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【双子のいる生活】 第20回 双子のパパができること ~自治体の多胎児の親向け交流会に参加して~

1年ぶりの更新となりました。こんにちは!

我が家の娘たちは、7歳、小学校2年生になりました。
2年生になって成長を感じたこと。小学校や学童クラブへ、自分たちだけで登下校できるようになったこと。留守番も短時間ならできるようになったこと。こうした、登下校や留守番の時や、シッターさんをお願いする時、双子でよかったと感じます。本人たちも、そう言っています。その分、私も時間と気持ちに少しゆとりがもてるようになりました。

今回は、私の仕事を通して、多胎児の家庭へ必要なサポートについて考えてみたいと思います。いつもの「我が家の双子体験ネタ」とは異なり、少しカタいレポートになるかもしれません。

私は、今年度、ある自治体からご依頼を頂き、多胎児の親向け交流会の司会をさせて頂くことになりました。交流会は隔月で行われ、託児もあります。ひととき、子ども達から離れて、温かいお茶を頂きながら交流し合う、親にとっては、リフレッシュの機会にもなります。

わざわざ先行研究を持ち出すまでもなく、多胎児の親は実感していることと思いますが、横山他(2004)の研究によると、多胎児の母親は、単胎児の母親に比べて、育児に対する不安が顕著に強いそうです。しかし、育児に関する適切な情報が取得できなかった、と回答した比率もより高く、公的サービスとして、「多胎児をもつ母親の交流会」へのニーズは第3位(7項目中・複数回答)とのことです1)。多胎児の場合、虐待発生率は一般の8~10倍であるという報告2)もあり、情報交流の機会提供に留まらず、リスク防止という点からも、このような交流会という形で、行政による温かい支援の目があることを、一多胎児の母親として、有り難いことだと思います。この度、自治体の交流会でのお手伝いを通して、微力ながら、私の経験や研究が、多胎児をもつ親御さんの一助となれれば、本当に幸せを感じます。

私の住んでいる自治体では、多胎児の母親たちが自主サークルを作り、子ども家庭支援センターの会議室を借りて、定期的に交流をしていますが、託児は頼んでいません。そのため、母親たちだけでじっくりと情報交換したり、リフレッシュしたりするところまではできません。いま、約100組に1組は多胎出産であり、多胎児家族は、もはや「マイノリティー」とは言えないのではないでしょうか。もっと多くの自治体で多胎児家族向け支援が充実されることを望んでいます。

さて、自治体の5月度の交流会では、参加者が順番に、自己紹介と、悩みや知りたいこと、伝えたいことなどを話していきました。その場でも、活発な情報交換が行われますが、一巡した後、出てきた話題の中から、いくつかのテーマを選んで情報交換をしました。
5月は、「双子を連れて外出する時、どのようにしているか」、「外出先でぐずられた時、どうしたらよいか」、「離乳食の進行に差があるけれど、どうしたらよいか」、「仕事に復帰してからの一日の育児・家事のやり方」など、具体的な育児テクニックを知りたいという声や、「双子によって自分の愛情に差がある、相性がある」という精神的な悩みが共有されました。
その中から、ご夫婦で参加されたご主人からのご質問(奥様は双子を妊娠中)、「双子を妊娠中、また出産後、夫にどんなことをしてほしいか教えてほしい」について、ここで取り上げさせて頂きたいと思います。「第三者から言われたことはsunaoni.gif聞けるでしょ(笑)」というあるママの前振りで、会場の先輩ママたちは、一気に前のめりに(笑)!

