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【ベルギー子育て奮闘記】 第14回 ベルギーならではのもの

最終回となる今回は、ベルギーで初めて知ったことについて書きたいと思います。家族での駐在が始まってからこの3年間、日本とは違ういろんなものを目にしてきました。その中でも、ぜひ皆さんに紹介したい、ベルギーならではの二つのトピックについて書こうと思います。

ベルギーでの海水浴

まず、ベルギーの海に海水浴に出かけた際のお話です。ルーヴェンからは片道2時間ほどでベルギー西部にあるビーチに行くことが出来ます。

現地のお友達一家は、毎年夏休みを利用してビーチ近くの街、De Haanに3週間程度滞在しています。以前から、「遊びにおいでよ」と誘ってくださっていたこともあり、お言葉に甘えて、2泊3日でお友達の"セカンドハウス"に滞在させて頂きました。

ベルギーに来て3年目、初めての海水浴です。夏と言っても海で泳ぎたくなるほどの猛暑日はなかなか無いベルギー。昨年もほんの数日30度を超えたくらいでしたから、近くのプールで十分事足りていたという状況でした。

お友達のセカンドハウスを訪問した当日は、幸いにも最高気温は26度で、お天気は快晴でした。浜辺に到着すると、お友達一家はすでに日光浴中でした。そして、「今日は今年で一番の海水浴日和よ」と教えてくれました。私にとっては、風もきつく、海に入りたいと思うような気温ではありませんでしたが、ベルギーの人たち、そして我が子にとっては十分のようで、子どもたちも早々に水着に着替え、久しぶりの海水浴を目一杯楽しんでいました。

それを砂浜で見ていた私は、目の前のものが気になって仕方ありません。それは、手作りのお花がたくさん刺してある砂山です。お友達に聞いてみると、「これはフラワーショップよ」とのこと。よく辺りを見ると、他の子ども連れのご家族のところにも同じような「フラワーショップ」ができています。これは子どもたちの遊びで、各々いろんな色のお花紙で作ったお花を砂浜に刺し、お客さんとなる子どもが訪れるのを待ちます。お客さんが来て、お花を選ぶと、子ども店主が値段を言います。「このお花は大きいから両手にすくって6杯ね」と。「両手にすくって6杯?」と思ってみていると、なんとお金の代わりに持っていたのは、小さなバケツにいっぱい入った貝殻でした。6杯というのは妥当な金額らしく、お客さんは両手いっぱいに貝殻をすくって店主のバケツに移していました。そして、自分のお店のお花が少なくなると、他のお店に貝殻を持って買い足しに行きます。このフラワーショップ遊びには大人は一切干渉することなく、子どもたちだけで交渉し、時には「高いから安くして」と値切ったりもするようです。お友達は、「フラワーショップ遊びは、子どもたちが物の売買を経験できるいい機会なのよ」と言っていました。

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交渉中の店主とお客さん


そこで、その夜子どもたちと一緒に新しいお花を作り、翌日我が家の子どもたちもこのフラワーショップ遊びに初挑戦してみました。初めて店主となった子どもたちは、波打ち際で遊んでいても、ちらちらと自分たちの"お店"を気にかけ、お客さんが来ると飛んで帰ってきては接客をしていました。最初は要領がつかめず戸惑いもありましたが、すぐに慣れ、お花を売っては楽しそうに買い出しに行き、フラワーショップを立派に切り盛りしていました。そして帰る頃には、たくさんの貝殻とかわいいお花に囲まれ、とても楽しい、貴重な経験をさせてもらえた3日間になりました。

