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ティーチング・スクリプトの変容をもたらす授業研究の意義 -教科内容と教材に関する教師の授業観を中心に-

要旨:

継続的な教師の成長を支えるために、実効性のある授業研究を推進することが今日的な課題になっている。それは教師のティーチング・スクリプトをよりよいものに変える取り組みが中心となるだろう。本研究は、自らの教育実践を改善の対象としてとらえ始めた教師のティーチング・スクリプトについて検討することを目的にする。このため、イランでの小学校2年生の授業(算数の足し算)の事例分析を通して、教師のティーチング・スクリプトの変容を明らかにした。

日本型授業研究をイランで初めて導入したT小学校では、教師たちは教科内容を教えるための教育方法の改善に取り組み、教える内容と使用する教材の選定も自分たちで工夫するようになった。このことは子どもたちの数学的な概念理解と抽象的な思考の発展に影響を与えることになった。

本事例研究の分析結果として、教師が、教材研究を通して子どもの思考を予想し、子どもの発想を受け止め、そこから学習課題を追求していくという新たなティーチング・スクリプトを構築するための課題や取り組みが明確になった。また、算数の足し算における「クルミ」という教材の問題(教材の扱い方の失敗)の検討を通して、授業デザインと授業の実施においては、子どもの反応の予想だけでなく、予想外の反応に対する教師の手だてを追究することが重要であることが明らかとなった。

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ティーチング・スクリプトの変容をもたらす授業研究の意義 -教科内容と教材に関する教師の授業観を中心に- (pdf:363KB)


この記事は、『帝京大学教育学部紀要』第2号 171-186頁「ティーチング・スクリプトの変容をもたらす授業研究の意義 -教科内容と教材に関する教師の授業観を中心に-」を転載したものです。
筆者プロフィール
サルカール アラニ モハメッド レザ

教育学博士
帝京大学 教育学部 初等教育学科 教授

1965年、イランのイスファハン県に生まれる。名古屋大学大学院教育学研究科博士課程修了。1999年アラーメ・タバタバイ大学教育学部准教授、2002年学習院女子大学客員研究員、2003年神戸大学客員教授、2004年〜2006年日本学術振興会 名古屋大学外国人特別研究員、2007年国際日本文化研究センター、Oxford大学の客員研究員、2008年〜2012年名古屋石田学園法人本部 中等教育研究部長。

「世界授業研究学会―The World Association of Lesson and Learning Studies―」の立ち上げメンバーの一人。世界の教育に深い造詣を持つ。教育学研究に関する著者、論文は多数。

サルカールアラニ・モハメッドレザ(2007) 『国境を越えた日本の学校文化』国際日本文化研究センター。

Masami Matoba, Keith Crawford, and Mohammad Reza Sarkar Arani (eds.) (2006) Lesson Study: International Perspective on Policy and Practice, Beijing: Educational Science Publishing House.

Sarkar Arani Mohammad Reza, Fukuyo Tomita, Masami Matoba, Eisuke Saito and James P. Lassegard(2012) Teachers' Classroom-based Research: How it Impacts their Professional Development in Japan, Journal of Curriculum Perspectives, Australian Curriculum Studies Association, Vol.32, No.3, pp.25-36.

Sarkar Arani Mohammad Reza and Fukaya, Keisuke (2010) Japanese National Curriculum Standards Reform: Integrated Study and Its Challenges, In Joseph Zajda(ed.) Globalization, Ideology and Education Policy Reforms, The Netherlands: Springer, pp.63-77.

担当科目は「教育原理」、「教育方法論」、「授業論」、「授業観察」など。

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