも20人くらいから12人と減って、程よい人数になり、毎回ボールにみっちり触れるようになりました。

ちょうどその頃小学校に入学して「俺ってお兄ちゃんだぜ~!」と息巻いていた息子としては、この変化が嬉しくてたまらないらしく、「早くサッカーの日にならないかな!」と練習日を待ちわびるようになりました。

実は、「保育園編 第26回 子どもサッカー教室」で述べたように、最初の頃は「人が多すぎてボールに触れないから、練習に行きたくない!」と、時に後ろ向きな発言をすることもあったので、これはかなりの進歩です。この前向きな変化を、私たち夫婦はとても嬉しく思いました。

そして、もう一つ、息子のやる気をアップさせたのは、初めてのチームウェアとサッカーシューズでした。他の子どもたちは既に、高価な本物のジャージー(ドイツ代表やバイエルンなど有名チームの)やスパイク付シューズなどで練習していましたが、私たちは「すぐにサイズアウトするだろうから」と、普通のTシャツとスニーカーで、練習に臨ませていました。ですから、「一年間、頑張って辞めずに練習に参加したら、ご褒美に、所属しているクラブのチームウェアを買ってあげよう」と密かに計画していたのです。

その後、なんとか一年間、練習に通い続けたので、入学祝にウィンドブレーカーとサッカーシューズをプレゼントすることとなりました。これらは防水機能付ですから、雨の日の練習だってへっちゃらですし、不思議と晴れの日のモチベーションも上がって、天候に関わらず、 練習への意欲向上に大きく貢献したことは言うまでもありません。

クラブ2年目のもう一つの大きな変化は、それまでなかった他チームとの正式な試合が始まったことです。1月から3月までのオフシーズン中は週1回のインドア練習だけで試合はありませんが、それ以外の時期、すなわち9月から12月までと、4月から6月までは、週2回の練習に加え、毎週土曜日に試合が行われるのです(7月と8月は夏休みのためお休みです)。

といっても、コーチによると、試合に参加するようになってからの一年間は「サッカーの試合がどんなものか知ること、試合を楽しむこと」に焦点を置くので、得点も表立ってはつけない、とのこと。さらに、毎回、全員が参加するPK戦も行って、シュートの感覚をつかむのだそう。実際にこのPK戦では、毎回ゴールキーパーもシュートのチャンスを与えられ、盛り上がりをみせています。

また、試合に参加するチームとしてはリーグ最年少ということで、フィールドの広さも半分、時間も20分×2回、チームも6名のフィールドプレーヤー+1名のゴールキーパーで構成されています。

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試合前に円陣を組んで、気合を入れるぞ!

さて、記念すべきデビュー戦ですが、息子は試合がどういうものかよくわかっていなかったのか、日程が決まっても意外に冷めた様子。数日前からエキサイトしていたのは案の定、父親の方でした。

だからでしょうか、息子はベンチ入りスタート。さすがに、スターターの中にはとっても上手な子がいて、特に紅一点の女の子はボールを見る目もさばき方も、同じ6歳とは思えない程でした。「ああいう子が、将来プロにスカウトされるのかしら?」などと思っていると、試合開始10分ほどで、息子はフィールドに呼ばれます。「さあ、頑張って!」と応援し始めたのも束の間、ボールを巡って他のプレイヤーと激突!というハプニングから始まってしまいました。その後も、べそをかきながら、全身から嫌々オーラ全開でたらたら歩いている息子を見て、興奮度MAXの父親が「何やってんだぁー!走れぇー!ボールを追うんだー!!」と、これはブンデスリーガの試合か?という位、大声で叫びだしました。

すると、これが功を奏したのか、息子も流れに乗って走り出したのですが、いかんせん、最初は雰囲気にのまれているのか、人の流れについて行って走っているだけ。ボールがどこにあるのか、全然見ていない様子です。

これにまたフラストレーションを感じた父親は「どこ見てんだぁー!?しっかりボールを見るんだぁー!!」と再び叫びだしました。

「自分が参加する試合よりもエキサイトするな、子どもの試合ってもんは、ハハハ」と一応、自覚はある模様でしたが、「そこまで熱くならなくても・・・」と私が内心思っていると、方々から似たような父親たちの怒号ともつかぬ叫び声が・・・。観客席の大部分は父親で占められていることに気付いた瞬間でした。

実はこの試合の後、「ピッチ上でも親たちはロールモデル」という内容の、パンフレットが配布されました。要は、熱くなりすぎた親たちは、自分の子どもや相手チームを中傷したり、子どもに必要以上にプレッシャーを与えたりしがちだが、そういった行為は慎むべきである、という内容なのですが、この試合の様子を見て納得!やはり皆さん、子どもが第二のメッシになることを夢見て、自然と熱くなってしまうのかもしれません。

話を試合に戻すと、我らが息子も段々慣れてきたのか、時間が経つにつれ、試合の流れに乗ってきたようです。結局、ゴールを決めることはありませんでしたが、ボールを相手から奪ったり、なんとかチームに貢献していた様子で、こちらもほっとしました。そして、試合後のPK戦では見事ゴール!これはさすがに本人も嬉しかったようで、ガッツポーズが出ました。息子以上にエキサイトしていた父親も、その訳をきちんと息子に説明し、息子もそれに納得していた模様。試合後は二人で満足そうな表情を浮かべていました。

全ての試合は土曜日の午前中に行われ、時には朝8時集合ということもあり、週末だからといって、親子でベッドの中でのんびり、というわけにはいきません。試合の半分はホームゲームですからまだいいものの、残りの半分はアウェーで、ベルリンに隣接するブランデンブルグ州との境といった遠地での開催もあります。そんな時には、平日よりもずっと早く起床しなければなりませんが、それでも息子は嫌がることもなく、毎回試合に参加してきました。個人的には週末はのんびりしたいところですが、本人がやる気を見せている間は、できるだけのサポートはしていきたいと思っています。(第二のメッシを夢見て!)

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試合後、相手チームと挨拶

筆者プロフィール
シュリットディトリッヒ 桃子

カリフォルニア大学デービス校大学院修了(言語学修士)。慶應義塾大学総合政策学部卒業。英語教師、通訳・翻訳家、大学講師を経て、㈱ベネッセコーポレーション入社。2011年8月退社、以来ドイツ・ベルリン在住。
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