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研究室

【子どものからだと健康】第7回 インフルエンザ予防にマスクは有効か?

榊原 洋一 (CRN所長、お茶の水女子大学副学長)

2016年11月18日掲載

このコーナーでは、小児科医であるCRN所長が子どものからだや健康に関する疑問・悩みにお答えしていきます。一覧はこちら


【質問】
この時期になると、インフルエンザの予防策としてマスクをするようにしているのですが、実際のところ効果があるのか疑問です。効果的な予防法を教えてください。

【回答】
タイトルを見て多くの読者の方はびっくりされたと思います。「そんなことは、小学生でも知っている常識ではないか」「医者が言うこととは思えない」などの反響が聞こえて来そうです。

アメリカのアトランタ市(「風と共に去りぬ」の舞台となった都市です)に、世界の感染症研究の中心の一つである米国疾病管理予防センター(Center for Disease Control and Prevention)があります。そこから出される報告や研究は、世界保健機関(WHO)からの情報と共に、世界中の医師が大きな信頼をよせています。当然、感染症の中でも感染力の強さや、流行毎の患者さんの数から言って社会的な関心の高いインフルエンザの予防についても、研究調査の結果をもとに勧告を出しています。冒頭で述べたインフルエンザの予防とマスクについての勧告も出しています1 。そこには次の様に書かれています。

「ワクチン未接種で症状のない人に対して、インフルエンザ予防のために社会的場面(コミュニティ)でマスクをすることは推奨しない(予防的効果はない)」

インフルエンザの患者さんが、他人にうつさないためにマスクをすることについても、「症状の出る前からウィルスを飛散させているので、マスクをしても有効とは言えない」と書かれています。

「でも家族がインフルエンザにかかったら、家の中でマスクをすることで予防できるのでは?」という疑問をもたれる人も多いでしょう。この疑問に答えるような研究があります。タイで行われた研究では2 、インフルエンザと診断された子どもの家族に協力してもらい、マスク着用と手洗いを励行するグループ、手洗いだけのグループ、そしてどちらもしないグループに分け、家族がインフルエンザにかかる率を比較したのです。家族がインフルエンザにかかった率は3グループ平均で21.5%でしたが、なんと3つのグループの間でその率に差がなかったのです。

最後に、日本で行われたインフルエンザシーズンのマスクの着用とその他の衛生習慣との関連についての研究3 の結論を紹介します。「マスクを付けることは、インフルエンザを予防するというよりも、(マスクをつけるという)その習慣が、他の衛生的活動(手洗いなど)の指標となっている」と、その関連性を認めています。

アメリカで行われた、病院内でインフルエンザを効果的に予防する方法についてのシミュレーション4 では、手洗いとワクチン接種が最も効果的であろうという結果がでています。インフルエンザシーズンには、ワクチン接種と手洗いの励行に心がけましょう。


文献:

  1. Center for Disease Control and Prevention, Interim Guidance for the Use of Masks to Control Influenza Transmission, 2009
  2. Simmerman JM et al. Findings from a household randomized controlled trial of hand washing and face masks to reduce influenza transmission in Bangkok, Thailand. Influenza Other Respire Viruses 2011, 256-267
  3. Wada K. et al. Wearing face masks in public during the influenza season may reflect other positive hygiene practices in Japan. BMC public Health 2012.
  4. Blanco N, et al. What Transmission Precautions Best Control Influenza Spread in a Hospital? Am J Epidemiol 2016 183:1045-54



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筆者プロフィール

report_sakakihara_youichi.jpg榊原 洋一 (CRN所長、お茶の水女子大学副学長)

医学博士。CRN所長、お茶の水女子大学副学長。日本子ども学会理事長。専門は小児神経学、発達神経学特に注意欠陥多動性障害、アスペルガー症候群などの発達障害の臨床と脳科学。趣味は登山、音楽鑑賞、二男一女の父。

主な著書:「オムツをしたサル」(講談社)、「集中できない子どもたち」(小学館)、「多動性障害児」(講談社+α新書)、「アスペルガー症候群と学習障害」(講談社+α新書)、「ADHDの医学」(学研)、「はじめての育児百科」(小学館)、「Dr.サカキハラのADHDの医学」(学研)、「子どもの脳の発達 臨界期・敏感期」(講談社+α新書)など。
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