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論文・レポート

子どもが記者になって町づくりに参加する① ―四街道こども記者クラブの試み―

佐藤 裕紀 (早稲田大学大学院教育学研究科博士後期課程)

2012年10月 5日掲載

要旨:

「四街道こども記者クラブ」は、子どもたちが「まちのメディア」を作り、その過程で自分達の住む地域について新たな気付きを得ながら、町づくりに関わっていく場となることを目指した活動です。子どもたちならではの町を見る視点や、自分達で活動のルールを作る「自治」を大切にしていることなど、8ページの紙面を作るために子どもたちが経験した活動を紹介します。
1.四街道こども記者クラブとは?

四街道こども記者クラブは、千葉県にある四街道市に在住、在学している子どもたちが「まちのメディア」をつくる活動です。子どもたち自身が自分を取り巻く環境について客観的にとらえ、時に批判的に考察をしながら「まちのメディア」をつくることで、地域づくりを行っていくことを目的としています。

2012年の春に始まったのでまだ手探りをしながらの活動ですが、記者として関わっている子どもはもちろん、スタッフとして関わる大人(学生・保護者・社会人)、また取材を受ける地域の大人にとっても、「こども記者」を通して自分達の町について新たな気付きを得たり、町づくりに参加していったりする場になっています。本稿では、11月に発行予定の「こども記者通信」の制作活動の様子を紹介したいと思います。 「こども記者クラブ」では、現在小学4年生から中学1年生までの21名が、隔週の土曜日の午後に「四街道市みんなで地域づくりセンター」に集まって活動しています。活動の運営には、地域の社会人、学生、子育て中のお母さん、子どもの遊びに関するNPOの代表、市役所職員等15名程度が参加しています。筆者は代表として関わっています。また、「四街道市みんなで地域づくりセンター」との協働事業というかたちをとり、四街道市の助成金も得ながら活動しています。

活動のきっかけは、「四街道市みんなで地域づくりセンター」が、地域の子どもたちを対象に行った3回のこども記者育成講座でした。子どもたちは、新聞社の記者さんから取材の方法と記事の書き方を学び、元テレビカメラマンの方からカメラの撮り方を学びました。

この講座に加えて、ドイツのミュンヘンで子どもたちによって運営される仮想都市「ミニ・ミュンヘン」や、日本での「あそびのまち」、デンマーク発祥で子どもたちの自由な遊び場づくり活動である「冒険遊び場」、そして生活綴り方運動等からヒントを得て、私は"地域づくりに子どもたちにも参加してもらうための活動"を何か仕掛けられないかと考えました。しかも、四街道という市民活動の多い町であればこそ、仮想都市でなく実際の現実世界で子どもたちが町づくりに参加することも実現できるのではないか・・・。そうして色々な方の協力を得て立ち上げたのが、「四街道こども記者クラブ」です。

「四街道こども記者クラブ」は、"こどもたちがつくるまちのメディア"ということと同時に、"こどもたちと共につくるまちのメディア"ということも謳っています。つまり、こども記者の活動に関わる大人も、自分達の町や社会について新たな気付きを得て、同じ町の構成員としてともに町づくりに参加してほしい、という思いを込めているのです。


2.いざ取材へ!こども記者の様子

制作している「こども記者通信」は、子どもたちが、日々の生活の中での疑問や不思議について、関心のあるテーマでグループに分かれ、企画、取材、そして編集と全てのプロセスを自分達が中心になって大人スタッフの助言を受けながら行い、発行します。取材内容は8ページ構成の紙面にまとめられ、四街道市内全世帯である3万世帯に配布されることになっています。全世帯に配られている「市政だより」に折り込んで配布してもらえることになったのです。ですから、四街道市に住んでいる全世帯が、「こども記者通信」を受け取ることになります。

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グループに分かれて取材内容を決める子どもたち
真剣に企画書づくり
グループは4つあります。「学校チーム」は学校の校長先生や生徒達に、学校での流行や日々の疑問を取材しています。アンケート調査にも挑戦しました。「まちの未来チーム」は、四街道市の10年後に関して市長や市民へ取材、市長とは1時間におよぶインタビューをさせてもらいました。また「ご当地グルメ・祭りの裏側を探るチーム」はご当地グルメのワークショップに参加して体験レポートを書いたり、自分達でもご当地グルメを考案したりしていますし、「まちの不思議チーム」は四街道市の不思議なスポットに関して取材をしています。

「こんにちは、四街道こども記者クラブの○○です。」という挨拶と共に名刺を渡し取材を始めます。
「市長の子ども時代はどんな子どもでしたか?」
「街の○○の状況についてどう思いますか?」
「校長先生の鞄の中身は何ですか?」
「何時から何時まで仕事をしていますか?」
「この学校の取り組みの特色は何ですか?」
「ご当地グルメをつくることの意味は何ですか?」
「四街道らしさって何ですか?」等々、事前に考えていた質問や、取材先での話を聞きながらもっと聞いてみたいと思った質問をぶつけていきます。相手の目を見て、相づちを打ち反応する子、必死にメモをとっている子、その横で写真を撮っている子。時にはスケッチブックにマジックでキーワードを書いてもらって写真を撮らせてもらっています。

