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研究室

学校管理下での119番通報の流れ -119番通報時の指令課とのやり取りについて-

円山 啓司(市立秋田総合病院 医師)

2017年3月24日掲載

【編集部より】この記事は、著者の円山啓司先生が学校の養護教諭の方へ講演をされた際、実際は養護の先生方が119番通報をされることはほとんどない事を知り、学校内の連絡体制の見直しによりもっと救命の可能性が高くなることを伝えたいとのお気持ちから、ご執筆されました。学校のみならず、保育・幼児教育の現場へも役立つ情報です。


119番通報をした時の指令課と通報者(校長および直接119番通報)の応対について、書きました。これを参考に、校外で起こった場合、校内で起こった場合、現場に居ない校長が連絡した場合、直接傍に居る人が連絡する場合などいろんな状況を想定して、どうすればよりスムーズに応対できるか練習してください。この応対だけでも時間短縮につながります。

事例
16 歳、伊藤亮介君は、17時30分頃から3階の体育館で、ウォーミングアップ後、バスケットの試合形式の練習を行った。終了間際に伊藤君はコートから出て、突然バタンと音がして床に倒れた(18時30分)。顧問はすぐに駆け寄り、声をかけたが返事はなく、痙攣を起こしていた。呼吸は遅く(1分間に5-6回程度)、苦しそうであった。

1.校長が顧問から連絡を受けて、119番通報した場合(傍に居ないので、状況が十分には理解できていない)

顧問:校長、1年の伊藤がバスケット練習中に倒れて、反応がありません。119番通報してください。
校長:はあー・・・。(状況が飲み込めず、再度、顧問に確認して・・・119番通報)
指令課:はい119番です。火事ですか?救急ですか?
校長:救急です。
指令課:救急車が向かう住所を教えてください。
校長:○○高校です。
指令課:住所は?
校長:えーとちょっと待ってください・・・・・・。
・・・・・・秋田市○○町△番△号です。
指令課:どこで、どなたがどうされましたか?
校長:体育館で、バスケットの練習中に生徒が倒れたようです。
指令課:何歳の方ですか?
校長:1年生です。
指令課:男性ですか?女性ですか?
校長:わかりません。
指令課:呼びかけに反応ありますか?
校長:離れているのでわかりません。(この段階で救急車に出動指令が出ます。)
指令課:呼吸はありますか?
校長:わかりません。聞いてみます・・・・・・。
指令課:かかりつけはありますか?
校長:わかりません。聞いてみます・・・・・・・・・。
(しばらくして)痙攣しているようです。
指令課:救急車はどこに着けばいいですか?
校長:体育館は3階なので・・・。
指令課:えっ?患者さんは3階にいるのですか?
校長:学校の○側1階の昇降口にお願いします。
指令課:もうすでに消防車と救急車は向かっていますので、誘導をお願いします。
(指令課で心停止を疑った場合は、救急車と消防車の2台出動する地域もあります)
それから保護者への連絡をお願いします。
指令課:あなたのお名前は?
校長:校長の井上和夫です。
指令課:あなたの電話番号は?
校長:018-○○○-△△△△です。
指令課:容体が変わったら生徒さんのそばから携帯電話で再度119してください。

説明
患者の状態や現場の状況等が十分に把握できていないので、どうしても情報不足で、顧問に再確認する必要も出てきます。この場合、伊藤君に反応がなく、痙攣している事は救急隊に伝わりますが、この痙攣が心停止によるものか、てんかん発作なのかはこれだけの情報からは判断できません。恐らく、状況から心停止の可能性を考慮して活動することは、到着前に救急隊の中で決めていると思いますが。

通報の最後の方で、通報者の名前、電話番号を聞かれます。これは指令課で確認したい事が出てきた場合に再度連絡を取るためです。校長が電話番号を聞かれた時、学校の電話番号を教えていますが、これでは電話の傍から校長は動けなくなりますので、この場合は携帯電話の番号を伝え、校長は携帯電話を持って、体育館に向かうのが良いです。もちろん他の先生にも携帯電話を持ってもらい、○○先生は誘導に、○◎先生は保護者の連絡先をメモして、体育館にきてください、というように指示をします。保護者には、伊藤君が部活中に倒れ、反応がなく、救急車を呼び病院に向かうと連絡をし、伊藤君の既往歴、アレルギー、何か飲んでいる薬はないかなどを確認します。これは病院で素早く必要な処置等を行う上で、必要な情報です。

なぜ携帯電話を持って行けと言ったか解りますか? 先生方は別れて、別々の場所で対応しますので、連絡事項が生じた場合、速やかに連絡を取りあうことができません。そんな時、携帯電話というツールを全員が持っていれば、いつでもどこに居ても連絡を取り合い、情報の共有化ができます。非常時だからこそ、連絡手段の確保は大切です。


2.顧問が直接119番通報した場合(校長の場合との違いを理解してください。)

