CHILD RESEARCH NET

HOME

TOP > 論文・レポート > 子育て応援団 > 【ザンビアの子育て・生活事情】 第6回 ルサカでの親子の時間の過ごし方

このエントリーをはてなブックマークに追加

論文・レポート

Essay・Report

【ザンビアの子育て・生活事情】 第6回 ルサカでの親子の時間の過ごし方

要旨:

ルサカでは、親子で楽しめる場所は限られているものの、工夫をしながら楽しく過ごすことができる。家の周辺の散歩では、道端で会う人々との会話を楽しみながら、運動と気分転換ができる。休日の過ごし方として一般的なのは、親子でショッピングセンターへ買い物に出かけることだ。その他、親と子がそれぞれ楽しめる環境が整えられている広い庭付きのカフェや、バーベキュースペース・庭園・遊具・プールなどが併設されている動物園で過ごすという選択肢もある。

Keywords:
親子の時間, 家の周辺, ショッピングセンター, 広い庭付きのカフェ, 動物園

今回は、私自身の経験談も交えながら、ザンビアの首都ルサカでの親子の時間の過ごし方について、ご紹介したいと思います。

家の周辺

長女が生まれてしばらくの間、仕事をしていない期間があったので、自分自身の運動不足の解消のためにも、毎日、長女をベビーカーに乗せて家の周辺(5キロ程度)を散歩していました。最近は健康志向が高まりつつあり、ジョギングやウォーキングをする人達をよく見かけるようになりましたが、当時(約12年前)は、路上で見かけるのは歩いて目的地に向かうザンビア人だけで、外国人の私は非常に目立ちました。また最近はベビーカーの使用が少しずつ普及してきましたが、当時はベビーカーに赤ちゃんを乗せて歩いている、という光景もかなり珍しいもので、余計に目を引きました。そのため、最初は、歩いているザンビア人や、各家の門の脇に立っている警備員に珍しそうに見られて、「何やっているの?車はないの?日が照って、砂埃が沢山あるのに、赤ちゃんは、大丈夫なの?」と、心配そうに声をかけられることがよくありました。しばらく経つと、「君、良く見かけるね。向こう側でも見たから、相当な距離を歩いているよね。外国人なのに、体力あるね。」と、少し距離が縮まったコメントをもらうようになりました。

当時住んでいた所は、外国人や、ザンビア人の比較的所得の高い人達が居住する地区で、道路は一応舗装されていましたが、時々舗装が取れて穴が開いていたり、舗装されている部分から少しそれると、赤土に岩が混じった地面がむき出しになったりしていました。それなので、1時間余りの散歩を終えると、私の足とベビーカーは、砂埃まみれになりました。

report_09_163_01.jpg
長女が幼かった頃、ベビーカーに乗せて散歩していた道

外に散歩に出るのは少し勇気が必要で、体力も消耗し疲れるものでしたが、道端の木や草花を見て楽しむことができたり、通りすがりの人達と言葉を交わすことは、私と娘にとってその地域の中に入って行くきっかけとなった気がします。散歩の途中に、ご主人の赴任についてザンビアに来たというケニア人の女性と知り合って、会話をすることがありました。彼女は、「同じ黒人でも、私はケニア人だから、ザンビア人からは外国人として見られると思うと何となく怖くて、なかなか外に出る勇気がなかったの。でも思い切って外に出てみたら、あなたのような外国人もいて、びっくりした。」と、話してくれました。

ところで、ベビーカーですが、ザンビアのでこぼこ道にも耐えられるように、と、大き目の車輪のものを購入したりしたのですが、結局、一番使い勝手が良かったのは日本製のコンパクトなものでした。赤ちゃん連れで買い物に行く母親を考慮して、コンパクトながら収納場所も確保されているので、少し足を延ばしてスーパーまで行って、たっぷり食料を買って帰る、ということもできました。

ザンビアの一般の人達も、近所に買い物に行くついでに子どもを散歩に連れ出すということが多いようです。近所への買い物は、多くの場合、ザンビアのシマ料理に欠かせない野菜(トマト、玉ねぎ、付け合わせの葉野菜)を買いに路上の野菜売りのおばさんの所に行くか、道端の携帯電話のプリペイドカード販売のスタンド(べニヤ板で作った簡易の小屋のような店)に行くか、です。(ザンビア人にとって携帯電話は欠かせないもので、経済的に余裕のない場合も、携帯電話のプリペイドカードの費用は彼らの中での優先順位が高いようです。)幼い子どもの世話は、ナニー(乳母)や同居している親せきの女性など、母親以外の女性がしている場合も多く、子どもを連れている女性が母親であるとは限りません。

