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【ドイツの子育て・教育事情~ベルリンの場合】 第6回 小学校のお休み事情

要旨:

ベルリンでは年間祝日数は日本より少ないため、学期が始まると、平日は約6週間休みなく登校しなければならない。入学して最初の6週間は親子で気を張りながら頑張ったが、その後の2週間の秋休みを経ると、新しい学校生活にも慣れてだいぶ楽になった。このように、学校の休暇は日本に比べると頻度も日数も多いが、普段祝日が少ない分、その役割は重要である。さらに、教師の都合による休講や臨時授業も比較的多いので、自宅での学習フォローアップをしていきたいと思っている。

Keywords:
ドイツ、ベルリン、小学校、祝日、休暇、教師、保育士、ストライキ、シュリットディトリッヒ桃子
ベルリンの祝日

連邦制をとるドイツでは、祝日は州によって異なります。国内で共通の「国民の祝日」の他に、州ごとに祝日が決められているからです。祝日はキリスト教に関連していることが多いことから、カトリック色の強い南部の州バイエルンなどでは州の祝日が多い模様です。一方、宗教色の薄いベルリンでは年間祝日は国民の祝日の9日のみで、自治体独自で取り決めた祝日はありません。ですから、ベルリンは16あるドイツの州の中で最も祝日が少ない州となっています(下記の表参照)。

日本の年間祝日数は15日(2015年4月現在)で、ひと月に1日以上の祝日がありますから、ベルリンの祝日の少なさが分かって頂けると思います。さらにキリスト教系の祝日は、毎年日にちが異なります(下記表で*を付けた日)。例えばイースターは、今年は4月第一週末となっていますが、来年は3月の最終週末になります。

   ベルリンの祝日(2015年)
1月1日 新年
4月3日* 受難の金曜日:イースター
4月6日* 復活祭の月曜日:イースター
5月1日 メーデー
5月14日* 昇天祭
5月25日* 聖霊降臨祭の月曜日
10月3日 ドイツ統一の日
12月25日 クリスマス 第一日目
12月26日 クリスマス 第二日目
ベルリンの小学校の休暇

一方、学校の休暇となると、日本より頻度も日数も多い気がします。例えば、息子が通う学校では、5月15日(昇天祭の翌日)および5月26日(聖霊降臨祭の月曜日の翌日)が休みです。さらに、まとまった休みも多く、大体6週間ごとに1-2週間の休暇がとられています。

   ベルリンの公立学校の休暇表(2014年9月~2015年8月)
名称
日程
秋休み 2014年10月18日 - 11月1日
クリスマス休暇 2014年12月18日 - 1月4日
冬休み 2015年1月31日 - 2月8日
イースター休暇 2015年3月28日 - 4月12日
休校日 2015年5月15日、5月26日
夏休み 2015年7月15日 - 8月30日

ここで年間の流れをこれまでの経験と照らし合わせてご紹介しましょう。まず、昨年9月第1週から新学年が始まりましたが、日本のような短縮授業はありません。又、土日は休みですが、秋休みまでの6週間中、祝日は全くないので、平日は秋休みまでノンストップで登校し続けます。これは少なくとも親の私には思いのほかきつかったです。日本では1か月に1、2回祝日があり、それらの日に息抜きをすることができました。ドイツでも保育園に通っている頃は、数日休んでも授業があるわけではないので、これほどの緊張感は強いられませんでした。

というのも、こちらでは保育園でもそうでしたが、日本のように「連絡帳」のようなものはなく、先生とのコミュニケーションをとる時間も非常に限られています。家庭訪問などもありません。教師はあくまでも授業を行うにとどまり、その後のフォローは家庭で行う、というのがこちらの通例のようです。

また、こちらでは日本のように教育産業は発達しておらず、塾や予備校などもほとんどありません。ですから、「勉強は塾にお任せ」という選択肢はなく、あくまでも親が子どもの勉強の進み具合を把握していなければならないのです。ですから、我が家では勿論、息子のクラスメートの保護者たちも毎日子どものノートや宿題のチェックを行い、学習状況の把握に努めています。

このような背景から、日頃から問題が起こることをなるべく避ける上でも、毎日登校し、休まず授業を受け、宿題をこなし、学習内容を理解する、という最低限のことは、きちんとさせたい、という私たちの意向がありました。

さらに、こちらの医療事情として、自然療法が重んじられており、風邪くらいでは、程度にもよりますが医者は薬をほとんど処方しません(私たちが日本でかかっていた小児科医は、息子が風邪をひくと毎回のように、大量の抗生物質や薬を処方していましたが!)。ベルリンでは、時間がかかっても、睡眠と食事で回復させることが多いのです。従って、1週間ほど学校を休ませることはざらです(保育園編「第5回」参照)。

気候についても、ベルリンでは9月になると気温もぐっと下がり、10月になれば、日本の感覚では晩秋くらいですから、体調を崩す人も大幅に増えます。これらに加えて、今年は初めての学校生活ということもあり、息子には心身ともに負担がかかっていたと思います。ですから、バランスのとれた食事を心がけたり、生活のスケジュールを変えないようにすることは勿論、夜8時には必ず就寝させるなど、彼の健康管理にいつも以上に気を遣っていました。