指令課:はい119番です。火事ですか?救急ですか?
顧問:救急です。
指令課:救急車が向かう住所を教えてください。
顧問:○○高校です。
指令課:住所は?
顧問:秋田市○○町△番△号
指令課:どこで、どなたがどうされましたか?
顧問:3階の体育館で、バスケットの練習中に生徒が倒れ痙攣しています。
指令課:何歳の方ですか?
顧問:16歳の男性です。
指令課:呼びかけに反応ありますか?
顧問:ありません。(この段階で救急車は出動しています。)
指令課:どのような痙攣ですか?
顧問:全身の痙攣のようです。
指令課:呼吸はどうですか?
顧問:遅いですが、呼吸はあります。
指令課:何回ぐらいですか?
顧問:解りません。
指令課:数えますので、携帯電話を患者の口元においてください。
1、2、3・・・。5~6回、死戦期呼吸だな!
指令課:かかりつけはありますか?
顧問:わかりません。
指令課:救急車はどこに着けばいいですか?
顧問:3階の体育館ですので、学校の○側の昇降口にお願いします。
指令課:もうすでに消防車と救急車は向かっていますので誘導をお願いします。
それから保護者への連絡をお願いします。
もし既往歴がわかれば到着した救急隊に伝えてください。
指令課:あなたは心肺蘇生法を知っていますか?
顧問:はい。
指令課:胸骨圧迫してください。1.2、1.2のリズムで、救急隊が来るまで続けてください。
指令課:AEDがあれば、持って来て、使用してください。
顧問:解りました。
指令課:あなたのお名前は?
顧問:北村恭介です。
指令課:あなたの電話番号は?
顧問:090・・・・・・・・です。
指令課:解らないことがあれば、生徒さんの傍から携帯電話で再度119番してください。頑張ってください。

説明
校長が119番通報をするよりも顧問が直接119番通報する方が早く通報ができ、伊藤君の情報も素早く答えられることを理解してもらえたでしょうか?この場合は、反応がなく、痙攣をして、ゆっくりした遅い呼吸をしている事が指令課に伝わります。この情報で指令課は、死戦期呼吸なので心停止と判断し、胸骨圧迫・AEDの口頭指導を行います。指令課が死戦期呼吸と判断することは実際には難しく、米国の一部の地域では、携帯電話を患者の口元に置き、患者の呼吸音を指令課が携帯電話越しに聞いて判断するようにしている所もあります。この方法で指令課の心停止の判断の精度が上がった報告はあります。指令課で救急車出動後に得られた重要な情報(死戦期呼吸)は、すぐに出動中の救急隊に"死戦期呼吸が見られ、胸骨圧迫・AEDの口頭指示を行っている"と伝えられます。この時点で救急隊は運動中の心停止と解りますので、搬送予定病院に「16歳男性の運動中の心停止の現場に向かっている。特定行為の指示が必要な場合は再度病院に連絡する」旨を伝えることができます。この時点で、病院までの一連の流れができあがりました。このように、現場にいる人が直接119番通報しますと、指令課の質問にもすらすら答えられ、救急隊にも正しい状況を伝えることができるだけでなく、病院にも心停止患者の事前情報を伝えることができます。是非、救命を最優先する状況では、校長への連絡よりも直接119番通報を優先することが大切であることを忘れないでください。

注:ゆっくりした遅い呼吸(10回/分未満)は死戦期呼吸の可能性があります。遅い呼吸が見られた場合、どのような呼吸なのか観察してください。その結果、あるかどうかわからない、正常な呼吸か判断できない場合も心停止と判断して、胸骨圧迫してください。呼吸の確認は難しく、米国の一部の地域では携帯電話を患者の口元において、指令課員が傷病者の呼吸数を数えて、呼吸があるか確認している所もあります。秋田市消防ではこの方法で行っています。また、傷病者の上腹部に通報者の手を置いてもらい、お腹が上がるときに1.2と言ってもらい、その数から判断するようにしている地域もあります。今後、いろんな地域でこのような取り組みをしてもらえればと思い、事例の中に入れました。

意識はないが、変な呼吸運動が見られる場合は、死戦期呼吸と判断して、胸骨圧迫をしてください。ガイドラインでは、呼吸がない場合、呼吸があるかないか判断できない場合は、心停止と判断し、胸骨圧迫をします。

呼吸の確認を行う場合は6秒間に1回も呼吸運動がなければ、1分間の呼吸数は10回未満です。大人でも10回/分以上呼吸運動がありますので、反応がなく、6秒間に1回も呼吸運動が見られないような遅い呼吸は異常呼吸(死戦期呼吸)です。死戦期呼吸と判断し、直ぐに胸骨圧迫。AEDです。もちろん意識が無く、呼吸運動もないことが見て判断できる場合は、心停止と判断し、素早く119番通報・AED・胸骨圧迫を始めてください。

指令課で救急車を出動させるために聞く内容
1) 火事か救急か
2) 場所(目標物、住所、救急車を停める場所、誘導人の有無)
3) 患者の年齢、性別、状態、状況等の情報→救急車出動指令が出ます
4) 口頭指導(応急手当)
5) 通報者の名前、電話番号