ショッピングセンター

ルサカに住んでいる人達の週末の過ごし方として、親の買い物ついでに、子ども達も一緒にショッピングセンターに行き、そこでアイスクリームを買ってもらう、というのが定番になっています。ルサカ市内には、子どもが自由に遊べる場所が少ないので、ショッピングセンターは、親子で週末を過ごせる空間を提供してくれるのです。ルサカ市内には、ここ数年、新しいショッピングセンターが続々とできて、大分便利になりました。この中のいくつかには、エスカレーターも設置されています。エスカレーターは、日本人にとっては非常に身近なものですが、ザンビア人にとっては、これまで見たこともなかった人達も多く、初めてエスカレーターを使う人達も多いようです。乗り降りのタイミングがつかめずに、立ち往生している人達を見かけることがあります。他人事のように書きましたが、私の娘達も、エスカレーターができた当初はうまく乗り降りができずに、前後の人達に助けてもらうことがよくありました。

広い庭付きのカフェ

私が仕事をするようになると、週末には、ルサカ市内の広い庭付きのカフェに娘達を連れていくことが習慣になりました。私にとってはお昼を準備する手間が省け、娘達は広い庭で思いっきり体を動かして遊ぶことができたので、お互いに都合が良かったのです。現地の日本人の友人と一緒に出掛けて、子ども達を庭で遊ばせながら、大人はおしゃべりを楽しむ、ということも、よくしました。通常は、私の娘達に加えて、友達を1人か2人一緒に連れていくことが多くありました。娘の友達のご家族とは持ちつ持たれつで、あちらのご家族と一緒にうちの娘達もどこかに連れ出してもらう、ということもよくありました。カフェの広い庭には、トランポリン、砂場、ブランコなどの遊具の他に、ポニーに乗せてくれたり、ウサギ小屋でウサギの観察や餌付けができ、子ども向けのアクティビティが豊富で、こども達も飽きさせない環境が整えられていました。また、幼い子ども達のために室内で遊ぶスペースと遊具も揃えられていて、ここには、子ども達の世話をしてくれる付き添いのスタッフが配置されているので、安心です。(カフェでの飲食にかかる料金以外、施設使用料は無料です。)

report_09_163_02.jpg  report_09_163_03.jpg
ルサカ市内のカフェにて:広い庭で遊ぶ子ども達(左)、ウサギの餌付け(右)

動物園

ルサカ市内には、動物園が1つあり、そこも家族や友達同士、または男女のカップルで、休日を過ごす場所の1つとなっています。ただ、中心部から離れているので、頻繁に訪れるのではなく、年に1回から2回程度、という人が多いようです。また、幼稚園や学校の遠足として訪れる場所にもなっています。動物の種類は、ライオン、チーター、シマウマ、インパラ、ダチョウ、イノシシ、ワニなど、大きな動物の他に、フクロウなどの鳥類や、ハリネズミ、ウサギなどの小動物もいます。動物は、更地にフェンスが張られて、各動物が区画で区切られていて、雰囲気としては、動物園というよりも、小さいサファリ・パークのような感じです。ライオンの餌付けは、人気のアトラクションの1つです。ライオンは5、6頭いて、餌付けの時間になると、餌を食べに出てきたライオンを、(柵を挟んだ)至近距離で見ることができ、迫力があります。この動物園には、庭園、こどもの遊具を備えた公園、滑り台があるプールも併設されています。また、バーベキューができるスペースもあります。動物を一通り見た後は、バーベキューでランチ、その後は、公園やプールで遊び、一日中、たっぷり楽しむことができます。

report_09_163_04.jpg  report_09_163_05.jpg
ルサカの動物園で:ライオンの餌付け(左)、柵の回りに、動物を観に集まる人々(右)


筆者プロフィール
aya_kayebeta.jpgカエベタ 亜矢(写真右)

岡山県生まれ。1997年千葉大学医学部を卒業後、東京大学医学部小児科に入局(就職)、東京都青梅市立総合病院小児科勤務を経て、2000年にJICA技術協力プロジェクト(プライマリーヘルスケア)の専門家としてザンビアへ渡る。その後、ザンビア人と結婚し、3人の娘(現在、小4、小5、中1)を授かる。これまでザンビアで、小児科医として、HIV/AIDSに関する研究、結核予防会結核対策事業(コミュニティDOTS)、JICAプロジェクト(都市コミュニティ小児保健システム強化)等に携わってきた。一方、3人の子どもの母親として、日本から遠く離れたアフリカ大陸で、ギャップを感じつつも、新たな発見も多く、興味深い子育ての日々を送ってきた。
このエントリーをはてなブックマークに追加

TwitterFacebook

インクルーシブ教育

社会情動的スキル

遊び

メディア

発達障害とは?

論文・レポートカテゴリ

アジアこども学

研究活動

所長ブログ

Dr.榊原洋一の部屋

小林登文庫

PAGE TOP