そんな中、なんとか息子も頑張ってくれて、ようやく10月中旬の2週間の秋休みになりました。1年生になったばかりの息子は、この間、新生活で緊張していた気分をほぐして、ゆっくりと休むことができたようです。入学時は保育園からのお友達が一人もいなかったので、不安に思っていたようですが、最初の6週間で新しいお友達も多くできたようですし、何より、新しい生活スケジュールに慣れたことが、本人の安心材料になったようでした。2週間休んだ後は、休み明けの登校を楽しみにしていましたから、この秋休みは、学校生活に慣れるステップとして非常に重要なものだったと思います。

さて、11月に入ると再び授業が始まります。11月にも祝日はないので、平日は6週間登校し続けます。といっても、12月に入ると、気分はもうクリスマス!授業もクリスマスに関連した内容が多くなってきます。私たちも学校生活に慣れてきたので、最初の6週間に比べると、かなり緊張度は低く過ごすことができました。そして、待望のクリスマス休暇に突入です!

美味しい料理をたらふく食べて、家族との時間をたっぷり楽しみ、2週間すっかりリラックスして新年を迎えると、早々に授業が再開されます。といっても、今度は4週間登校しただけで、1週間の冬休みに突入です。「この前、休暇が終わったと思ったら、また休みか・・・」と思ったのですが、この冬休みはベルリンの公立学校では結構重要な意味をもっている様子。というのも、ベルリンの学校は二期制をとっているので、1月最終週が前期の終わりになり、子どもたちは成績表をもらってくるのです。そして、1週間の冬休みが明けると、後期の始まりとなるので、先生たちにとっては、この1週間の休みの意味は大きい、とのことでした。

後期が始まると、次のイースター休暇まで7週間連続して授業があります。しかし、後期は予想外に学校都合の休校や臨時授業が多く、また、長い冬がようやく終わり、日もぐんと長くなるので、思ったほどはきつくはありませんでした。

そして3月も下旬となると、今度はイースター休暇に入ります。2週間、気分転換した後は、夏休みまで14週間頑張ることとなります。しかし、5月は祝日ラッシュですから、初夏の明るい気候も相まって、人々の気分は浮足立っています。そして、7月からの6週間の夏休みへ一気にスパート!といった感じになるでしょうか。

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昨年イースター休暇で訪れたAugustusburgで。
街の至る所に、このような色とりどりの卵(生命のシンボル)が飾られている

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イースター市場にはウサギ(豊穣のシンボル)が飾られている

教師都合のお休み

さて、上記で少し触れましたが、ベルリンの小学校では学校都合の休校が予想外に多く発生します。例えば、冬休み明けの登校初日の次の日は全校休講でした。理由は「学内の全教師および保育士が一斉に講習受講のため」。

実はこの手の「研修」は、2か月に1度位の頻度で行われる模様で、クリスマス前にも実施されていました。その時には、外部から代講の先生を招いて、臨時授業が行われていましたが、大体、塗り絵などで終わってしまったようでした。保育士も講習に参加しているため学童保育はありませんから、午前11時にお迎え*1 が推奨され、遅くとも午後1時半には全員下校しなければなりませんでした。

さらに、3月には給与値上げ目的の「教師と保育士のストライキ」があり、ベルリン市内では休校になってしまう学校も多かったそうです。このストライキは、なんと3月は毎週行われました。息子の学校では、約半数の教師と保育士はストライキに参加しましたが、幸い、参加しない先生たちが複数のクラスをまとめて臨時授業(DVD観賞やコンピューターに慣れ親しむ授業)を行ったそうです。これらストライキの日には学童保育もありませんから、午後1時半に一斉にお迎えとなります。

このように祝日の少ないベルリンでも、学校が休みになる日は日本に比べると多いと思います。ちなみに、学校の休暇中には宿題は全く出ません。このような環境ですから、子どもたちは、比較的のんびりとしている気がしますが、親として勉強についての懸念がないというわけではありません。例えば、上記のようにストライキや先生の病欠の多さがベルリンでは問題になっています。その間、臨時授業が行われることになりますが、息子のクラスではその間、塗り絵をするだけだったり、ストライキの時には、授業を行う教師数が少ないので、合同授業となるため、一クラスあたりの児童数が増えてしまい、通常のようにきめ細かな授業ができなかったりするのが現状のようです。

また、学童保育が提供されずにお昼にお迎えに行かなければならないことも多々あり、仕事などのスケジュールのやりくりが大変です。しかし、ここは状況を逆手にとって、早く帰宅した日には、じっくりと自宅で勉強のフォローアップをしたり、毎週大量に出される日本語補習校の宿題に取り組んだりするようにして、日独両方の学校の学力維持を図ることができるように努めています。


    *1 ベルリンの小学校では、低学年の場合、安全上の理由から保護者が送迎することが通例です。詳細は「第24回 小学校見学(1)」を参照。
筆者プロフィール
シュリットディトリッヒ 桃子

カリフォルニア大学デービス校大学院修了(言語学修士)。慶應義塾大学総合政策学部卒業。英語教師、通訳・翻訳家、大学講師を経て、㈱ベネッセコーポレーション入社。2011年8月退社、以来ドイツ・ベルリン在住。
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