通報時の学校側の対応
子どもの命を助けるには、1秒でも時間の無駄をなくし、速やかに病院までの救急医療体制を動かすことが必要です。そのためには、早く119番通報することが非常に大切です。そのため、急変した子どもの傍に居る先生が救命を優先して、直接119番通報します。もちろん人が多くいれば、他の先生に校長への連絡、応援やAEDを依頼します。119番通報では、急変した子どもの近くの、救急車を停められる場所を伝えてください。その場所を伝えにくい場合や伝えるのに時間がかかりそうな場合は、「誘導人を正面玄関に行かせますので、その後は誘導人に従ってください」でも良いと思います。学校は敷地が広いので、学校のどこに救急車を停めるかを伝えることも、無駄を省く上で大切です。是非、正面玄関等に誘導人を行かせ、救急隊員を現場まで誘導するようにしてください。

119番通報時には、患者の年齢、性別、どうしたのかといった指令課からの質問にできるだけ答えるようにして下さい。指令課からの、患者の年齢、性別、患者の症状、現場の状況等の情報から、救急隊は現場活動に必要な資器材の準備や、どんな活動になるかなどを到着する前に推測し、円滑な現場活動ができるようにしていますので、この情報は多ければ多い程、ありがたいです。ですから、患者の傍に居て119番通報した方がより多くの情報を救急隊に伝えることができ、現場活動もより速やかに行われます。

症状では、意識の状態を最初に聞きます。意識がなければ、この段階で、重篤と判断し、「16 歳男性、バスケットボール練習中に倒れ、意識なし」と出動指令を救急隊に出し、救急車を出動させます。電話を切らないといつまでも救急車は出動できない、とは考えないでください。出動させた後で、その他の情報を聞いたり、必要な口頭指導を行ったりします。

忘れてはいけないのが死戦期呼吸です。これは1分間に5~6回程度の、不規則で喘ぐ様な呼吸です。この呼吸は心臓が止まった直後に見られます。学校では、目撃のある、心臓が原因の心停止が多いと報告されていますので、この死戦期呼吸に遭遇するケースも多くあるでしょう。この場合、遅い呼吸が見られるので、指令課から「呼吸はありますか」と聞かれた時に、「呼吸はあります」と答えてしまう事があります。すると、指令課では、意識はないが心停止ではないと判断してしまいます。そして、救急隊にも「意識はないが、呼吸はある」と伝えると、救急隊が現場に到着し、患者と接触して初めて「あ、心停止!」となってしまいます。これでは胸骨圧迫・AEDが遅くなってしまいます。また、発見した先生も呼吸ありと判断していますので、胸骨圧迫はせずに様子を見て、その後「あれ!呼吸がない!」となってから胸骨圧迫・AEDを行う事になり、心肺蘇生開始が遅れてしまいます。意識が無く、正常な呼吸があるかどうか判断できない場合は、迷うことなく、胸骨圧迫開始、AED装着を忘れないでください。"迷ったら、AED"、忘れないでください。この言葉を。

指令課では口頭指導を行っています。それを利用するには、通報者が患者の傍から電話する方が効果的です。携帯電話をスピーカー機能に変更し、音量を大にして119番通報すると、携帯を患者の傍に置いて話ができますので、話しながら胸骨圧迫等が行えますし、患者の口元に電話を持って行けば、指令課員が呼吸数を数えて判断することもできます(周囲の騒音という問題点はあります。ここまで行っている消防はあまりないです)。

指令課で再確認する必要がある場合もありますので、通報者の名前、電話番号が聞かれます。通報に使った電話番号は覚えておいてください。固定電話でも構いませんが、患者の傍から連絡したり、口頭指導を受けたりすることを考えると、携帯電話の番号を伝える方が良いと思います。

いざという時の連絡を考えると、携帯電話は常に手元に持っているようにしてください。

最後に
学校内では、先生方が携帯電話を肌身離さず持っていることを望ましくないと考え、持たないようにしていることが多いと思います。学校管理下での突然死の状況を見ますと、目撃のある心停止例が多く、ほとんどの場合、先生方によって心肺蘇生法が行われていますが、AEDの実施率はそれほど高くはありません。ほとんどすべての学校にAEDが設置されていることを考えると、もっと高い実施率を示してもおかしくはないのですが・・。AEDが遅れる原因として、異常な呼吸や痙攣が起こっている場合、心停止と判断できていないことや、迅速に連絡ができず、AED到着が遅れることが考えられます。心停止かどうか迷った場合には、まずはAED装着を考えてください。"迷ったら、AED"を忘れないでください。

広い敷地を有する学校では、いざという時の連絡体制の構築は非常に大切ですが、このような緊急事態に遭遇する機会は少ないために、それがおろそかになりがちです。災害は忘れた頃に、やってきます。いつ来ても子どもに害が及ばないように、いざという時、携帯電話で迅速に連絡できる体制を整備強化して頂ければ幸いです。


この記事は、NPO法人乳幼児の救急法を学ぶ会ホームページより転載いたしました。
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