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【ニュージーランド子育て便り】 第19回 5歳で小学生(学習編)

要旨:

ニュージーランドでは、多くの子どもたちが5歳の誕生日を迎えると小学校に通い始める。入学時期が一年に渡るということは、進級や日々の学習は、どのように行われているのだろうか。日本よりも早く通い始める子どもたちは、小学校で何を学んでいるのだろうか。5歳児の小学校での学習内容や学習スタイルを紹介する。

娘は来年5歳になると小学生になります。そんなこともあり、最近、小学校(Primary School)について調べたり、見学させて頂いたりする機会が増えました。日本とは制度も雰囲気も、だいぶ異なるニュージーランド(以下、NZ)の小学校の1年目について、ご紹介したいと思います。なお、学校によって違いの大きいNZですが、今回取り上げる内容は、これまで見学やメールで質問させていただいた複数の学校とのやり取りを通じて、公立校であれば大体同じようなところだと思われる部分を取りあげています。

5歳のお誕生日から通う

日本と違っていて一番驚くことは、一斉に小学校に入学するのではなく、5歳のお誕生日を迎えた子どもから順次小学校に入学していく、ということです。そのため、当然入学式もありませんし、日を追うごとに人数が増えていくのです。NZの新年度は2月に始まり、12月に終わります。1年は4学期制です。誕生日が4月の娘の場合、2学期目から通い始めることになります。いくつか見学に行った学校の説明によれば、1年の前半(2学期まで)に通いはじめた場合には、1年生として入学し、翌2月には2年生に進級するそうです。1年の後半である3-4学期に通い始めた場合には0年生として入学し、翌2月には1年生に進級するようです。といっても、個々の子どもが何年生になるかは個人の能力、親の意向、先生の判断などである程度の柔軟性があるようなので、特に入学が2学期後半、3学期前半など境目にあたるような子どもは、1年の前半に通い始めても、もう一度1年生をやった方がよいとなれば、翌2月からもう一度1年生として通ったり、1年の後半に入学してももう十分2年生になれる実力のある子は翌2月に2年生に進級したり、柔軟に決めることができるようです。

ところで、5歳のお誕生日から通うということですが、正確には、5歳からは学校に行く権利があり6歳からは義務になるということになります。個々の子どもの成長に合わせて1年間のうちで適した入学時期を親が判断できることは素晴らしいことだと思いますが、5歳のお誕生日をお祝いすると、幼稚園や保育園からは卒業するというケースが大多数のようです。日本と比べると通い始める年齢がだいぶ早いわけですが、当然NZの子どもの成長が早いわけでもなく、小学校に通い始めた頃の雰囲気は日本の幼稚園と小学校を足して二で割ったような感じです。実際、見学に行った学校では、通い始めたばかりの子どもが慣れなくて泣いている光景にも出くわしましたし、学校に本格的に通う前に、数日間「慣らし通学」のようなものにも対応してくれる学校があり、年齢相応という感じがします。日本との違いにだいぶ戸惑う"お誕生日から順次入学する制度"ですが、緊張している新1年生が一斉にスタートするのではなく、一人ひとりに目をかけて小学校に迎えてくれるのは悪くないかなと思うこの頃です。

リーディング・ライティング・算数

最初の学年では、今後の学習の基礎になるような内容が中心のようで、(英語の)リーディング、ライティング、算数が主だった学習内容のようです 。リーディングの学習は、アルファベットの読み書きの基礎を覚えていきます。英語は、ひらがなと違い、文字と音が一対一対応ではありません。そのため、文字と音の間にある規則を徐々に覚えていくようです。まず、カタカナで表記するのは難しいのですが、a は「ア」という音、bは「ブ」、cは「ク」...と言った基本の音があります。また、綴りにはいくつかのパターンがあり、そのパターンを習得すると、知らない単語でも音としては、読むことができるようになるといった具合です。 また、その子のレベルに合った薄い読み物で、先生が選んだものを持たされて帰ってくるというのが宿題の定番のようです。ちなみに、娘も今、保育園でこの宿題の準備のような感じで、毎週、保育園の先生が選んだ本を持って帰って来て家で読んでいます。自分で選ぶ本とは違う楽しみがあるようで「今度の本、何だろうね~。」といった感じでワクワク楽しんでいます。ライティングは、文字の向きや書き方、大文字、小文字、ピリオドなどを理解していくようです。算数は、基礎として、1から20までの数字の書き方、数え方、数字の順番を覚えるといったことが最初の学年で行うことのようです。数字をイメージしやすくする教材は、知育おもちゃのようなものも多く、5歳でも抵抗のない内容なのだと感じました。NZには、ナショナルカリキュラムがあり、各学年で習得することについては、教育省のHPでも確認することができます。この内容を確認すると、1年生の終わりには、だいぶいろいろなことができるようになることが分かります *1。また、宿題や保護者との連絡は、写真のようなファイルで行うそうです。

report09_143_01.jpg  
宿題やプリントなどを入れるファイル


個々の能力に合わせて勉強

教室では、大きめな円型や四角いテーブルに子どもたちが向き合って座ったり、床に集まって座って先生の話を聞いたりと、必ずしも机で一斉に前を向いてお勉強するわけではないようです(むしろそういった形での学習を目にすることは、高学年も含めて例外的でした)。子どもたち個々の能力に合わせた課題に取り組ませていることが多いようでした。実際に、"お誕生日から順次入学する制度"のおかげで、小学校入学の時期が1年にわたるわけですから、当然ですが、最初の学年の子どもたちの能力はバラバラとのこと。同じクラスの中に、アルファベットが読み書きできない子どもから、自分で文章を書ける子までいるのです。保護者も、もしも子どもに与えられている課題が難しすぎ、あるいは、易しすぎていると感じたら、適宜、先生と相談するのが良いようです。(なお、高学年には才能のある子どもたち(gifted)だけを対象にしたクラスを提供している学校もありました。1年生に限らず、個々の生徒の実力や興味に合わせた授業は広く行われているようです)。

英語を母国語としない子どもの英語支援

NZには、英語を母語としない子どもがいる場合、その子がサポートを必要とする英語力であれば、教育省から学校に追加の予算がおりることになっています。それによって学校はESOL(English for Speakers of Other Language)専用の教員を雇うなどして、英語が母語でない子どもたちに対して追加の語学的な支援をするという仕組みです。ただし、この件を見学時に先生方に質問すると、現地の保育園に通い英語でそれなりに意志疎通を図ることのできる娘の場合は、 「多分、いらないと思うけど...。」といった回答が主でした。

NZの入学制度や学習環境が日本と比べてどうかについては、まだ分かりません。きっと良い点もあれば悪い点もあることと思います。とはいえ、娘の場合には生まれ月の関係もあり日本より約2年も早く学校に行きはじめることになり、親の経験してきた学習内容とも全く異なる学習をしていくのですから、親としては心配です。どうか小学校で楽しく勉強できますように。

次の稿で、小学校のルールや雰囲気など、学習以外のことをレポートしたいと思います。

report09_143_02.jpg  
学校入学前の健康診断も無事に終了 *2



筆者プロフィール
村田 佳奈子

お茶の水女子大学卒業、東京大学大学院修士課程修了(教育学)。資格・試験関連事業に従事。退社後、2012年4月~ニュージーランド(オークランド)在住。
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