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新しいお花を作る子どもたち


皆様も、ベルギーの海水浴場で、このフラワーショップをお見かけになった際には、貝殻を集めて、お子様と一緒に訪れてみてはいかがでしょうか。

カリオン

カリオンとはいったいなんだろう。とお思いの方がたくさんいらっしゃると思います。まずカリオンの説明を少し。

カリオンとは、鐘楼に演奏用の鐘を設置したもののことを言います。チャイムやベルとは違い、2オクターブ以上の音階の鐘を塔などに設置し、演奏する楽器です。この鍵盤は人がこぶしで叩いて演奏するもので、演奏者をカリオネアといい、ベルギーにはカリオネアになるための学校もあります。最近では自動演奏ができるカリオンも多く存在するようです。

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大学図書館の鐘楼


そして、ベルギーとフランスにある56の鐘楼が「ベルギーとフランスの鐘楼群」として世界遺産に登録もされています。ルーヴェンにも大学図書館、聖ペトロ教会、世界遺産に登録されているベギンホフ(ベギン会修道院)、小ベギンホフなどの鐘楼にカリオンが設置されています。ですので、ルーヴェンの街を歩いていると毎日どこかでこのカリオンの音色を聴くことが出来ます。初めてカリオンを聴いたとき、とても温かな、心が静まるような音色に魅了されました。

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聖ペトロ教会
  
小ベギンホフの教会


ルーヴェンでは、火曜と木曜の夜に大学図書館のカリオンを見学できます。行きたいと思いながら平日の夜に出かけることがなかなかできずに今に至っていますが、帰国するまでには必ず行きたいねと主人とも話しています。

そして、夏の期間、カリオンのコンサートも開催されます。大学図書館前に椅子が用意され、夏の夜をカリオンを聴きながらゆったり過ごすというぜいたくな催しです。

毎日のカリオンの音色は自動演奏の物が多いですが、いつもと違うメロディが聞こえると「今日は学生さんが練習しているのかな」、「これはプロの演奏かな」などといろいろな想像ができるのも楽しいです。

帰国が近づいてきた我が家は、子どもたちと「このカリオンの音色を聴くのもあと少しだね。寂しいね」と話しています。日々の雑踏の中にふと鳴り出すカリオンの音色。日本に帰るとすごく懐かしくなるだろうなぁと、最近は足を止めてカリオンの音色に浸ることが多くなりました。



3年間過ごしたベルギーでの生活も、残りあと2ヶ月を切りました。たくさんのお友達に恵まれ、たくさんの経験をすることが出来ました。すべてが新しく、驚きの連続でしたが、楽しい3年間を過ごせたのは子どもたちのおかげでもあります。

オランダ語を全く話せないまま、現地の幼稚園に通い、お友達を作り、そこからそのご両親との輪も広がっていきました。子どもたちのストレスを思うと悲しく、つらい時期もありましたが、徐々に慣れていく子どもたちを見ると、その順応性に驚き、喜び、たくましく思いました。今では、日本に帰りたい、でも帰りたくないという葛藤に悩まされている子どもたちですが、日本に帰ってもここで培った経験と順応性で頑張ってくれることと思います。

私たち家族にとって、ここベルギーで出会った友人たちは生涯かけがえのない人たちです。困ったとき、急を要するとき、どれだけの人にお世話になったかわかりません。現地のお友達はもちろん、駐在している日本人のお友達家族も然りです。異国の地で必死に生活しているみんなで力や知恵を出し合い、助け合ってきました。

子どもたちにも、この3年間の貴重な経験を生かし、日本に帰ってもいろんなことに挑戦し、人と助け合い、たくさんの人に囲まれて生活してほしいと願っています。

14回にわたり、この子育てレポートを書かせていただきましたが、私なりの見解、書き方で書かせていただいたので、実際とは少し異なることもあるかもしれません。ですが、外国で生活をした中で経験したたくさんのこと、日本とは違ったこと、私の感じたことを少しでも読者の皆さんにお伝えできていれば幸いです。長きにわたり、お読みいただきありがとうございました。

筆者プロフィール
奥村 沙織: 2011年より、夫の転勤に伴い二人の娘とともにベルギーのルーヴェンに在住。
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