先輩ママたちから「夫にしてほしいこと」は、以下の通りでした。

  • 【行動】多胎児の場合は、出産前から管理入院になることがあるので、上の子どもがいる場合は、母親が管理入院をしている間の上の子どもの育児を担う体制を作っておくこと。
  • 【行動】出産後、役所への届け・申請など、「書類ごと」をやってほしい。
  • 【行動】赤ちゃん二人の沐浴を担当してほしい。
  • 【行動】夜間のうち半分は、妻と交代で育児をして、妻がまとまった睡眠を取れるようにしてほしい。
  • 【行動】妻がリフレッシュできるような時間を作ってほしい。
  • 【行動】上の子どもがいる場合は、上の子どもと遊んであげてほしい。
  • 【心構え】育児の先を読んで行動できるようになってほしい。(難易度高い!)
  • 【心構え】育児・家事について、いちいち、妻に聞かないで進めてほしい。
  • 【心構え】ちゃんとした食事が作れなくても、不満を言わないでほしい。
  • 【心構え】妻に事前に言わずに、呑み会などで遅く帰宅することはやめてほしい。

・・・まだまだアドバイスはありそうでしたが、交流会の終了時間が来てしまいました。
「実際に双子の赤ちゃんを見たら、イメージが湧くよ」ということで、ご夫婦は、終了後、託児室に行き、参加者の赤ちゃん達を見せて頂いていました。私も、一緒に託児室に行きましたが、双子の赤ちゃん達って、なんて可愛いんだろう♪と改めて思いました。育児は大変なんですけれどね・・・でも、超絶可愛い!

今月、ベネッセ教育総合研究所では「第3回乳幼児の父親についての調査」を発表しました。調査では、首都圏に住む乳幼児をもつ父親に、出産前後にどんなサポートをしたかについても聞きましたが、父親たちが、赤ちゃんの育児や、家事、妻のケアなどに取り組んでいる様子がうかがえる結果となりました(図1)。


図1.出産後4か月の間に取り組んだこと(複数回答)
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(出典)ベネッセ教育総合研究所「第3回乳幼児の父親についての調査」(2014年)より。詳細は、ベネッセ教育総合研究所のウェブサイトより「第3回乳幼児の父親についての調査」テーマ別分析2をご覧ください。http://berd.benesse.jp/jisedai/research/detail1.php?id=4646

出産前後に多岐にわたってサポートをした父親は、その後の日常の家事・育児にもより多く取り組み、夫婦のコミュニケーションや絆もより強い傾向にありました3)。子育てのスタート期から父親が育児に関われることは、家族全体にとって重要であり、特に、多胎児の家族にとっては、父親の参加は不可欠です。仕事からの帰宅時間が早い父親の方が、家事・育児への取り組みや、生活満足度が高いという結果も出ました。父親が早く帰宅できるように、職場の体制をつくること、育児中の父親を応援する環境を整えることが大切だと思います。

今回は、我が家の体験から内容が離れてしまいました。我が家の二人は、最近、それぞれの個性への意識が芽生え始めたようです。これまでは、「同じ色・同じデザイン」の洋服や持ち物を欲しがるので、同じ服を着せ、同じ物を買い与えていましたが、最近、「双子に見られるのが恥ずかしい」と言い始め、別のデザインの服を着るようになりました。 なのに、見知らぬ人には、「私たち、双子なの♪」と自分たちから言っています。

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元気いっぱいです。ここまで大きくなりました。

私は、娘たちの成長と共に、双子の育児naradewa.gifのことは減っていき、役立ち情報は少なくなっていくような気がしていました。多胎児の育児本等も、幼児期以降についてはほとんど取り上げられていません。けれど、今回、交流会に参加させていただき、まだまだ、知りたいこと・伝えられることがあるのだなと感じ、この「双子のいる生活」のレポートも更新し続けて行ければと思います。

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【参考文献】
  • 1) 横山美江他(2004)「多胎児をもつ母親のニーズに関する調査研究-単胎児の母親との比較分析」『日本公衆衛生雑誌』第51巻 第2号 p.94-101.
  • 2) 村上淳子・中新美保子・鈴木江三子(2012)「双子の母親の育児ストレスに関する研究-乳児期の双子育児をする母親の体験から」『川崎医療福祉学会誌』Vol.22 No.1 P.79-86.(引用。引用元の原著には当たれず)
  • 3) ベネッセ教育総合研究所「第3回乳幼児の父親についての調査」(2014年)プレスリリース・テーマ別分析2  http://berd.benesse.jp/jisedai/research/detail1.php?id=4646
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