6月9日(日)に早稲田大学 国際会議場 井深大記念ホールで「世界おもちゃサミット2013」が開かれた。多田千尋先生が館長を務める「東京おもちゃ美術館」と、私の関係する「日本子ども学会 "Japanese Society of Child Science"」が共催した小さな国際シンポジウムであった。8日(土)夕方には出席者の懇親会が行われ、その翌日となるサミット当日は、快晴に恵まれ、朝10時から夕方5時まで、多数の出席者のおかげでホールはほぼ満席であった。
まず、開会式でご挨拶をさせて頂いた。はじめに、小児科医として「子ども学 "Child Science"」という考えに至った背景を述べ、つづいて、日本子ども学会10年の歴史について話をした。そして、子どもの体の成長と心の発達には「生きる喜び "Joie de vivre"」を持つことが重要であることを申し上げた。その「生きる喜び」を生み出す仕組み、特に脳の働きについて考える学問を「子ども生命感動学 "Child Bio-emotinemics"」 と呼ぶ私の考え方についても説明した。そして、おもちゃは、子どもを「生きる喜び」でいっぱいにする力を持っているが、このサミットの中で、その理由を考えて頂きたいと出席者にお願いして、挨拶を終えた。
つづいて、二つの基調講演を頂いた。榊原洋一CRN所長(日本子ども学会副理事長、お茶の水女子大学教授・小児科医)より「子どもの発達とおもちゃ」、春日明夫先生(東京造形大学教授)より「おもちゃは世界の文化財」というタイトルの講演であったが、いずれも内容豊かで、学ぶことが多かった。
午後は、二つのセッションが行われた。第一部は「遊びとおもちゃのセッション(発達・環境・福祉)」であったが、私は、第二部の「世界の遊びとおもちゃのワークショップ」のセッションが特に興味深く、個人的に関心をもった。
第二部の一つ目は、ドイツのPeter Hanstein先生のセッションであった。彼は、家庭と自然を大切にする心を柱に、木や竹を使ったおもちゃの会社「Hape社」を中国に設立して、世界の子どもたちに供給している。その体験を、おもちゃを作る理念と共に話された。二つ目は、タイのVitool Viraponsavan先生からのセッションであった。彼は建築家で、ゴムの木の廃材を利用しておもちゃを作る「Plan Toys社」を設立しており、おもちゃの製造を地球温暖化の防止に役立てることを考えていて、感銘を受けた。
日本国内ばかりでなく、外国からもおもちゃに関心を持つ沢山の研究者、学者が集まり、議論することができた意義は大きい。更に、「グッド・トイセッション」として日本グッド・トイ委員会が選定したグッド・トイの展示もあり、来場した人が、実際におもちゃに「触れる」「動かす」ことができた点は、特に良かったと思う。いろいろな視点から考えて、「世界おもちゃサミット」は、今後も続けていただきたいと思った。