TOP > 研究室 > 東日本大震災の子ども学:子どもの心のケア > 第1回「放射線と子ども~正しく恐れるための知恵を学ぶ~」研究会:フリーディスカッション①子どもを戸外で遊ばせること

このエントリーをはてなブックマークに追加

研究室

第1回「放射線と子ども~正しく恐れるための知恵を学ぶ~」研究会:フリーディスカッション①子どもを戸外で遊ばせること

2012年9月28日掲載
中文
①   

子どもを戸外で遊ばせること

宮本 筑波大学の宮本と申します。小児科医です。今日はどうもありがとうございました。大変勉強になりました。

稲葉先生におうかがいしたいのですが、先ほど榊原先生もおっしゃいましたが、福島では特に親御さんたちがかなり心配されています。子どもを外に出さない。学校も保護者からの要請があると、やはり同じような対応をせざるを得ないということで、室内にばかりいるというのです。先ほどの先生の「線量率」と「線量」のお話からすると、「線量」というのは線量率×時間です。すると、合理的に考えれば、福島にいる子どもたちの時間は変えられないので、線量率を少しでも低くすることで「低線量」にするという理屈になると思うのですが、実際に屋外で活動しないということは本当に意味があるのでしょうか。私どもは、特に子どもたちにとってはあまりいい影響は与えないだろうと感じているものですから。


稲葉 これは一般の方とお母さん方の一番の関心事でもあって、お母さんと実際にひざを突き合わせて話をした場合には、質問が割とそこに集中します。学問的に考えると、今の段階では、外に出さなくたって、出したって、関係ないんですね。レベルとしてとても低く、「低線量率」ですから、外に出して何らかの問題が起こるというふうにとても思えません。むしろ外に出さないことのマイナス面が多々あると思うのですが、そっちのほうがずっと心配になってきます。


宮本 ありがとうございます。放射線事故のいろいろな影響を考える場合、不安感というのがとても大きいような気がします。特に今の日本の状況を見ますと、不安感の背景にあるのが、いわゆる不信感、疑心暗鬼ですね。何か隠しているのではないか、何か違うのではないかと思ってしまう。先ほどマスコミの影響という話も出ましたが、何かそういう思いがあって、皆さんがとりあえず自己防衛に走っておられるという印象をぬぐい切れないですね。

私はつくばにおりますので、だいぶ前のことですが、JCOの東海村の事故のことが思い浮かびます。あの後の対応を思い起こすと、今回とは規模が全く違いますが、ものすごく素早い対応をしていて、しかも、今でも継続している。あの継続した積み重ねが不信感をとっていくのかなという感じがするのです。ですから、安全なんだ、大丈夫なんだというようなサイエンティフィックな知識の啓発のほかに、やはり具体的なアクションを起こして、こうなんですよと訴える。あるいは、万が一の、それこそ何百億分の1のリスクに対してこういうような対応をしているんですよ、ということを繰り返し見せていく。それで不信感がとれていくのかなという印象を持っています。


質問者 某大学の教員です。今日はどうもありがとうございました。

ちょうど今の先生と似たような疑問がありまして、私は子どもの遊びとか、遊び環境に関心を持っておりまして、今のご質問に対して稲葉先生から、あの程度のレベルであれば大丈夫とおっしゃられたんですが、そのあたりをもう少し詳しくお聞かせいただければと思います。というのは、今、私どものプロジェクトとしまして、ちょっとした屋内的な、半分外、半分中のような形での遊び場を設けて、できる限り子どもの体を動かす活動をしていきたいと考えているからです。

福島、あるいは郡山で、新聞等によれば、線量は高いときには0.8マイクロシーベルトかと思います。1マイクロシーベルト以上には最近はなっていないように思うのですが、まさにそういう意味で、あのレベルでは大丈夫と言われたとき、どのレベルがあのレベルかというあたりが我々としては非常に悩むところなんですね。そのあたりをもうちょっとお聞かせいただければ大変ありがたいと思います。


稲葉 そうなってきますと、結局、基準値の問題になってきてしまうのです。お母さん方とお話ししても、そういう話にだんだんとなってきて、特に勉強なさっているお母さんに、やり込められてしまうんです(笑)。具体的な数字を上げて、何マイクロシーベルト以下だから、政府の基準は今こうなっているけれども、どうなのだと。いったん数字が出ると、それが非常に神聖なものであるかのように、ひとり歩きします。実は、細かな数字として、ここからは安全ですというのは、なかなかむずかしい・・・。

今日、あえて「線量率」の話をしましたのは、「低線量率」というのは、「高線量率」と振る舞いが全く違うと考えているからです。生物は基本的に「高線量率」に対して準備がないんです。高線量率の放射線を浴びることは、自然界ではまれですから、想定していない。ところが、「低線量率」というのは、生き物が35億年前に誕生した瞬間からずっと悩まされている問題なので、とても上手に対応します。

それでは一体どこで「低線量率」が「高線量率」に変わるか。ICRP(国際放射線防護委員会)ではもちろん基準があるのですが、このあたりの基準というのは暫定基準と称していなくても、とりあえずこの辺にしておこうという、あくまでも暫定的なものにすぎません。つまり、しっかりとした学問的根拠があってその数字が出てきているわけじゃないんです。けれども、いったん出てしまえば、勉強されるお母さんたちは、その数字をしっかり書きとめて、今の福島はこうだからどうだということで、私がもごもご言っているとやり込められてしまう。それが現実です。

学問の話で言ってしまえば、「低線量率」である限りは、ほとんど心配は要らないのではないかと私は思っています。「低線量率」と「高線量率」の境界は、ICRPの基準がありますので、一応それに従うということでいいんじゃないだろうか。ただ、これは私の個人的な意見にすぎません。

①   

----------------
【第1回「放射線と子ども~正しく恐れるための知恵を学ぶ~」研究会】
1.研究会の4つの方針
2.講演1「放射線による健康被害のとらえ方」(稲葉 俊哉氏)①  
3.講演2「放射性物質の乳製品への影響」(眞鍋 昇氏)①  
4.コメンテーターからの発言
5.フリーディスカッション①   
このエントリーをはてなブックマークに追加
サイトマップはこちら
サイトの全体像が分かります。

Twitter  Facebook

CRNアジア子ども学交流プログラム

名誉所長ブログ

研究室新着記事

イベント

ご意見・ご質問

メルマガ登録

世界の幼児教育レポート

CRN刊行物