リレーエッセイ

第4回 家族で楽しむ多様な体験new

佐藤朝美(愛知淑徳大学人間情報学部 准教授)


 今回の【リレーエッセイ 私と子ども】、愛知淑徳大学の佐藤が担当させて頂きます。

 私は今、子ども達が物語を作る際、デジタルの力が、より豊かな表現を支え、親子の対話を深めることができるのではないかと模索し、博士論文を鋭意執筆中です。博士課程で所属している大学院は、子ども学会の理事である原島先生、佐倉統先生、開一夫先生がいらっしゃる、素晴らしい環境です。「情報学環・学際情報学府」は文字とおり、多様な研究領域をお持ちの先生の「学びの環」から、自身の「知の環」を構築できる場で、ここで学べることを大変誇りに感じております。

 私自身は、教育工学の中で幼児を対象とした学際的なアプローチで研究させていただき、小林先生の学際的・環学的な、子どもの全体像を捉え直す子ども学(チャイルド・サイエンス)に大いに感銘を受けています。そんな自身の「私と子ども」に関わるお話を、自身の子ども期と子育ての経験からお話させていただきます。

 子ども期の一番の思い出は、小学生時代のちょっとした開墾体験です。兵庫県の清和台という自然豊かな土地に住んでいた頃、私たち家族は、さらに山奥に90平米ほどの土地を購入し、毎週のように通いつめていました。購入当初は、雑木林で、ノコギリで木を切るところから始まりました。木を切ることは何とかなったのですが、根っこの深さに驚きました。掘っても掘っても根は続きます。家族4人で開梱する限界を感じ、ブルドーザーを頼みました。

 平地にしてもらった後は、父が見よう見まねで設計図を作り、切り倒した木を使ってログハウス(決して立派なものではないです!)を建て始めました。掘り起こされた石を固めて釜を、さらには四季それぞれ収穫できる家庭菜園を作っていきました。収穫した野菜を近くの小川で洗い、持ってきたボンレスハムの厚切りを石釜の火で炙り、おにぎりと共に食べるお昼ごはんは、本当に美味しくて、毎週楽しみにしていました。

 父母ともに東京世田谷育ち。畑も木を切ることもログハウスを建てるのも初めての体験だったと思います。ですから親から教わるという感じではなく、文字どおり家族で一緒に少しずつチャレンジし、一緒に学んでいくというスタンス、面白い体験でした。生ゴミはしっかり埋めて帰らないと、イノシシに荒らされるとか、いろんな虫や蛇に出くわしたり、漆にかぶれたり、雛鳥が徐々に美しい鳴き声を獲得するのが聞こえてくる等々、素敵なものから悲惨なものまで様々あります。

 一方、冬は淀川沿いのスケートセンターでフィギュアを習ったり、菩提寺があることから京都へも良く足を伸ばしました。8歳の時、京都国立近代美術館のピカソ展で「泣く女」を見た時の衝撃は今も覚えています。従兄弟が来るたびに国立民族学博物館にも出かけました。盛り沢山の多様な体験は、母の子育てポリシーだったのだと思います。出身大学の玉川で学んだという小原先生の全人教育の話をよくしてくれました。

 そして、次に自身の子育て...。

 出産前にSEとして働いていたこともあって、ついついデジタル体験に興味をもって、良く出かけました。日本科学未来館での藤幡正樹先生のメディアアート作品「Small Fish」、ソニー・エクスプローラサイエンスでは、暦本純一先生の「SmartSkin」技術をつかったインタラクティブ作品、息子と一緒に楽しみました。今ならチーム・ラボが展開しているインスタレーションに通いつめたと思います。息子に開墾体験はさせてあげられませんでしたが、清里に良く出かけ、自然学校のプログラムにも参加しました。

 子どもに多様な体験させることが、ミイラ取りがミイラになる?、いつのまにか自分の楽しみになっていました。自分が体験しなかったことを、子どもに体験させるという大義名分(?)でチャレンジしていくことは、純粋に楽しいですし、自身の世界を広げてくれます。私の両親も同じ気持ちだったのかな、と考えると嬉しく、家族の多様な体験がかけがえのないものに感じます。



sato_tomomi.jpg佐藤朝美(さとう・ともみ)
東京都出身。 愛知淑徳大学人間情報学部准教授。東京大学大学院学際情報学府博士課程中退後、東京大学大学院情報学環助教、東海学院大学子ども発達学科を経て現職。教育工学、幼児教育、家族内コミュニケーション、学習環境デザインに関わる研究に従事。日本子ども学会(理事)、こども環境学会(校閲部会)。構築したオンラインコミュニティ「親子de物語」で第5回キッズデザイン賞、実践研究「未来の君に贈るビデオレター作成ワークショップ」で第8回キッズデザイン賞を受賞。

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