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研究室

【子どものからだと健康】第8回 なぜマスクではインフルエンザの予防が十分にできないのか?

榊原 洋一 (CRN所長、お茶の水女子大学副学長)

2016年12月 9日掲載

このコーナーでは、小児科医であるCRN所長が子どものからだや健康に関する疑問・悩みにお答えしていきます。一覧はこちら


【質問】
前回の記事を読んで驚きました。どうしてマスクではインフルエンザの予防が難しいのでしょうか?

【回答】
ご質問のように、前回ご紹介した、マスクではインフルエンザの十分な予防ができない、というお話を読んで、なぜそうなのか疑問に思っておられる方も多いと思います。

研究結果では予防効果がないとは言っても、理論的にはマスクをすればウイルスを吸い込むことを防げるので、効果はあるはずだ、と考えたくなるのは当然です。

ここで私は、マスクをしてもインフルエンザにかかってしまうのはどうしてなのか、皆さんに説明したいと思います。キーワードは飛沫感染です。

飛沫感染とは、患者の咳やくしゃみなどで空気中に漂っている粒子についたウイルスを吸い込むことによって、ウイルスが鼻、口あるいは気管支などの粘膜から感染することをいいます。インフルエンザは飛沫感染の代表格ですが、麻疹や水痘も飛沫感染します。マスクは、空気中に舞っているウイルスのついた粒子が鼻や気管支に入ることをブロックするので、理論的にはインフルエンザを十分に予防できるはずです。

飛沫感染以外の感染のルートとして経口感染や接触感染があることも、多くの皆さんはご存知だと思います。経口感染の代表格は、食中毒を起こす細菌類が有名ですね。

接触感染は、ウイルスや細菌が、皮膚や粘膜に付着し、そこから体内に侵入して感染が起こるものです。とびひの原因となるブドウ球菌や、水いぼの原因となるウイルスは、健康な皮膚からでも感染します。エイズのウイルスは、健康な皮膚では感染しませんが、粘膜に付着すると感染を起こします。

さて、ここからがマスクでインフルエンザを予防できない理由になります。インフルエンザをマスクだけでは予防できない理由は、インフルエンザウイルスは、飛沫感染だけでなく、経口感染や粘膜を介した接触感染も起こしうるからです。

マスクによって空気中に舞っているウイルスは吸い込まなくても、患者の咳やくしゃみによって空中に舞ったあと、落下してテーブルや家具についているウイルスに触り、その手で目や鼻をこすったり、何気なく自分の口元に触ったりすれば、ウイルスはやすやすと粘膜から感染することができてしまうのです。多くの人には無意識に手で口元や鼻あるいは目といった粘膜が露出した部分に触る癖があります。まだ症状の出ていない潜伏期のインフルエンザの患者さんが、口元や目をこすったりした手でつり革や手すりにつかまることもあります。そして皆さんがマスクをして電車に乗っても、インフルエンザの患者さん(潜伏期で症状のない人も含めて)が触ったつり革や手すりについたウイルスが、手を介して皆さんの粘膜にたどり着いてしまうのです。

前回の最後にご紹介した研究で、手洗いがインフルエンザの予防に最も効果的であるという結論もご納得いただけたのではないでしょうか。



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筆者プロフィール

report_sakakihara_youichi.jpg榊原 洋一 (CRN所長、お茶の水女子大学副学長)

医学博士。CRN所長、お茶の水女子大学副学長。日本子ども学会理事長。専門は小児神経学、発達神経学特に注意欠陥多動性障害、アスペルガー症候群などの発達障害の臨床と脳科学。趣味は登山、音楽鑑賞、二男一女の父。

主な著書:「オムツをしたサル」(講談社)、「集中できない子どもたち」(小学館)、「多動性障害児」(講談社+α新書)、「アスペルガー症候群と学習障害」(講談社+α新書)、「ADHDの医学」(学研)、「はじめての育児百科」(小学館)、「Dr.サカキハラのADHDの医学」(学研)、「子どもの脳の発達 臨界期・敏感期」(講談社+α新書)など。
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