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【ニュージーランド子育て便り】 第22回 シドニー旅行

要旨:

オーストラリア最大の人口を有する都市シドニーへ旅行に行った。シドニーは、ニュージーランドとの関係が深い都市でもある。オーストラリアとニュージーランドの関係、ニュージーランドの子どもたちが海外に行くことをどのようにとらえているかなどを紹介する。

今年の10月、ニュージーランドから離れて、お隣にあるオーストラリアで最大の人口を有する都市シドニーに行ってきました。数日間の短い旅行ですが、今回は、その旅行についてお話ししようと思います。

まず、少しだけ両国の関係をご説明します。オーストラリアとニュージーランドは経済的にも文化的にも非常に近い関係です。毎年、多くのニュージーランド人がオーストラリアに移住していきます。私たちがニュージーランドに来てからも既に多くの知人がシドニーに移住しました。近所のお子さんの中にも、オーストラリアの大学に進学したり、働きに行ったりした方が多くいます。その背景には、オーストラリア国民とニュージーランド国民は査証(ビザ)なく相互の国で働くことができることや、大学の学費、年金など、様々な面で両国の便宜が図られていることがあります *1。そのため、ニュージーランドにも多くのオーストラリア人がいます。といっても、オーストラリアの方が給与など待遇面で条件が良いといった事情からか、ニュージーランドからオーストラリアへの移住の方が多いのが現状です *2。特にシドニーへは、多くのニュージーランド人が移住しています。そんな、ニュージーランド人が惹かれる街、シドニーを見てみたい、というのも今回の旅行の動機のひとつでした。

旅行先のシドニーの人口は、ニュージーランドの総人口約450万人と等しいわけですから、オークランドと比較して、圧倒的に大都市でした。私自身は、公共交通機関が発達していて、オークランドの2倍の高さはあろう高層ビル、ショッピングのできる場所がたくさんあるという、どこか見慣れた光景に、日本に近い懐かしさも感じました。緑と水が豊かで自然が美しいニュージーランドですが、人工的な物が少ないのも事実。活気あふれる魅力的なシドニーに、ニュージーランド人は惹かれているのかもしれません。

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対岸から見たシドニー

シドニーで私たちは、オペラハウスに行く、市内を観光バスで巡る、動物園でコアラに会う、などを楽しみました。娘が一番楽しかったのは、動物園だそうです。カンガルー、コアラ、タスマニアンデビルといったオーストラリア固有の動物をたくさん見て、印象に残っているようです。オークランドでは乗らない乗物に乗る度、オークランドにはないスケールの大きな建物などを見る度に、感動を素直に表現してくれる4歳児は、親が見ていても飽きませんでした。また、娘に1つだけはっきりとした変化がありました。中国語、韓国語、フィリピン語、その他様々な言語での会話を自然に耳にするオークランドの中心部と比べ、私たちの滞在中、シドニーの中心部の街中では英語しか耳にせず、英語以外の言語をそれほど聞くことがありませんでした。そんなこともあってか、いつもは街中で家族では日本語で会話をしている娘も、シドニーでは英語で話したがったのです。街の雰囲気は、子どもにこんなに影響するのですね。オークランドでは自文化を大事にしやすいことも改めて感じました。

海外旅行となると子ども連れで飛行機に乗らなければなりません。私も以前は不安だったのですが、ニュージーランドは移民の国ですから、皆、当然のこととして、一時帰国などで小さな子どもと共に長時間のフライトに挑みます。海外旅行についても「いい経験ができるね!」「~に行けるなんてラッキーね!」という肯定的なとらえ方が一般的です。娘のクラスメイトもこの半年ほどの間に、タイ、中国、アメリカ、インド、など多方面へ一時帰国(親の母国を含めて)や旅行に行きました。5歳から小学校が始まってしまうためか、4歳のお友達が長めの一時帰国をすることが多かったような印象をもっています。先生方も良い経験としてとらえてくれていますし、子どもたちが海外からニュージーランドに戻ってきた後、クラスの壁に旅行の写真を貼ってみんなにその経験を共有しようとしてくれます。娘もコアラと一緒に撮った家族写真を教室に貼らせてもらいました。興味をもってくれたクラスメイトが覗き込んできたのを娘は嬉しそうに見ていたようです。旅行に限らず、日本と比べて子ども時代から、自分の経験を共有するということが多くあります。

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オークランドとシドニーはフライトで3時間という近さにもかかわらず、経済、スピード感、国の歴史や先住民族の違い、気候や生態系の違いなど、思っていた以上に違いがあることを実感しました。娘は、ニュージーランドに戻って来て以来「またシドニーに行きたい」と繰り返しています。さらに、違う国にも興味が出てきたらしく、「今度はパンダを見たいから、中国へ行きたい」などと言っています。

ニュージーランドに来てからは、海外旅行に対する周囲の肯定的な雰囲気に加えて、ニュージーランドに小さな子連れでバカンスに来ている家族をよく見るせいでしょうか、日本にいた頃よりも前向きに、きっと子どもにとっても良い経験になるはずと思うようになりました。オーストラリアを除けば世界の主要都市と距離があり、直行便もない都市が多いため簡単ではありませんが、いつかまた娘を連れて様々な国へ、旅行に行けたら良いなと思います。


  • *1 オーストラリアにおけるニュージーランド人の処遇について詳しく記載があります。http://www.australia.org.nz/wltn/home.html
  • *2 2013年、オーストラリアからニュージーランドへの移民は19,500人、ニュージーランドからオーストラリアへの移民は39,200人であり、その差は19,700人です。ただし、この両方向の移住にはニュージーランド国籍の人がカウントされており、双方向でトップがニュージーランド国籍の人となっています。(ニュージーランド人がたくさん出て行き、たくさん戻ってくるということを意味します。)
    http://www.stats.govt.nz/browse_for_stats/population/Migration/
    IntTravelAndMigration_HOTPDec13/Commentary.aspx#annualplt
筆者プロフィール
村田 佳奈子

お茶の水女子大学卒業、東京大学大学院修士課程修了(教育学)。資格・試験関連事業に従事。退社後、2012年4月~ニュージーランド(オークランド)在住。
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