取材直前まで「緊張する〜」と言いながら打ち合わせをしていますが、取材を終えると「緊張したけど楽しかった!」と笑顔が弾け、そのまま次々にインタビューに邁進していきます。インタビューを受けた方々も「初めて取材をされたわ」と嬉しそうに語る方、「イベント当日に『今回の反省点は?』って聞かれちゃったよ」と子どもたちの容赦ない質問に苦笑いする方、「結構、鋭いよね・・・」と感心しながら笑顔で語っている方など、様々です。

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市長インタビュー
「まちの不思議」の取材
3.こども記者のチャレンジ

子どもたちは初対面の大人達を相手に取材をするなんてことはこれまでやったことがありません。 そもそも、「いろんな人と会いたい」「取材したい」「文章が上手くなりたい」などの動機で活動に参加しはじめましたが、一から自分達で企画を考えて、「誰に何を伝えたいのか?」、そしてそれをもとに「どのように記事をつくっていくのか」を考えることについては、経験がありませんし、市内全域から集まった学校も学年も異なるメンバーで「話し合いをする」ことにも慣れてはいません。 それでも参加している大学生スタッフの話し合いや、プレゼンテーションの方法を子どもたちはよく見ているようです。スタッフの振る舞いや言動を摸倣していき、徐々に子どもたち同士の話し合いなどもスムーズにできるようになっていきました。 企画を考える際も、「マクドナルドに行きたい」「キッザニアに行きたい」等の一見突拍子もないような意見でも「どうしてそう思うのか?」「それって例えばどういうこと?」など、お互いに質問して踏み込んでいくと、そこにはきちんと彼らなりの「意味」があります。話し合いの雰囲気づくりから、彼らの意見を出せる環境をつくっていくことで、子どもたちはどんどん積極的になっていきました。

また、ある時、こども記者が保護者に次のように伝えたそうです。「こども記者クラブは、一つ一つ自分達で考えて、決めて進んで行けるからすごく楽しい。学校ではどうしても先生とかが決めてしまっているし、時間もないし・・・。」 こども記者クラブでは、自分達でルールをつくっていく、固い言い方をすれば自治を大切にしています。学年で区切ったり、無理にリーダーを決めたりはしません。授業を受けたり、講座に参加したりという受け身な姿勢ではなく、自分達が主体的につくりあげていくクラブである、という認識を持ってもらうためです。子どもたちに対しては、「ここは学校ではない。スタッフは宿題を出さないし、期限も決めない。ルールは自分達で作って、自分達で守る。みんなが止まったら、活動は止まっちゃうということだよ。」とよく話していました。

例えば、話し合いのルールも、子どもたちが決めることになりました。ある日、自分達のグループの企画を他のグループにプレゼンテーションをして意見をもらう、ということを行いましたが、「まちの不思議・都市伝説チーム」が、少し度を超えてふざけてしまいました。他のグループからは、「恐怖の木について記事にして市内に配った時、自分の家の近くにその木があったら読者はどう思うだろうか?」「怖がる話はやめた方がいいんじゃないか」といった意見が出たのですが、発表していた子たちが、気恥ずかしさもあってか、投げやりな返事をし始めたのです。すると、発表を聞いていた他のグループの子たちの不満が高まりました。最初は「うるさい」や「ちゃんとやってよ」といった不満や苦情を言っていましたが、なかなか態度が改まらず、話し合いが少し白けたムードになってきました。どうなるかと、少しハラハラしながら見守っていたのですが、そのときに、中学生や一部小学生のメンバーが、スタッフに「話し合いのルールを決めたい」と相談をしてきたのです。その子たちからの提案を皆に伝えると、「必要!やろうやろう!」と賛成する子が多かったため、急遽「皆が発表や話し合いで嫌な思いをしないためのルール」づくりが始められました。その結果できたのが、「人が発表している時はだまって聞く」「ふざけない」等のルールです。ルールは模造紙に清書され、しばらくの間、活動時に掲示されていました。このように自分達で決めて作ったものが目に見えるかたちで増えていくことで自分達のクラブだという当事者性が生まれ、育っていくと思っています。

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話し合いのルールも子どもたちが作ります
4.まもなく発行!「こども記者通信」

今回のこども記者通信では、各チームがそれぞれ1ページずつ、これまでの取材で得た情報をまとめています。取材や、自分達の中での話し合いでも色々と課題に直面した子どもたちですが、市民全体に配布される通信であるという性格上、私達スタッフも、色々な壁にぶつかりました。しかし、そのような制約の中、限られた紙面を工夫したり、学校や保護者、行政など色々な方の協力を得たりしながら、ようやく「形」になりつつあります。

初めての試みであるため、まだまだ荒削りなところも多くありますが、これらの企画が掲載された「こども記者通信」は11月1日に市内全域に配布されます。

<活動団体の情報>
四街道こども記者クラブ
Mail:info@kodomokisha.jp
Web:http://www.kodomokisha.jp/
Twitter:http://twitter.com/kodomokisha_jp
Facebook:http://facebook.com/kodomokisha/

筆者プロフィール

佐藤 裕紀

早稲田大学大学院教育学研究科博士後期課程に在学。デンマークの生涯学習、成人教育について研究している。デンマーク教育大学大学院に研究員として2012 年10 月から2013 年5 月まで在籍予定。デンマーク政府奨学生(2012-2013年)。地元である千葉県四街道市を中心に、地域づくりと生涯学習をテーマとし、四街道こども記者クラブをはじめとした、多様な人々の参加する学習活動を実践している。
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